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幼女のお股がツルツルなので徳川幕府は滅亡するらしい  作者: マルクマ
第二幕 みんなが子猫を探してる
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余三郎の人生はいつだって崖っぷち

「殿ぉー! 大漁でござるっ!」


 余三郎が家に戻ると、祭り見物に出掛けていた三人娘たちがほくほく顔で待っていた。


 土間の囲炉裏(いろり)に釣り下げられた鉄鍋からまろやかな味噌の香りが漂っていて、側には紅白の小さな餅が二~三十個ほども積み上げられている。


「……そうか」


 余三郎は死人のような眼でそれを見て力なく頷いた。


「と、殿? いかがなされた。まるで魂魄(こんぱく)が抜けたようになって……」


 余三郎の異変に気付いた百合丸が慌てて駆け寄ってきた。


「うん、まぁ……」


「殿。どうかした? なの」


 霧も心配して側にきた。


「ん……」


「もしかすると妾のせいかえ?」


 諸事(しょじ)において楽観的な愛姫もさすがに心配になった。


「ん……」


「父上に……お会いしたのか?」


「ん……」


「父上はなんと言うておった?」


「姫を連れ出した犯人を撲殺(ぼくさつ)するって……。生きたまま背骨を引っこ抜くって……」


「せ、背骨を……。痛そうでござるな」


「殿。可哀想……」


「あらあら。話が通らなかったみたいねぇ~」


 たすき掛けをした菊花が裏手の井戸から姿を見せた途端に、余三郎は泣き顔になって菊花に駆け寄った。


「菊花さん。な、何か良い策はないだろうか……。このままじゃわし……わしは……」


「そうねぇ」


 皆に視線向けられた菊花は暫く考え込んだ。そしてポンと手を打つ。


「な、何か妙案が!?」


 自分の命が風前(ふうぜん)(ともしび)の状況になっている余三郎。


 家臣である少女たちの目も(はばか)らずに菊花の(そで)(すが)りついた。


 菊花はよしよしと余三郎の頭を()でて力強くこう言った。


「とりあえずご飯にしましょう!」


「……へ?」


「お腹いっぱいになれば良い案も浮かびますわ。きっと」


 ニコッと良い笑顔の菊花。あまり深く考えもせずに問題を先送りにしただけだった。


「終わった……わしの人生ここで終了じゃ……」


 余三郎は膝から崩れ落ちて土間に腰を落とすと、そのまま縁側の猫のように体を丸めて小さくなった。


「殿……」


「叔父上……」


「殿ぉ、餅はいくつお食べになりますかぁ?」


「……五つ」


「なんじゃ。余裕があるではないか」


 愛姫が心配して損をしたと言わんばかりのジト目で睨むと、余三郎は袴についた土を払いながら板間に上がった。


「明日死ぬにしても、今日餓死したんじゃ意味がないゆえに」


「そう考えられることが余裕じゃと言うておる」


「殿はけっこう(はら)が太い。流石は霧の良人(おっと)。なの」


「霧殿、こんな時にさらっと変な宣言をするものではないぞ。殿の奥方は誰になるかまだ決まっておらぬ」


「霧、そのうち既成事実(きせいじじつ)を作る。霧は殿と子供(ややこ)を作る。なの」


「させぬ。断じてさせぬぞっ!」


「なるほど、こうやって日々二人の鞘当(さやあ)て合戦に挟まれておるから叔父上の胆力(たんりょく)はず太いほど鍛えられておるのじゃな」


「こんな冗談などで胆力が鍛えられるわけがござらぬが?」


 きょとんとする余三郎の前に膳を置いた菊花がクスクスと笑う。


「いつもこんなだから、そのあたりの感覚がもう麻痺しちゃってるのよねぇ、殿は」


「ふぅむ、それはそれで厄介じゃのう」

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