七行詩 61.~80.
オリジナルコンテンツ『七行詩』の61番~80番です。
『七行詩』
61.
誓いのあと はるかすみゆく 青空に
歩を進め 筆を進めて 描くのは
山あり谷あり 色とりどりの
小さな僕らの ストーリー
時に交わり せめぎ合い
一つの色を作っては
それぞれの場所で 花を咲かせる 種となる
(遥か澄みゆく、春霞みゆく)
62.
戸惑いに 答えを求む ことなかれ
一番守りたかったものは
いつもこの手で壊してきた
そんな僕にも 言えることは
ためらい傷ほど 癒せず 痛むものはない
どうせなら 全てをぶつけて 0になろう
そこにまた 1から積み上げられるから
63.
今はもう 追いつけないほどの速さで
貴方は前に 進み行く
けれどもし その先貴方が見たものを
私にも見せてくれるなら
決して寂しくありません
貴方の道行きを祈りながら
過去ではなく その一報を待ちましょう
64.
露は降り 朝の訪れを 待つ部屋に
筆を走らせ 書き留めるのは
望める姿の 備忘録
描き見た 無彩の花より 味わい深く
この心は 泡より軽く 浮き立つので
光に包まれ 眠りにつけば
夢の中まで 影を連れ行きたいのです
65.
店いっぱいに 並ぶレコードを
全て 再生し終えるのと
書架を埋め尽くす 本たちを
全て 読み終えるのと
この人生の幕切れは どちらが先だろう
ただ言えることは 僕らが抱える物語も
そこに並んでいいくらい 素敵なはずだよ
66.
積み重なる 真っ白な紙を 前にして
伝えたいことが 私には
はっきりと見えてくるのです
似たように 窓越しに空を 見上げると
そこに居るはずは ないというのに
曇りなく笑う 貴方の顔が
どうも 浮かんでしまうのです
67.
照りつけて 色を失う アスファルト
貴方が愛した季節には
あの空を越え 山を越え
淡い木洩れ日 葉擦れの音に
海が見え 限りない青 さざ波の音
息を止め 貴方が目にする色彩を
この町に届けてくれませんか
68.
絶え間なき 時に捨て行かれるように
この身一つに 当てはなくとも
皆が待ちわびた季節には
笑顔や 桜の花が咲く
華やいだ 祭りの音頭を 聞きながら
人知れず もたれ見上げる 木の下で
舞い降りる雪 手のひらの上
69.
晴れやかな 気持ちで外を 眺めれば
今この日々は どこまで自分で得たものか
もらったものかの境など 小さき悩みか
えも言わず 一つの絵画を 前にせば
大自然に 引かれた線など 在りはせず
『雪解けの 水と流れが せめぎ合い
春の小川は 光りて踊る』
70.
貴方は私が 繰り返し
見つめ続けた 絵画です
ただのひとことも 言ってはくれず
変わらぬ姿で 微笑み続ける
思い出を なぞろうとして 汚すくらいなら
絵の具が乾くまで待とう、と決めても
日焼ける紙と 消えゆくおつもりなのですか
71.
通い道 時速十キロで すれ違う
君は引き算で 人を見るから
僕には何も 残らないね
僕は一つずつ 君の中から見つけたかった
君にしかないものや
誰もが持っている ほんの少しの優しさまで
そんな時間さえ 与えてくれはしなかったね
72.
夢に見て 想い描けば ただ一人
広げた地図を 折り畳んでいた
追い求む 小首もたげし 夢想の花
いつかこの手で 守り抜くために
時には しがみつくように
地図は捨て 望む未来も 幸せも
今捕まえに 行かなきゃね
73.
並木には 年に一度の 約束が
此方へと 手を伸ばすように 咲いている
あの花は 明日も咲いているだろか
あの蕾は 明日には花開くだろか、と
祈り 巡らせ 背を向けるのは
まるで人との 別れのようだと
咲き誇る 姿を胸に 行きましょうか
74.
これこそが 大事なことだと 思い立ち
一直線に駆け抜けては
いつも見落とすものばかりで
一つずつ 拾いながら歩けば
おまえは鈍いのだ、と言われ
私は醜く 愚かしく 貴方の恥とならぬよう
やはりこの手は 重ねるべきではないのです
75.
国道の 途絶える事なき 喧騒も
路地に入れば 静寂は降りて
溜め息さえも 聞き漏らさずに
夜はただ傍に 居てくれる
都会の暮らしも 慣れそうだ、と
ただそれだけのことさえも
貴方には 話したくてはしょうがない
76.
春を待ち 咲き乱れては 一言に
別れを告げて 散りゆけど
青々と 生命いっぱいに葉を広げ
巡る季節を 喜ぶように 呼吸する
秋風に 葉を落として尚 倒れずに
寒さに負けず 立ち並ぶ
強かで 美しい木を 僕らはいつも見つめてる
77.「七夕」
いつの日も 空は透明に 幕を張り
光の色や 星空を 広げいっぱいに映し出す
地球は廻り 僕らを連れて行くけれど
あの日 あの場所の座標は
いま どの辺りに見えるだろう
惑星が 同じ順番に並ぶとき
僕らは再び 向かい合うことができるだろうか
78.
目の前に 扉は二つ、と 告げられる
私には 目隠しをして 立たされて
耳は塞がれ 声も出せず
明日の選択は 闇に突き放されるようで
君は先に選んだのか 今もすぐ傍にいるのか
探り当てようと 伸ばす手は
今にその 取っ手に触れてしまうのだ
79.
口をつく 言葉に布を 着せるより
包み隠さず 話してみよう
声より先に 動くのも
言葉の後ろに 隠れたがるのも
偽りのない 強さや弱さ
正反対な僕らのままでいることが
お揃いの衣装より お似合いだよね
80.
攫われた 想いが見せる まぼろしに
足を踏み入れた その際に
配られた 切符は切られてしまったよ
この遊園 一度抜け出して しまっては
立ち入ることは もうできない
舞台は全て 終わったというのに
浮かぶ灯りを背に 僕は 未だ門をくぐれずに