第11話 勇者と仲違い
私は今日体調が良くない。なんか頭が痛い。そんな事情を察してか姫様が心配そうにこっちを見ている。
「なんか頭痛い」
私が言った。
「大丈夫ですか?無理は良くありませんよ」
姫が気遣ってくれた。
「おい。魔王討伐するんだろ。すぐ出るぞ」
勇者が言った。
「まあ、落ち着け。頭痛いなら医者に見せるか?回復魔法でなんとかならんか?アンタのは地面直せるチートだろ?」
ロックさんが勇者を宥めた。そして、私を気遣う言葉をかけてくれた。
「試したけど無理だった。寝てたら治ると思うから今日は出れないわ。ごめんなさい」
私の声も少ししょんぼりしている。本当はわたしだって行きたいけど、まさか風邪を引くとは思わなかったのだ。
「そうか。なら、お前の好きなドラゴンの唐揚げでも作ろうか?」
ロックさんが言った。本当にわかってくれててありがたい。神だわ。
「ありがとう。でも、ドラゴンの肉余ってた?」
私は喉の調子も少し微妙だ。おそらくロックは気づいたであろう。
「まだ、少女1人分はあるさ。基本的に天日干ししてあるし。いけるだろう。とりあえず、安心して休んでな。もし、足りなかったら買ってくるわ。お大事に」
ロックさんは流石だ。私を気遣う事ができている。それに比べて勇者は。はぁ。
「何倒れてんだよ、ざまぁ。今ならお前も怖くないわ。風邪で倒れる様なお前マジで用無し。とりま、また次の街ででも会えたらいいですね。ざまぁ」
勇者本当に性格が悪い。ロックさんは神すぎる。何あれ?神の権化かよ。
ちなみに剣は肌身離さず持っているため、勇者が攻撃してきても体はしんどいが、おそらく勝てる。
「私だって行きたいわ。でも、今はゆっくりさせて。あなたも体調崩す事あるでしょう?」
私が元気のない声で言うと、
「ないわ。俺は今まで1度も不調な日ないわ。基本絶好調。風邪引くやつマジで雑魚。やーい、雑魚聖女」
と返ってきた。コイツ魔王に殺されてしまえ。魔王より絶対魔王だわ。
さて、そんなしょうもない事をしている間に、姫が生姜湯を作ってくれた。
「どこに生姜なんてあったの?」
私が驚いていると
「あ、ロックさんが買ってたんです。ドラゴンの唐揚げをいくらでも作れる様にという事で」
とのことだった。まじ?ロックさんまじ神と心の中で崇めておいた。
「ありがとう。ロックさん。そして姫。あなた達は最高のパーティーです」
「何俺、はぶってんだよ。まじ許さないから」
勇者その嘲るようなふざけた口調やめろ。ぶっ殺し奉り候よ。
腹が立ちすぎて変な口調が混ざってしまった。まぁ。心の声なんだけど。
やっとロックさんが帰ってきた。
「ドラゴン肉手に入ったぞ。あと、生姜だな」
美味しそうな匂いが私の鼻腔を刺激する。お腹がぐうぐうなってしまいそうだ。凄く美味しそう。
あれ?頭痛は?なんか治った?マジで?しんどいフリする?いいや。ロックさんに悪いし、勇者にだけしよう。
こうして、作戦を実行した。作戦の内容は風邪を引いているフリをするので、勇者が心配するか見てもらおうというものだ。
ちなみにドラゴン肉の唐揚げはどこのお店のものよりロックさんのがいい。凄く美味しい。
で、作戦の結果もちろん勇者は心配しなかった。他人に対してなら頑張れるけど、仲間とかその辺はどうでもいいのかもしれない。