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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第三章 エミジャ村の秋

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121 結界のかけ直し

 全員で外へ出ると、広場の周りには村人が全員集まっていた。

 結界をかけるところを見るためだろうか。皆、嬉しそうな顔でこちらを見ている。


 ティアンカさんはポーチから青い瓶を取り出すと、それを中央の水場に注いだ。

 瓶の形から推測すると聖水のようだが、見たことがない色の瓶だ。


 次にAランクの杖を取り出した。

 あの若さでAランクとは、なかなか優秀な魔法使いのようだ。

 リアムの記憶によりわかった事実だが、この国の冒険者で現在の最高はAランクらしい。

 過去にはSランクに到達した冒険者もいたようだが、今となっては伝説級の扱いになっているようだ。


 水場に向けて杖を突きだしたティアンカさんが目を閉じると、辺りに沈黙が広がった。

 精神統一をしているのか、はたまた長ったらしい呪文でも心の中で詠唱しているのか。


 水場に溜められた水はゆっくりと動き出し、次第に渦を巻き始めた。

 ティアンカさんが杖を振り上げると、渦を巻きながら水が一気に空へと上がっていく。

 全ての水が上空に上がると、まるではじけ飛ぶように村全体に水が散布された。


 散布された水は七色に揺らめきながら、やがて空から消えていった。


 とても幻想的な光景だ。

 セーラたちもこの様子を、屋敷から見ていると良いが。


 ティアンカさんが杖を下ろすと、広場からは歓声とともに拍手が巻き起こった。


 どうやらこれで結界をかける儀式は終わったようだ。

 村長がティアンカさんの元へ歩み寄ってお礼を述べている。


 たった今、散布された水が地面に染み込み結界の効果を発揮するようだ。

 ちなみにこの結界は、地を這うモンスターにのみ有効だそうで、イーサ町の結界とは種類が違うようだ。


 必要な作業は全て終わったので、後は昼食を取るだけだ。

 俺とエミリーも招待されている。


「ティアンカ様、心ばかりのおもてなしではございますが、エミジャ村の名物料理をご用意させていただきました」

「ありがとう、いただくわ。スライム料理は久しぶりなので楽しみよ」


 久しぶりの村長夫人の手料理はとても美味かった。

 今思えば、俺たちが宿泊させてもらった時は充実した料理を出してもらっていたが、あれはお客用の特別料理だったんだな。

 冒険者を逃したくなかったのかもしれないが、怪しげな俺たちを暖かく迎え入れてくれたあの日のことは、これからも忘れることはないだろう。


 デザートももちろん俺たちに出してくれたのと同じ、スライムの饅頭だ。


「カイト……」


 お菓子を禁止されているエミリーは何かを訴えるように俺を見た。

 彼女はダイエット中だが、残すのも失礼だ。


「皆には内緒だぞ……」


 娘に甘い父親のような発言をしてしまったが、エミリーは久しぶりのお菓子に大変満足したようだ。




 ティアンカさんにはスライムの皮をお土産として渡し、彼女は足早に帰っていった。

 イーサ町に到着するのは夜中だろう。ヒールがあるとはいえ、大変な仕事だ。


 ティアンカさんが乗った馬車が見えなくなると、一気に緊張の糸が切れた。


「ふぅ。なんとかなったな。皆さんご協力ありがとうございました!ディデリクさん、今日はお疲れでしょう。屋敷で休まれますか?」


 午前中にここへ到着したのだから、イーサ町を出発したのはきっと夜が明ける前だろう。


「明日には帰らなければなりませんし、村を見て回ろうと思います。すみませんが子供たちをよろしくお願いいたします」


 ディデリクさんは滅多に来ない村を視察したいようだ。

 あとは村長にお願いして、俺とエミリーは屋敷へ戻った。




 屋敷に到着すると、外で双子と洋介が遊んでいるのが見えた。

 思っていた光景と違うが、どういうことだろう?


 玄関前に馬車を止めると、三人がこちらへやってきた。


「お帰りなさい、カイト殿エミリー嬢」

「ただいま。アメリーヌさんと一緒じゃなかったのか?」

「それが……。彼女、姉上にべったりになってしまいまして……」


 女子同士気が合ったのだろうかと思っていると、双子がこっちを見てと言わんばかりにスライムヨーヨーを振り上げた。


「あねうえは、はずかしがりやなんです!」

「ようすけおにいさまが、かっこいいから、おはなしできないんだわ!」

「なるほど。それはなんとかしないとな」

「姉上は懐かれて楽しそうなので、僕は別にこのままでも良いのですが」

「良くないだろう。ディデリクさんも来ているのに、夜までこの状態はまずいぞ」


 今回の流れはディデリクさんにお願いされてのことなんだから、接待と呼んでも良いミッションだ。

 とりあえず全員連れて屋敷の中へ入ると、広間でセーラとアメリーヌさんが雑談をしていた。


「おかえりなさい、カイト。無事に終わったかしら?」

「ただいま、セーラ。エミリーの素晴らしい演技のおかげでなんとかうまくいったよ」

「良かったわ。エミリーちゃん、私の代わりにいろいろ頑張ってくれてありがとう。とても助かったわ」

「ふふ、とんでもございません奥様。結構、楽しかったですわ」


 セーラからも事情を聴きたいが、どうやって連れ出そうか。

 屋敷の主がお茶の準備をするのは変だろうし……、主人らしい用事で連れ出さなければ。


「……セーラ、着替えを手伝ってくれないか?」

「えぇ、いいわよ」


 セーラは何かを察してくれたのか、特に驚く様子もなく了承してくれた。

 二人で俺の部屋へ行くと、セーラはいたずらっぽい笑みをこぼした。


「どの服に着替えさせたら良いかしら?」


 本当に着替えたいと言ったら、セーラはやってくれるのだろうか。

 試してみたい気持ちもあるが、変態だと思われるのも困る。


「それは冗談というか、セーラを連れ出す口実だよ。それよりアメリーヌさんの様子はどうだった?」

「アメリーヌちゃんはよほど洋介が気に入ったのね。洋介の事ばかり聞かれたわ」

「そうか。実際に会ってがっかりしたわけじゃないんだな」

「むしろその逆よ。気持ちが大きくなりすぎて彼女自身、どうしたら良いかわからないみたい」

「なるほど。これは荒療治が必要だな……」


 にやりと笑ってみせる。


「ふふ、カイト悪い顔になっているわ。私はなにを協力したら良いかしら?」


 二人で作戦を練ってから一階の広間へ戻った。

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