107 一週間後
目覚めた後のセーラは、順調に体調を戻していった。
初めは宿屋の主人宅の台所を借りて流動食などを作っていたが、今はもう普通の食事に戻っている。
栄養補給で役だったのがスライムの皮だ。
セーラが以前、村長夫人に習ってスライムの皮の干物を作ったのがあったので、それを刻んでスープに入れたら、セーラは美味しいと喜んで食べていた。
「一週間、経過観察しましたが魔力は完全に安定したようです。試しにヒールを使ってみてください」
一週間最後の検査が終わり、医師にそう言われセーラはポーチから杖を取り出した。
不安そうに俺を見るので、不安を取り除けるように力強く頷いてやると、セーラも頷き杖を構えた。
「ヒール」
目覚めてから魔法は禁止されていたので、これが初めてのヒールとなる。
いつものようにヒールのキラキラした光が現れると、セーラはスッキリした顔で息を吐いた。
一か月も眠っていたので何となくだるさが抜けないと言っていたのが、今のヒールで解消されたようだ。
「セーラさん、何か体に違和感はありませんか?」
「大丈夫みたいです、先生」
「良かった、もう問題無いようですね。倒れた時に使ったフィールドヒールでしたか?あれはもう使わないほうが良いでしょう。素晴らしい効果ではあったが、リスクが高すぎます。今のヒールだけでも十分に聖女としてやっていけますよ」
「もう、先生まで……」
医師が冗談を言うとセーラは、恥ずかしそうに俯いた。
通院時によく声をかけられていたので、町で聖女として定着していることには、セーラもすぐに気が付いたようだ。
聖女様と言われるのは恥ずかしいようだが、怪我が治ったという話は嬉しそうに聞いていた。
病院でお世話になった人たちにお礼と手土産を渡して、俺達は病院を後にした。
「セーラ、気分が良くなったならどこかへ行こうか?」
明日は洋介が迎えに来るので町を見て回れるのは今日で最後だ。
この一週間ほとんど宿屋の中で過ごしていたので、気晴らしにでもと思いそう提案してみると、セーラは行きたい場所があると言った。
セーラに連れられて向かった先は、中央広場のとあるテントの前だった。
「ここは……」
確か、重傷者が隔離されていたテントだ。
「皆がどうしているか気になって」
「そっか。まだここにいるかもしれないし、尋ねてみようか」
義足をプレゼントすると言ってからだいぶ日にちが経ってしまったので、気になっていたようだ。
外から声を掛けてからテントに入ってみると、あの日と同じ配置のままで三人がテントに残っていた。
「こっ、これは聖女様!よくぞお越しくださいました!」
「お見舞いが遅くなってしまってごめんなさい。皆さん、その後はどうですか?」
セーラがそう尋ねると、その場にいた三人は顔を見合わせた。
「……聖女様のおかげで、怪我はすっかり治ったので体調は良いです。ただ……」
「俺達三人は片足が無くなったので、仕事が無くて困っているんです。今は町の援助がありますが、それが終わったらどうしようかと思って」
「こんな姿では、村に帰ってもお荷物にしかならないからな……」
二人は義足があればそこそこ働けそうだが、セーラが一番最初にヒールした彼は片腕と片足がないから、かなり日常生活に支障をきたしていそうだ。
「カイトぉ……」
セーラは何か言いたげに俺を見た。
何を言いたのかは分かっている。だが、住人を増やすには村長の許可が必要だ。
あの村長ならダメとは言わないだろうが、一応手順は踏んだ方が良い。
「まずは、村長に相談だな」
「帰ったらお願いしてみましょう」
俺とセーラが頷き合っていると、三人は不思議そうにこちらを見つめた。
「あのう……?」
「村長の許可を得てからになりますが、ド田舎で良ければエミジャ村に住みませんか?三人が出来そうな仕事を何か考えますよ」
そう提案すると、三人の顔が一気に明るくなった。
「お願いします!俺、手先は器用なほうなんです!」
「俺も俺も!」
「俺は…‥」
腕が無事な二人に対して、片腕の彼は再び顔を曇らせた。
「俺に出来る仕事なんてあるんでしょうか……」
「そうだなぁ……、ぱっと思いつくのは事務的な仕事だけど。読み書き計算は出来ますか?」
「多少は……」
「それなら事務の助手とかお願いしようかな。助手をしながら覚えたら良いと思います」
「……ありがとうございます!」
人を雇うとなると事務作業も必要になってくるから、そういう事が出来る人材も育てる必要があるだろう。
セバスは執事としてのスキルを一通り持ち合わせているようなので、彼を中心にやっていけたらと思う。
セーラを見ると、彼女は嬉しそうに三人を見ていた。
彼女の望みを叶えられたようで、俺としても満足だ。




