第16話 街に現れたドラゴン
紅く染まる空。不吉な予感が街を包む。これからドラゴンとの戦いが始まる。
ドラゴンは咆哮した。その咆哮は街の方向に向かって空気を震撼させながら進んだ。咆哮でギャグを作るぐらい余裕なのだ。
だって、瞬間移動で倒せるし。問題はまだお腹空いてないことだ。あとロックさんもどこにいるかわからないから肉の処理どうしようとか考えている。
「お前はドラゴンを恐れないのか?」
ドラゴンが人の言葉で話した。それもやはり大音量。さすがドラゴン。わーい。
「はい。ご飯です」
私は別に変なことを言ったつもりはない。
「ドラゴンがご飯だと?誇り高きドラゴンを愚弄するか」
ドラゴンは激怒した。それはもう激怒した。火山が噴火するほど激怒した。
「愚弄というよりは堪能してます。それはそれは美味しいです」
わたしは率直な感想を言う。だって美味しいものは美味しいんだもの。
「ちょっとユリ何言ってんの?確かに美味しいけど。やばいって」
ミルトニアが焦っている。
「ごめんなさい。この子変なの。優しい子なので怒らないでくれますか?」
ミルトニアがお母さんみたいな言い方をする。
「おい。そこのお前こっちに来い」
ミルトニアと私は横に並んでいるので、どっちかな?
「どこのどなたでしょうか。で、用件は?」
私は早く用件を聞きたかったのでそう言った。淡々と。
「お前だよ。黒いの。用件?そんなの親戚のドラゴンめっちゃ倒されてるの。そんなペースで狩られると追いつかないの。絶滅させる気か?」
ドラゴンはやっぱり激怒している。私はドラゴンのところへ向かった。もちろん瞬間移動はしない。秘策だもの。
「えー。それはやばい。美味しいのになぁ。絶滅させる気は無いよ。美味しいから」
私にとって普通の事を言った。
「お前食べてるのかドラゴン。まぁ、さっきご飯と言ってたしそうだと思うけど量かなりあるだろ?」
ドラゴンは狼狽ている。
「私結構討伐したり、色々したりしてお腹空くからあのぐらいが良いのよねぇー。あ、美味しい肉知ってる?代わりにそれ食べようかな」
私はドラゴンがピンチとの事で代替の肉を探す事にした。
「どんだけ肉好きなんだよ。野菜食べないと太るぞ。オークはうまかったかな。あと山菜ならフキノトウとかフキとか?マゴノメとかだな」
ドラゴンもオークおいしいと思ってるんだ。ダンジョンに結構いるし、明日オークのしゃぶしゃぶとかも良いな。ミノタウロスとかいるかな?
「えっ?植物メインなの?」
やっぱり驚くよね。ドラゴン肉食のイメージがあるし。
「そうだよ。聞くところによるとお前聖女らしいじゃないか。なんで肉ばっかり食べてるの?怒られないの?」
「そもそも、聖女と知ってるのはアンスリウム王国だけだし、ミルトニア連れてきてからミルトニアが聖女だと思われてるし。私騎士だと思われてるし」
「それで良いのか?そもそも、戒律とかないのか?」
ドラゴンは絶対私のこと変なやつだと思ってる。
「うーん。あったみたいだけど忘れたし良いかなって。私元から聖女として生まれたみたいで教会で何をしてるのか覚えてないんだよね」
私が言った。
「ダメだわ。ドラゴン終わったわ。俺帰る。間違えても討伐するなよ。フリじゃないからな。絶対やめろよ。魔王来るかもしれんぞ」
ドラゴンがフリにしか聞こえないことを言った。
「やれって事ですね、わかります」
私はそういうとドラゴンの後ろに瞬間移動し、自慢の剣エクスカリバーで峰打ちした。
「おい。やめろって言ったよな?なんでやられてんの?何してんの?」
ドラゴンが煽ってくる。
「やめろ、やめろはフリでしょ?私の王国だとそうなんだけど、違った?」
私の中の普通の事を言った。
「違うわ。マジで魔王来るからな覚悟しとけよ」
ドラゴンはそういうとぐったりした。
「魔王って美味しいの?」
聞いたけど。死んじゃったみたい。私は瞬間移動でロックさんに肉の件を伝えた。
私は美味しいものを食べたいだけなのだ。強くなったのもそのため。