第2話 呪いの装備との出会い 1
さて、王城に行き、王様に回復魔法をかける。入学式の時にあった以来だから、だいぶ久しぶりだ。王様は元気になると「おう、ユリ。久しぶりじゃな。息災だったか?」とにこやかに微笑み、私は「ええ。もう卒業して、世界を冒険してみようかと思っております」と返す。
「どれ、褒美を取らせよう。何がいい?いや、金じゃな。世界を旅するということは危険もあるじゃろう。成績優秀なユリなら大丈夫じゃとは思うがの。ほれ、100万ぐらいでどうじゃ」
「恐れ多いので、もう少し少なくても」
「謙虚に見えてしたたか。流石じゃな。お主のしたことはワシだけじゃなくひいては国民をも救っておる。100万ぐらい安いもんじゃ。のう、財務大臣よ」
「はっ。税収も安定しているため、可能かと」
「ありがとうございます。では、大事に国民、いえ、世界中の民の幸せのために使わせていただきます」と誓い、王城を後にする。
回復魔法で王様を助けると感謝され、お金が手に入った。一生暮らせそうなくらいのお金だったが、何かあると困るので、早速ギルド銀行に預け、ダンジョンに向かった。よく考えたら一生は無理かもしれないけど。もちろんソロで。だって友達いないし。みんな他のところで頑張っているから。私もここ地元じゃないし。がり勉でスポーツ万能だけれども話が合わなかったのだ。
なぜ、ソロなのか。それは聖なる装備コンプが目標だからだ。今までローブしかつけさせてもらえなかった腹いせだ。たまには違う装備付けたいし。大体聖なる装備はかっこいいらしいからすぐわかるだろう。
さて、暗がりの中、不気味に響く魔物の鳴き声や、他の冒険者の絶叫が響く。どんな時だって肝が座っていた、私も流石に怖くなってきた。私は一応松明を持ってきたけど暗い。そして、また魔物がやってきた。なんかあのあれ。えっと、あの、オーなんとか。みたいな、太くて、硬い棒を持った、あの。あー。思い出した。オークだ。我ながら、だいぶひどい物忘れだなと思う。これでも、成績は優秀だったのだ。
「ライトニング」
稲妻で、一撃で、焼き払った。これも自慢の魔法だ。まだ魔法使ってたいかも。やっぱり演出派手で良いよね。物理で殴るのも良いけど。まさか物理聖女になるわけないでしょう。だって、演出地味じゃん。一瞬そっちもありかな?と頭に浮かんだけど、魔法で倒しまくっている私が、魔法をやめるなんていう選択肢はないと思っている。
まあ、簡単に倒せた。よかった。まぁレベル10だけど簡単。ちなみに推奨レベル30である事を私は知らない。私は、世間知らずなのかもしれない。知ったあとめちゃくちゃゴブリンでレベル上げした。
さて、暗がりを進み、襲いくるオークを討伐し、コウモリにびっくりした後、とうとう見つけた聖剣エクスカリバー。っと私が思うもの。黒く光るかっこいい剣。これは強い(魔初感)。
説明しよう。魔初感とは魔法学院初等部並みの感想の略である。感動しすぎて、初等部並みの感想しか出なかった。感動すると言葉でないよね。
で、抜いてみた。割と普通に抜けてしまった。何でみんな抜かなかったんだろう。簡単に抜けるのになぁ。私は拍子抜けしすぎて、口がポカーンってなってたと思う。のちに聞いた話だとおそらく単純な筋力で抜けたようだ。回復魔法で筋力を鍛えておいてよかった。
簡単に抜けるのが異常なのを私は知らなかった。やっぱり常識知らずかも?この剣を解析すると次の情報が出た。
呪われた魔剣 カースドエクスカリバー
物理攻撃力500倍
魔法攻撃力強制的にゼロにする。
持ったものを強制的に剣士にする。重さが自動で持ったものにフィットし、剣術レベルをマックスにする。剣をしまった状態でも物理攻撃力は500倍になる。攻撃属性はそのもの自身の使える属性に依存するため光の魔力を持つものなら光属性が使える。ちなみに回復魔法は攻撃ではないため普通に使える。
面白いので装備した。普通の僧侶は装備できないのだがそんな事私は知らない。うん。知らないことは仕方ないよね?ちなみに私は聖女なので僧侶の縛りが当てはまらないこともあるらしい。試した人がいないので文献にも情報はないし。
「貴様、我を握れるのか」
魔剣が喋った。っと私は思った。ただ単に響いただけかもしれないし、魔法陣があるのかもしれないけど見えないので多分剣だよね。
「えっ?普通じゃ無い?魔剣さん」
私は普通に言ってしまった。驚いたのは剣の方だろう。
「何普通に受け入れてんの?アンタは異常。はっきりわかんだね」
エクスカリバーが言った。
「何それ(魔初感)」
「アンタも動画の影響受けてんのかい。封印の間暇やったから動画見てたけどアンタもか」
それはそうだろう。魔法学院初等部でさえ動画は見ているのだ。一体誰が封印したんだろう。
さて、装備して先程のオーク達を倒す。うん。強い(魔初感)。マジで強い。もはや魔初感しか出てこない。感動しすぎて言葉にできない。ちゃんと攻撃が当たるし、一発で倒せるし、気持ちがいい。
さて、と言う事でギルドに戻り、ご飯を食べている。今日の晩ご飯はキーマカレーだ。美味しい。少しギャリックが入ってそうだ。あ、ニンニク?だっけ?
もちろん聖女みたいな綺麗な人が黒い剣を持っていると目立つわけで、声をかけられた。
「お前の持ってる剣なんていうんだ?」
背の高い低い声の男性冒険者に声をかけられた。斧も持っていて、筋骨隆々の渋いイケメンだ。ちょっと怖いし、逃げたいから「たぶん聖剣エクスカリバー」なんて適当に言ってしまった。なんか焦ってしまってた。だって見た目ゴツいんだもん。エクスカリバー出しとけばなんとかなる説ない?
「お前本気か?聖剣はもっとこう光ってないか?」
一理あると思う。だって。適当なんだもの。でもかっこいいから聖剣てことにしとこうよ。聖なる装備はかっこよければ聖なる装備だと魔学で習った。ちなみに、この世界のかっこいい装備の基準は金色でキラキラしているものだということを言っていたらしいが、そこだけメモを忘れていた。
「輝いているじゃ無い。黒いし。これが聖剣よ」
でも、やっぱり信じたいじゃん。聖剣でしょ?私は確信じみたものを持っていたけどどうなんだろう。
「なら、その聖剣で俺と決闘しろ。時間は明日だ」
そんなこと言われたって怖いよ。おじさん。女の子に勝負しろって何?私僧侶だよ?剣持ってるけど。
「わかったわ」
とりあえず、頑張らなきゃ。私はソワソワドキドキワクワクして眠りにつくのが遅くなった。剣は何故か喋らなくなっていた。やはりダンジョン限定の声だったのかもしれない。