第7話 またまたダンジョン
「そういえば、勇者、お前名前なんなんだ?」
ロックが今更感を出しながら聞いた。
「あ、名乗ってなかったね。クロス=ヴァーティカルホリゾンタル。よろしくな」
「あ、私ユリ=フランソワーズ。よろしく」
「ロック=クライミングマウンテンだ。よろしく」
それぞれが名乗った後早速ダンジョンに向かった。
ダンジョンは暗い。以下略。やっぱり晴れている。雨の日ってあるのかな?知らない。
「なぁ、近場に呪いの装備ありすぎじゃね?」
勇者が本質見透かしたぜ‼︎的な感じでキメ顔をしながら言った。
「それな。ほんまにそれな」
聖女なのに思いっきり「それな」という泣き声の動物になっている。それな万能ですね。
「で、どこのダンジョン行く?」
勇者が言った。「どうせ近場でしょ」って顔している。まあ、そうなんだけど。
「今回はギルドから歩いて半時間ぐらいにあるダンジョンに行きます」
私がいった。
「ダンジョン多くない?この辺」
勇者が言った。
「まぁ、たぶん。魔王倒した勇者が代々ダンジョン作って引きこもったからこうなったってギルドの人に聞いた」
私が言った。
「何でやねん。ヒキニート勇者多すぎるやろ。しかも何呪いの装備つけてんだよ。聖なる装備どこいった?」
勇者が吠えている。
「えっ?聖なる装備でしょ?これでしょ」
私は、それがさも普通のように言った。
「ちげーよ。こうなんか光ってそうなやつあるじゃん」
勇者の話を聞くと、勇者の国ではやっぱり聖なる装備=金ピカみたいなのがあるみたいだ。確かにこちらでもそう聞くけど、黒の方がかっこよくない?
そんなことを言っているうちにダンジョンについた。また、暗いですね。もう良いわ。ひたすらダンジョンを巡る冒険者ってどうなんだろう。たまにはゴブリンとかドラゴンとかやらないとなぁ。
「グオーン」
ダンジョンが揺れそうなほどの声が聞こえて来た。やったー。ドラゴンだ。うわーい(魔初感)。ハンバーグ。ドラゴンハンバーグ。今日の夜ご飯。わーい。キャラ崩壊著しい聖女、私。
「なんだ?ドラゴンか?」
ロックが言った。
「うわーい。夜ご飯が泣いてる」
私の知能が魔法学院初等部並だ。ドラゴンのお肉はすごくおいしいのだ。それはもう。本当に美味しいのだ。しかも、食べても太らないし。わーい。
「あの?聖女さん?夜ご飯?あの咆哮が夜ご飯?ドラゴンだよ。夜ご飯なの?」
勇者が困惑している。
「俺は慣れた。こいつドラゴン肉大好きなんだ。それはもう、聖女とか勇者とか魔王とかどうでもよくなるくらい好きなんだ」
ロックが諦めたように言った。
「コイツドラゴンの時だけ俺に金預けるんだよな。で、自分で倒したドラゴンを俺に焼かせるんだぜ。どんだけ好きなんだよ。そして、俺は肉焼き当番だよ。戦ってないからって肉焼きって」
自嘲じみた声でロックが続けた。
「あ、あぁ。あぁね。まぁ。なるよね。あの人がこんな感じになるんだもん」
勇者が言った。
さて、奥に行くと、聖女の夜ご飯もとい、ドラゴンが登場した。赤くて翼のあるタイプのいわゆるドラゴンだった。美味しそうな色をしている。
「貴様、何をしにここに来た。ここは人の入るとこではない。帰れ」
ドラゴンが渋い声で言った。
「お肉。晩ご飯」
そう言いながら私は切りかかった。もはや、夜ご飯の事しか考えていなかった。だって美味しいもん。これは誰にも渡さない。私の夜ご飯。
「ぬっ。き、貴様、卑怯だぞ。何をする」
息も絶え絶えになりながら、ドラゴンが言った。
「夜ご飯。美味しいドラゴン肉。わーい」
私にはそれしか無かったし、叫んでた。夜ご飯。
「あれが聖女なんだぜ。怖いだろ?」
とロックが言うと
「なんか、もう。うん。諦めた。この世は理不尽だわ」
勇者も同調する。
ドラゴンもとい夜ご飯しか考えてない私はそんな事知らない。ドラゴンの咆哮に負けないほどお腹が鳴った。
「き、貴様。覚えて、おれよ。いずれ、第二、第三の龍が貴様を倒すだろう」
ドラゴンは息絶えた。
「わーい。夜ご飯ゲットだぜ」
私が言った。あれ?側から見たら変な人かな?まぁ、いいや。美味しいものは美味しいし。
もちろんロックに肉を焼いてもらい、パリパリの皮と中のジューシーなところにかぶりついた。美味しかった。これだよ。これ。あぁ美味しい。気付くとほとんど骨だけになっていた。ついでに装備もゲットした。
その装備は黒光りしている。あのシリーズだ。で、能力を見た。
呪われた脚装備 カースドエクスカーリバ
能力 瞬間移動(水陸両方で使える。)ただし、任意発動
空中移動
魔法攻撃力強制的にゼロ
回復量5倍
装備者の装備感をなくす。
あ、やばい。ロックのいる意味本格的にドラゴン肉焼き職人になってしまう。どうしよう。あ、でも、あの火加減は誰にも真似できないしなぁ。うん。あるね。
「で、能力どうだった?」
ロックが聞いた。「また、いつものだな」って感じで言われた。
「えっと。瞬間移動?」
私が返す。
「まじかよ。やべーな」
ロックが言った。少し悲しそうな表情だった。
「でも、居てくれないと困るの。私は貴方の火加減が好きなんだから。ドラゴンにあった時絶対にあなた以外の火加減で食べる気はしないわ」
「新手の告白ってことでいいのか?」
頬を紅潮させながらロックが言った。
「あ、まあ。はい。言葉が出てこないよ」
私も頬が紅潮しているだろう。まあ。暗くて見えないけど。松明の火加減かもしれないし。もう本当に乙女な反応になっている。乙女属性みたいなものは完全に消えたはずなのに。
「あの。お二人さん。お熱いところ悪いのですが、私も居ますよ」
勇者が言いにくそうに言っていた。ちなみにドラゴンはいい肉だった。美味しかった。
さて、私は軽く心も体も5センチ浮きながら帰った。瞬間移動はしなくても良かったので脳内でオフにした。
で、ギルドに帰った。楽しい。明日は何ができるかな。