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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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101 セーラの体に眠っていた記憶2(今世の回想)

 お父様の推薦もあり、実力を認められた彼は騎士団へ入団することになりました。


「騎士団の制服、とてもお似合いですわ。髪もお切りになりましたのね」

「あぁ……。要人警護をする機会もあるから、爽やかさが大事だと言われてな……」


 彼は着慣れない制服と、髪の毛を切って首回りが心もとないのか居心地が悪そうです。


「ふふ、本当に爽やかになりましたわ。眼帯も外したらよろしいのに。義眼なら良い物が作れますわ」

「いや。見せたくないだけで、右目は見えている。……俺の目は左右で色が違うんだ」

「オッドアイですわね。確かに珍しいですが、貴族の中にも何人かいますわ。隠すような事では……」

「俺はこの目のせいで、親に捨てられたんだ……。田舎では、この目は気持ちが悪いらしい」

「ひどい!そのような偏見、許されませんわ!」


 そのように前時代的な考えが残っている田舎があることに驚きと怒りを覚えていると、彼は表情をやわらげて笑い出しました。


「俺の目のことで怒ってくれたのは、お前で二人目だな」

「一人目は養母様ですか?」

「そうだ。俺を拾った時は一週間怒り通しで、こっちが馬鹿らしく思えてくるほどだったな」


 昔を懐かしむように笑った彼は、それから私を探るように見つめました。


「お前になら右目を見せてもいい。驚くも、怯えるも好きにしろ」

「ふふ。オーガに襲われた後の私に、怖いものなんてありませんわ」

「言うじゃないか!今度は泣いても、あやしてやらないぞ」

「あやっ……!その必要はありませんわ!早く見せてください!」


 本当にこの方は失礼な発言ばかりです。

 頬を膨らませて抗議すると、彼は笑いながら眼帯を外しました。


 まるで宝石のように輝く、赤い瞳。

 気持ち悪いだなんてとんでもありません。吸い込まれそうなほど美しい瞳です。


 この素晴らしさを彼に伝えるには、どのような言葉を紡いだら良いのでしょうか……。


「お前……、顔が赤いぞ。惚れたか?」

「なっ……なななにを言うのです!そんなはずありませんわ!」


 恥ずかしくなって彼に背を向けると、彼に後ろから抱きしめられてしまいました。


「お止めください……。淑女に気安く触れてはならないと、騎士団で教わりませんでしたか?」

「教わった。だが、気安くではないぞ。出会った時に気に入ったと言っただろう」

「……私には、決められた婚約者がおりますわ。お気持ちは嬉しいですが……」

「そうか……」


 そう呟きながら私から離れた彼は、何か考えるような仕草をとりました。


「んー……。婚約者を倒せば、お前が手に入るか?」

「婚約者はモンスターではありません!!」


 そんな常識知らずの彼に私は度々苦労させられましたが、何故か次第に二人の距離は縮まっていったのでした。


 



 彼と出会ってから一年経ち、私は十四歳で彼は十六歳になりました。

 密かに恋人同士となっていた頃、私は意を決してお父様にお願いをしました。


「私、彼を愛しておりますわ!婚約は解消して、彼と結婚させてください!」

「そんな事できるわけがないだろう。お前の婚約は昔からの慣例だ」

「妹を嫁がせたら良いわ。彼女のほうがあの方をお慕いしていますもの!」


 妹は私の婚約者に恋い焦がれるあまり、最近では私に嫌がらせまでしてくるのですから、これで全てがうまくいくはずです。


「慣例では歳の近い娘が嫁ぐと決まっている。次女を嫁に出したら相手方に失礼ではないか!」

「そんな……。お父様は私達の幸せより慣例を優先するとおっしゃいますの?」

「お前たちの事はとても愛しているが、こればかりは変えることは出来ないんだ。すまないな……」


 その夜、私は自由に結婚相手を選べない身分を恨めしく思いながら、泣き明かしました。


「どうした?ひどい顔をしているな」


 翌日、会いに来てくれた彼とお庭に出ました。

 お花のとても良い香りに包まれながらも、私の気分は最悪です。


「ひどいのは貴方ですわ!淑女に対する物言いには気を付けるよう教わりませんでしたの?」

「あー、はいはい。忘れていたよ、悪かったな。それで?何があったんだ?」


 そう言いながら、彼は私に手を差し出しました。

 彼はこの一年で自然とエスコートが出来るほどに成長しました。

 男爵の地位を与えられた彼は貴族として、また騎士として恥じることのないよう努力してきたのです。

 私に対する扱いはあまり変わりませんが、これまでの努力には敬意を表したいと思います。


「お父様に、貴方と結婚したいから婚約を解消したいと申し出たのですが、却下されてしまいました……」

「そうか……。やはり、婚約者を倒すしかないな」

「もう!私は真剣に話していますのよ!」

「ははは!怒るな、せっかくの淑女が台無しだぞ」


 こんな時でも明るく笑う彼を見ると、悲観していた自分が馬鹿みたいに思えてしまいます。


「だが、何か策が必要だな。お前が成人するまでまだ四年ある。それまでに何とかしてみせるよ。まずは誰にも文句を言わせない為の爵位が必要だな」


 不敵な笑みを浮かべた彼はそれから幾度となく武勲を立て、ついにチャンスを掴む機会を手に入れました。

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