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幼女のお股がツルツルなので徳川幕府は滅亡するらしい  作者: マルクマ
第三幕 子猫はもっと遊びたい
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雷蔵、私にも友達ができたんだよ! 2

「えー、これまでの長々とした話を全部ひっくるめて端的に言いますと、坊ちゃんに初めて友達ができた。というわけですかい」


「そういうことだよ」


 話をまとめるとその一言で済む話を、青太郎は四半刻(三十分)をかけて喋りまくった。


 それくらい青太郎にとって嬉しいことなのだと察することができるし、そのこと自体は良い事なのだろう。


 三つや四つの頃の青太郎が友達が出来たとはしゃいでいるのなら雷蔵だって一緒に喜んでいるところだ。


 しかし青太郎はもう十六。赤ん坊が初めて「おっ()ぁ」と喋ったことを喜ぶ親のような気持ちにはなれない。


 むしろ「へ? ようやく!?」と不安になる。それどころか今まで一人も出来なかった友達が急にできた。そこに何か裏があるのでは……と考えてしまうのは雷蔵らしい用心深さがあるからか……。


「青太郎坊ちゃん。その者たちは坊ちゃんを狐屋の主人だと知って近づいてきたのでは?」


「もー、何を聞いていたんだい雷蔵。その子たちは私を人攫いだと勘違いして刀を向けてきたんだよ。私の顔つきが間抜……穏やかなので、すぐ誤解だと分かってくれたけどね」


「間抜けな顔つきで良かったですな」


「お前、私がわざわざ言い換えたところを元に戻さなくて良いからね」


「で、その子たちは猫探しを明日も手伝うと言ってくれたんですかい?」


「うん。私でもできそうな仕事だから狐屋の主人としてひとつやってみようと奮起した甲斐があったね。私の人徳がああいう心根(こころね)の優しい子を引きつけてしまったんだろうね」


「単に暇だったからじゃないですか? まぁ、どちらにしても金が目当てで近づいてきたんじゃないなら安心です」


「……まぁね」


 いくら場の空気が読めない青太郎でも、さすがにこの流れで猫が見つかったらその子たちに一分ずつ渡さなきゃいけない事になっているとは言い出せなかった。


「一応確認として訊きますが、その子たちの身元は確かなんで?」


「んー、何と言ってたかなぁ……。あ、そうそう確か『猫柳家幼女家臣団』と言ってたぞ」


 青太郎が微妙に覚えきれていない名前を出すと、雷蔵は怪訝(けげん)な顔つきで訊き返した。


「猫柳家幼女家臣団? ……狂言一座ですかい?」


「私と同じことを聞くね。でもあの子たちは本当にお旗本の家来らしいよ。私は猫柳家なんて聞いたこともないのだけど雷蔵は知っているかい?」


「猫柳家……」


 雷蔵は青太郎が騙されているのではないかと勘ぐったが『猫柳家』と『幼女家臣』という二つの組み合わせで、先代将軍の末子の徳川余三郎が猫柳家という端役の(やっこ)よりも実入りの少ない家を継いだ事を思い出した。


 確かそこには服部家と立花家の娘が厄介払いで押し付けられているという話も耳にしたことがある。


「聞いたことがありますな。他家から押し付けられた幼女を家臣としている猫柳家という旗本のことは」


「へー、それじゃああの子たちは本当に旗本の家来なのか。けれど幼女が家臣とはおかしな旗本だね」


「旗本といっても最下層の家格ですな。おそらく日々の食事にも事欠く生活をしていることでしょう」


「なんだい。私の友達を悪く言うのはやめておくれ」


 青太郎が珍しく本気で機嫌を損ねている顔をしたので不意を突かれた雷蔵は少しだけ慌てた。


「いえ、あっしは何も悪口を言うつもりはなくて、そういう生活をしているだろうから明日はその子たちに弁当を持って会いに行けば喜ばれるのではないかと言おうとしたのです」


「おおっ! 確かにそうだね。それじゃお都留さんに言っておにぎりを作ってもらうことにするよ。具は何が良いかなぁ……」


 勝手にやってきて貴重な睡眠時間を奪っておきながら、こうも能天気な顔で喜んでいる青太郎を見ていると雷蔵はなんだか無性に腹が立ってきて嫌味の一つでも言ってやろうという気になった。


「それにつけても、坊ちゃんは裕福な家に生まれて良かったですねぇ。何の取りえもない坊ちゃんが普通の家に生まれていたら彼女たちと同じ生活をしていたかもしれませんぜ」


「あぁそうだね、私ぁこの家に生まれて来て良かったよ。こんな私でもあの子たちにしてあげられることがあるんだから」


 雷蔵の嫌味に対して青太郎は無邪気な笑顔で答えた。


「――っ!?」


「ん? どうしたんだい雷蔵。急に苦しそうな顔をして」


「いえ、なんでもありやせん。それより早く出て行ってくれませんかね。あっしは早く休みたいんで」


「あぁそうだった、邪魔して悪かったね。ゆっくり休んでおくれ」


 青太郎が上機嫌で部屋から出て行って雷蔵は部屋で一人になる。


「……ったく、普通は嫌味を言われたら少しくらいムッとするもんだが、嫌味に気付かないようじゃ手に負えねぇ」


 ぐったりと布団の上に倒れた雷蔵は目を覆うように手を顔の上に置いた。


 目を瞑って溜息を吐くようにすぅー……と鼻息を吹く。


「ったく、本当にどうしようもねぇなぁ……」


 雷蔵の口元は静かに笑っていた。

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