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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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106 セーラの退院

「……急に頭痛がしてさ。もう収まったから大丈夫だよ。心配かけてしまって、ごめんな」


 そう言うと、セーラはほっとしたように体の力を抜いた。


「カイト……、先ほどはごめんなさい。私ずっと夢を見ていて、その中の登場人物がカイトにそっくりだったの。寝ぼけていたにしても失礼だったわ。本当にごめんなさい!」

「俺は全然気にしていないよ。それより、どんな夢だったのか気になるな」


 夢の内容を催促してみると、セーラは顔を真っ赤にして俺から視線を逸らした。


「あの……ね、笑わないでほしいのだけれど。私は夢の中でセシリア王女になっていて、カイトは英雄騎士のリアム様だったの。二人は恋に落ちて……駆け落ちする夢だったわ……」


 どうやら彼女はこの三十日間に、夢という形で今世の記憶を取り戻したようだ。


「洋介だったら、姉上の好きそうな話だと冷やかしていただろうな」

「本当にそうよね……恥ずかしいわ。ところで……、ここは宿屋ではないわよね?洋介は?」


 セーラは話を逸らすように辺りを見回した。

 成金趣味の宿屋とは違い、ここは実にシンプルな作りの病室だ。

 最低限度の家具しか置いてないし、個室なので寂し気な雰囲気が際立っている。


「セーラ、驚かないで聞いてくれるか?」


 そう言いながらセーラの手を取った。

 最近は、握れば時折動くようにはなっていたが、今はしっかりと握り返してくれた。

 問題なく体を動かす力も戻っているようだと、安心する。


「セーラはフィールドヒールをかけた後に倒れてしまって、三十日間眠っていたんだ」

「え……三十日間も?どうして……」

「医師が言うには、魔法に失敗するとこういう現象が起きるらしい」

「失敗……?皆は?町の人達の怪我は治らなかったの?」

「それは大丈夫だ、皆綺麗に治っていたよ」


 セーラは安心したように息を吐いた。

 自分の体より町の人達の心配をするとはセーラらしい。


「それなら、どうして三十日も眠ってしまったのかしら……」

「ここからは洋介の推測なんだが――」


 洋介が宿屋で俺に話してくれた内容を伝えると、セーラも納得した様子で頷いた。


「そう……。私の軽率な行動で皆に迷惑をかけてしまったわ。カイトと洋介にも心配をかけてしまって、本当にごめんなさい」

「気にしないでくれ。俺達三人、誰もこんな事態が起こるなんて想像していなかったんだから」


 もう少し気を付ければ良かったと悔やむ事は多かったが、スキルがバグっている以上、誰も正解なんて分からない。

 今回は誰の責任でもないはずだ。


 セーラに事情を説明した後、彼女が目覚めた事を知らせに看護師の元へ向かった。

 驚いた事に、医師も目覚めると予感していたらしく、この時間まで待機をしてくれていた。

 そのおかげで、すぐにセーラは検査を受けられた。


 一時間後、無事に魔力は安定したと医師から告げられた俺は、三十日間張りつめていた緊張の糸がぷつっと切れてしまった。


 恥ずかしい事に、セーラの前で俺は涙する羽目になった。

 これは確実に、一生の汚点として残るだろう。




 なんだかんだで朝まで病院で過ごした俺は、朝一で洋介に宛てた手紙を書いた。

 彼はセーラが目覚める日に来ると言うのかと思えば、迎えにだけ来ると手紙に書いてきた。

 村で何かあったのか分からないが、帰ったら大切な話があるとも書いてあった。

 いきなり新しい仕事を始めたので上手くいかないこともあるだろうし、帰ったらゆっくり話を聞こうとおもっている。


 セーラにも一言書いてもらって封をした。

 彼女が書いた文字を見たら、きっと洋介も安心するだろう。

 それを馬車便で送ったので、今日中には届くはずだ。


 病院に再び戻ってから、医師と今後について話し合う場が持たれた。

 医師に、一週間は入院して経過観察が必要だと言われると、最初に異論を唱えたのはセーラだった。


「カイト……私、一人じゃ……」


 やっぱそうなるよな。

 あの寂しげな雰囲気の病室で、セーラが安心して眠れるとは思えない。


「俺が毎日連れて来るんで、宿屋に泊まらせても良いでしょうか。彼女、人の気配がないと眠れないんです」

「そうですか……。病院で必要なのは検査だけなので、連れて来てくれるならそれでも良いですが、宿屋では安静にしていてくださいよ。激しい運動は禁物です」


 宿屋での過ごし方や食事などの注意事項を聞いてから、俺はセーラを背負い宿屋へ戻った。


「ありがとうカイト、重かったでしょう?」


 寝室のベッドの上にセーラを下ろすと、彼女は申し訳なさそうに俺を見上げた。


「槍使いの腕力をなめないでくれ。セーラくらいなら一日中だって背負っていられるさ」

「ふふ、頼もしいわ」


 それにBランクになったので、セーラを背負って歩いても全く疲れない体力は得たようだ。

 村にいた時はしょっちゅうヒールしてもらっていたが、それももう必要なさそうだ。

 今思い返せば、ぜぇぜぇ言いながらあの森を歩いた日々も、今となっては懐かしい思い出だ。


 あの森で何故、俺達は倒れていたのか。

 リアムの記憶が戻ったおかげで、やっと理解出来た。

 俺達にとっては始まりの森だが、リアム達にとっては最後の森だったんだよな。


 セーラと今世の記憶について意思疎通しておきたいが、それはもう少し後だ。

 まずは彼女の完全回復が先だ。

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