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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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11 スライム狩り

「それについてはゲーム内と同じだと思う。ゲームでもドロップされた物は拾わないでいると消えてしまうだろう?皮も消える前に拾えば消えないんじゃないかと思うんだ」

「今まで拾ってみたことなかったものね」

「早速、試してみましょうか」


 三人で頷きあうと、俺は槍を構えた。スライム狩りはもう慣れてきたので、特に気合を入れる必要もなくスライムに近づくと、ぷすっと勢いよく突き刺した。

 スライムは槍に刺さったまま、どろっと中身が流れ出て皮だけになった。


 それを手に取ってみたが、初めて素手で触るスライムはぷにぷにとしていて、ゼリーや寒天のような弾力がある。内側はべたべたしているが外側のべたつき感はない。

 あれば土や葉っぱまみれになっているだろうから当然か。


「採れたぞー!」


 軽く持ち上げながら二人の元へ戻ると、二人は早速スライムの皮を触りだす。


「ぷにぷにしているわね」

「割と思った通りの感触ですね。そろそろ消えても良さそうな時間ですが、消えないところをみるとカイト殿の読みは当たっていたようですね」

「そうみたいだな。そんじゃ、この辺りの一掃しますか」


 各自、狩りやすい武器を手にスライム狩りを始めた。


「えいっ!」


 可愛らしい声をあげて振り下ろしたセーラの武器は、どう見てもチューリップにしか見えないし当たっても痛くなさそうだが、殴打したスライムは一撃で倒れてしまった。


 意外と怪力……ではなく、きっとあれも強化された武器なのだろう、チューリップの割になんかキラキラしているし。


 洋介は弓矢で射るのではなく、矢を持って直接突き刺している。


「洋介……それ反則技じゃね?」

「いいんですよ、こっちのほうが早いんですから。弓で射った後にアイテムを拾いに行くのって、意外と面倒なんですよ」


 気持ちはわかるよ。わかるけど、職業的なプライドはないのかね?


 三人で手分けをして辺りにいたスライムを全て狩ると、そこそこの量になった。これなら各家庭に二枚ずつは配れそうだ。

 日暮れにはまだ時間があるので、帰りはのんびりと歩いて村へ戻った。


 エミジャ村には村長の家も含めて八軒しか人が住んでいないらしい。

 挨拶もかねて三人で一軒ずつ皮を渡しに行ったが、お金はいらないと言うと代わりにと野菜を頂き、気が付けば当分は困らないほどの野菜が集まっていて。これぞ噂に聞く田舎の物々交換だなと、少し楽しくなってしまった。


「おねえちゃん、かわありがとう!」

「ふふ、たくさん食べてね」

「うん!またあそびにきてね!」


 ちゃっかりセーラに抱きついて礼を言っているのは、先ほど広場で泣いていた子供だ。

 彼の事は要注意人物として認識しておこうと思う。


 一通り配り終えたが、どうやらあのませガキ以外には、未婚の若者はいないようだ。

 この村は過疎なだけではなく、高齢化も深刻らしい。




 夕食は、村長夫人が皮を使った料理を作ってくれた。

 皮を巾着のように具材を詰めて煮込んだ料理が、この村の名物らしい。

 緑色に透き通ったスライムの皮はかなり弾力があり、ぷりっと噛むと中から肉汁と野菜のうまみが出てきてとても美味かった!

 シロップに漬けておくとデザートにもなるらしい。


「奥さんに調理法を習って、私も作れるようになったわ」


 セーラは料理スキルを上げているから、レシピが増えて嬉しそうだ。

 三人で暮らしたらセーラの手料理が食べられると思うと、ついつい顔が緩んでしまう。


「旅立つ前に沢山集めておくといいわ。マジックポーチに入れておけば数か月は持つし、干しても保存できるのよ」

「まぁ、後で干し方のコツを教えてもらえますか?」

「えぇ、勿論よ」


 夫人とセーラは料理の話で盛り上がり始めた。


 ちょうど旅立ちの話も出たことだし、村長に打診してみることにした。


「リチャードさん、俺達実は定住先を探して旅をしていたんです。田舎でのんびり暮らすのが夢だったもので。ここは緑豊かでとても良い土地ですね」


 駆け落ちの話はわざわざ自分たちから言う必要もないだろうと、三人の話し合いで決まったので表向きの理由は今の通りだ。


「いやいや、廃れ果て消滅しつつある村ですよ。若い者はこんな村では嫌だと皆出て行ってしまいました。残ったのは老人ばかりで色々と大変で……」

「そうでしたか。俺たちに住む許可をいただければ、多少はお役に立てるかと思いますよ」

「この村に住みたいとおっしゃるのですか?」

「はい、三人で住む家を一軒売っていただきたいのです」

「三人で、ですか……」


 洋介の言うように、未婚の男女が一緒に住むのには難色をしめしているようだ。


「申し遅れましたが、セーラは俺の妻で、洋介はセーラの弟なんです」

「新居探しの旅に出るなんて二人が言い出したので、心配でついてきてしまいました」


 俺が紹介した後に、洋介が照れ笑いしながらそう付け足した。


「あらあら、可愛い弟さんですわね」

「はい、自慢の弟です」


 夫人とセーラは微笑みあいながら話に入ってきた。

 そのまま夫自慢もしてくれていいんですよ?セーラさん。


 この流れで村長の警戒心は解けたようで、表情が柔らかくなっている。


「それでしたら、あなた方にぜひお譲りたい物件がございます。村から少し離れていてもよろしいでしょうか?徒歩で10分程度なのですが」

「三人で住むのに問題ない広さであれば、大丈夫ですよ」


 村の中に空き家は沢山あるのに、何故わざわざ村外れの物件を紹介するのだろう?

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