届けたい、届かない
「先輩には好きな人がいるんですね。」
わたしのその一言で“先輩”は凍り付いたかのように動かなくなった。
嗚呼、どうしてわたしは先輩のこころに土足で駆け込んでしまったのだろう。こんな詩的表現を脳内で行うことができるくらい時間が流れるのが遅い。
先輩の顔が焦りの表情へと変化していく。
やはり図星だったのだろう。今朝見てしまったあの光景は忘れられるはずはなかった。
あの先輩が恋焦がれている表情なんて見せたことはなかった。いつもみんなの前に立ち、時には縁の下の力持ちとして支えていた。わたしやほかのメンバーにだって微笑んでいてそして何者にも負けない姿を見せていた。
だからこそ、あの先輩が恋をするなんて私は考えたこともなかった。
「そうだな、私はいつの日か恋をしていたんだろうな。」
先輩のその一言がわたしに重く突き刺さった。
「今日は解散にしよう。」
重い雰囲気の中、先輩は絞り出すかのように言葉を吐き出した。
「わたしは、あなたのことが!」
聞きたくないとでもいうかのようにわたしの隣を通り過ぎていく。
「私は君を兄弟のように思っていたよ。すまない。」
そういって先輩は去っていった。
生徒会室からも、この世からも。
先輩の気持ちは今となってはわからない。
先輩のことがひっかかってわたしは前に進めない。
いつかこの気持ちに整理がつくのだろうか。
私の気持ちを置いてけぼりにした先輩にやつあたりするかのように
先輩が苦手だったあまいココアを墓に供えるのだった
お読みくださってありがとうございます。
一つだけ質問ですが
あなたは先輩と後輩、どちらが男性でどちらが女性で想像しお読みになりましたか?