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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第三章 エミジャ村の秋

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125 温泉と子供

 早朝から活動していてお疲れであろうディデリクさんを労おうと、俺たちは皆で温泉にはいることにした。


「ディデリクさん、温泉の経験はありますか?」


 ゲーム内だと温泉は、セシリアとリアムが出会った時に彼女らが向かおうとしていた保養地しかない。

 リアムの記憶によると何ヶ所か温泉宿はあるようだが、彼はそもそも駆け落ちでここに潜伏するまで北のほうはあまり来たことがなかったらしい。

 そのおかげもあり、俺がイーサ町で堂々と歩いていても知り合いに見つかることがなかったようだ。


「お恥ずかしながら、この辺りに温泉はないと思っていましたので家族全員、初めての経験になります」


 貴族なら保養地へは一度や二度は行ったことがあるだろうが、準男爵でなおかつ僻地の領主ともなるとそうではないようだ。


 温泉作法をディデリクさん親子に教えながら男四人、湯舟に浸かり大きく息を吐いた。


「はぁ。温泉とは、なんとも心地よいものですな」

「ごくらく、ごくらく」


 アルベールくんよ、極楽浄土とはなにか知っているのか。


 隣の女湯からは乙女のきゃっきゃしている声が、BGMの如く聞こえてくる。

 セーラとエミリーはいつも静かに入っているようなので気がつかなかったが、わりと壁は薄かったようだ。


 洋介は温泉の効能についてのうんちくを、ディデリクさんに披露している。


「ほう。そんなにたくさんの効能が」

「この温泉の成分は未調査なので、あくまで一般的な温泉の効能ですけどね」

「なるほど……」


 ディデリクさんは難しい顔でなにかを考え始めたが、領主として考えることは一つだろう。


「洋介様、この温泉を村まで引くことはできないのでしょうか?」

「不可能ではありませんがここでこの温度なので、村まで到着する頃にはだいぶ温度が下がっているでしょうね。改めてお湯を沸かし直す必要があります」

「大量のお湯を沸かすとなると大変な作業になってしまいますな。村に温泉を作れたら良い観光資源になると思ったのですが……」


 風呂の構造を知らないディデリクさんには大量のお湯を沸かすイメージが湧かないのだろうが、日本人の俺たちならさほど難しい作業でもない。

 要は大きなかまどを作って焚き直せば良いだけだ。


 だが、体を洗ったりするお湯も必要になるし、何十人も一度に入られるとさすがにこの温泉のお湯だけでは間に合わないんじゃないだろうか。


 温泉があればリピーターは増えそうだが、ここのお湯を村に流すのは現実的ではないな。

 なにかほかに、良い案があれば良いが。

 ハウジングアイテムを使えば簡単だが、あまり世間には露出させたくないので、ここの世界にあるものでなにかあれば。




 食事を終え広間へ移動してからも、酒を飲みながら今日の出来事についていろいろ話した。

 ディデリクさんによると、村長は俺たちがいる間はなんとかこの土地でがんばれそうだと言っていたらしい。

 彼としてもダンジョンに近い村は閉村させたくないようなので、これからも村に協力してほしいとお願いされた。

 お願いされるまでもなく、俺たちはずっとここにいるつもりだ。


 一日ハードスケジュールだった子供たちはそろそろ眠そうなので、話は尽きないが今日はお開きとなった。


「ぼく、カイトあにうえとねたいです」

「わたしも、セーラおねえさまとねたいわ」


 すっかり懐かれた双子と今夜は寝ることにした。


「私の部屋は隣なのよ。カイト、アルベールくん、おやすみなさい」


 俺の部屋に入ってから、セーラは自分の部屋にリリアーヌちゃんを案内しようとしたが、双子は不思議そうに俺たちを見上げた。


「おとうさまとおかあさまは、いつもいっしょにねているわ」

「ぼくたちちいさいので、いっしょにねてもだいじょうぶです」


 どうやら双子は、四人そろって寝るためにここへ来たようだ。

 俺たちがベッドの狭さを心配していると思っているようだが、そうじゃないんだ……。

 まだ付き合ったばかりの俺たちは、一度もそんな経験がない。


「どうしようか、セーラ……。俺は別に構わないが……」


 セーラは無防備な状態を見られるのが恥ずかしいようだが、三十日間も見てしまったのでさすがに慣れたんじゃないだろうか。


「そうね……。皆で一緒に寝たほうが楽しいわ」


 着替えを終えてベッドへ入ると、双子はものの数分で寝息を立て始めた。

 馬車での移動にダンジョン探検で、疲れていたようだ。


 双子を真ん中にして、両端に寝場所を確保した俺たち。


「二人とも可愛い寝顔ね」

「そうだな」


 二人でなんとなく寝顔を眺めていると、セーラは言いにくそうに口を開いた。


「あっ、あのね……、今すぐの話ではないわよ」

「うん?」

「いつか……、私たちにも子供ができたら、こうして川の字で寝たいわ」

「う……うん、楽しみだな」


 まさかの発言に、脈が速くなるのを感じる。

 セーラがそこまで考えていてくれたとは嬉しいが、キスもまだの俺たちにはまだまだ遠い未来だ。

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