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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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112 明日の約束

 風呂と食事を終え、俺たちは広間にある二階への階段へと向かっていた。


 あの後、見た目の変化にショックを受けていたエミリーだったが、セーラがお土産に渡した小説で元気を取り戻していた。

 いつか王子に気に入られるようこれからダイエットに励むらしいが、目の前に王子がいる事には彼女も王子も気が付いてはいない。


 セバスへのお土産は散々悩んだ結果、生産スキルを使う時に気にせず汚せる作業服にした。

 執事服以外の着替えをあまり気に入っていない様子だったので、意外とこういうのがいいんじゃないかと渡してみたところ、涙を流して喜ばれてしまった。


 お土産話に花を咲かせながら、久しぶりに五人での食事はとても楽しかった。


「久しぶりにビールも飲めたし、後はベッドに潜るだけだな」


 セーラが倒れてから、なんとなく酒を飲む気にもならなかったので、今日は久しぶりにビールを堪能した。


「明日はゆっくり寝ていたいですね。姉上、起こすのは十時以降でお願いしたいです」

「ふふ、異世界バージョンを考えたから楽しみにしていてね」

「やっと社畜から卒業できるんだな。おめでとう、洋介」

「ありがとうございます。異世界バージョンは穏やかなものだと良いのですが」

「それはどうかしら、あまり穏やかだと洋介は起きないもの」


 どうやら刺激的な朝はこれからも続くようだ。


「それではカイト殿、姉上おやすみなさい」

「おう、迎えに来てくれて助かったよ。ゆっくり休んでくれな」

「おやすみなさい洋介。また明日ね」


 二階への階段を登りきり、挨拶を終えると洋介は奥にある彼の自室へと向かった。


 俺の部屋はすぐ目の前だ。ドアを開けるとセーラも一緒に入って来る。

 彼女はあまり自分の部屋のドアを使わない。

 俺の部屋を経由して自分の部屋へと向かうのが、いつものパターンだ。


「カイトはもう寝るのかしら?」

「そうだな、アルコールも入ったし久しぶりにぐっすり眠るよ」

「ずっと気が休まらない毎日で疲れたでしょう?今まで本当にありがとう、カイトがいてくれたおかげですっかり元気になれたわ」

「俺はたいしたことはしていないよ。元気になってくれて本当に良かった」


 俺は傍にいただけで、大層な事は出来ていない。彼女が元気になったのは彼女自身の体が頑張ったからだ。


「あのね……カイト」

「ん?」

「だいぶ過ぎてしまったけれど、屋敷に戻った次の日に約束していた事、覚えているかしら……」

「あ……うん。覚えてる……」


 ドラゴン騒ぎですっかり流れてしまっていたけど、俺たちは屋敷に戻ったら告白をすると約束をしていたんだ。

 俺は一ミリも忘れてはいなかったが、今世の記憶が戻ったりもしたので何となく言い出せずにいた。

 いや、それが無くても俺は自分から言い出す勇気はなかったかもしれない。


「明日の午後、お茶会を開きたいのだけれど……」

「行くよ。必ず行く!」


 不安そうに切り出したセーラだったが、俺が即答すると安心したように顔をほころばせた。


「ありがとう!おやすみなさい、カイト」

「あぁ。おやすみ、セーラ」


 明日、起こるであろう現実を思いながら、俺は彼女を見送った。


 ――どうしよう、めちゃくちゃ緊張してきた。






 翌日、俺はのんびり寝てなどいられなかった。

 夢の中にまで告白のシミュレーションが出て来て、もう何百通りと試してみたがいまいちしっくり来るものがない。

 セーラは断りこそしなかったが、どれも微妙な笑みを浮かべて頷いてくれた。


 ――あぁ!このままでは俺の告白は微妙だったと、彼女の記憶に残ってしまう!


 セーラと顔を合わせるのも気まずいので、俺はこそこそと一人で先に朝食を終えて村に向かった。


 約束の時間まで耐えられなくて、逃げ出したわけではない。

 本当に用事があったからだ。


 村での作業は数日休んでからにする予定だが、取り急ぎ村長に住民を増やす許可を得たい。

 村長の家を訪問すると、村長とナッシュさんが話を聞いてくれた。


 村長は話を聞き終えると快く、セーラが治した重傷者三名を受け入れてくれると言ってくれた。

 ナッシュさんも隣で頷いている。


「出稼ぎ労働者はだいたい顔見知りなんで、たぶんその人達も知っていると思いますよ」

「そうですか、顔見知りがこの村にいるなら彼らも心強いですね」

「それで、いつ迎えに行かれるんですか?」

「テント暮らしも大変だろうから、出来るだけ早く迎え入れたいと思ってます。移住となると彼らの故郷から荷物も運ぶ必要があると思うので、迎えに行ってそのまま故郷を経由してからエミジャ村へ来てもらおうかなと。うちの執事が迎えに行く予定です」


 俺たちはもう気軽に村の外へ出ないほうが良いと思うので、迎えはセバスに打診してみたところ快く引き受けてくれた。

 洋介は不思議そうにしていたが、後日事情を説明するとだけ言っておいた。


「セバスくんだけじゃ不安だな。俺も一緒に行きましょうか?」


 俺たちがいない間にセバスもエミリーも、すっかり村人と仲良くなっていたようだ。

 ナッシュさんにしてみたら、セバスも二十歳前後に見えるから心配なようだ。


「いいんですか?ナッシュさんが同行してくれるならとても心強いです」

「構いませんよ。出張代、楽しみにしてます」

「そりゃもう、セバスの指導代も付けさせてもらいます」


 にやりと俺達は頷き合った。

 ナッシュさんは臨機応変さと調整力に長けているから、安心して任せられる。

 セバスもその辺りを学んで帰って来てほしいものだ。


明日で第二章、最終話となります。

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