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黒竜は異世界に帰る  作者: 夢見シン
第一章 ギャレリア帝国編
6/62

現状把握のついでに企む

 以下、”良い子の学習シリーズ”【漫画で教える人間族の歴史】より抜粋。


 ====================


 昔、世界を滅ぼそうとする悪い黒竜が居ました。


 人間族は世界を守る為に一致団結して黒竜に立ち向かいました。


 しかし、邪神レイアの加護を持った黒竜に人間族は歯が立ちませんでした。


 そんな時、人間族の願いを聞き入れた女神アーリア様が天界より御使いを連れて降臨しました。


 そして女神アーリア様は、とうとう黒竜を打ち滅ぼしたのです。


 それでも世界に平和は訪れませんでした。


 黒竜は滅びる寸前に自身の亡骸から魔人族を生み出し、邪神レイアは魔人族を新たに配下として再度人間族と女神アーリア様に戦いを挑んだのです。


 永い永い激闘の末、女神アーリア様は邪神レイアと魔人族を大陸の北の果てへと追いやりましたが、代償として地上に顕在する力を失ってしまいました。


 それから二〇〇年、人間族は女神アーリア様が再び力を取り戻す日まで、大陸の北にある魔人国から世界を守る為に戦い続けているのです。


 ====================


 静寂が当たり前に鎮座する帝城内の図書室、その一角で六人は座れるであろう席を大量の本で独占しているアキトは、たった今読み終わった……妙にデフォルメされた可愛らしい挿絵の入った書物をパタンと閉じる。


「………………ふっ」


 アキトは気取った雰囲気でニヒルな笑みを零しつつ、件の本を手に取り静かに立ち上がると……、


「知るかっ!」


 全力でそれを床に叩きつけた。思わず静寂を突き破るパトスが口から迸る。それくらいツッコミ要素満載な内容に、アキトは仇敵を前にした戦士の如き形相で件の本を見下ろしていた。


 ここに書かれている”黒竜”とは間違い無くアキトの前世の事だ。アーリアとその下僕な天使共に嬲り殺された哀れな黒竜である。なので”打ち滅ぼされた”のは正しい。しかし”世界を滅ぼそうとする”って何やねん!? と美矢並に訛って抗議せずには居られなかった。そんな事したいと思った事すらない。


 加えて、人間族と争った覚えも無い。確かにアーリアに扇動(寧ろ洗脳?)された人間族が竜族を敵視してはいたが、そもそも力の差があり過ぎて竜族は歯牙にもかけていなかった筈だ。


 何よりツッコミたいのが”自身の亡骸から魔人族を生み出した”って……んな事できてたまるか‼ お巡りさん、俺は無実です! 弁護士を呼んでください、ってか県警本部長と懇意にしているので俺に手を出すとエライ事になりますよ! ……え、癒着? 知ったこっちゃねぇ‼


 一人やり場の無い激情に悶えるアキトだったが、「図書室ではお静かにぃいいいっ!」とアキト以上にパトスを迸らせた司書さんから放たれた分厚いB4サイズ百科事典を後頭部に受けて、綺麗にうつ伏せ床ビタンの厳罰に処された。


 後頭部に椪柑並みのたんこぶをこさえながら涙目ジト目で司書さんを睨むも、当人は既に素知らぬ顔で書架の整理を行っていた。この世界、製紙技術は普及しているが紙はそれなりに貴重品だ。全力で「本は大切にぃいいいっ!」と言い寄りたいが、先に本を蔑ろにしたのはアキトなのでスゴスゴと引き下がるしかなかった。


 余談だが、司書さんが投げたのは本ではなく本の形をしたモーニングスターらしき鈍器であると後日判明する。異世界の司書さんは逞しい。


 若干ふらつきながら席に戻ったアキトは頭に昇った血を冷やすと、今度は努めて冷静に獲得した情報を反芻し始めた。歴史書(おそらく貴族の子弟向け)に書かれた自分の前世があんまりな扱いを受けている事は一旦棚上げするとして、無視する事もコメディな対応をする事も許されない事案を二つ脳内議題に提出する。


 まず一つが、レイアが邪神として魔人族を率いているという情報。幾つかの書物を漁った結果、人間族はアーリアを、魔人族はレイアを信仰の対象としている事が判明した。確かにレイアはアーリアと敵対していたので辻褄は合うが、何故に魔人族に崇め奉られる羽目に陥っているのだろう、あの駄天使は?


 取り敢えず、彼女は魔人族と一緒に居るという解釈で良いのだろうか、それとも現在のアーリアのようにどこかも知れない天界なる地に引き籠ってただの偶像として信仰されているのか、詳しい事は手元の資料では推測すらできなかった。何せ、物色した書物全て似たような内容しか記されていないのだ。魔人族が如何に悪しき存在か、邪神レイアがどれ程悪辣な存在かと、言い方が違うだけで著者が異なっても内容は全て重複している始末。もっと多種多様な価値観や考察を心掛けて資料を収集しろとこの世界の図書館法に直訴したいアキトだった。これでは碌な情報が得られない。


 まぁ、仕方無いと割り切って、何より無視できないのが二つ目……黒竜が滅んだのと魔人が生まれたのが二〇〇年前とされている事だ。これを知った時のアキトは軽く現実逃避する羽目になった。


 ギャレリア帝国の在る大陸では”大陸歴”と言う暦が使われ、調べた所【スフィア】は現在”大陸歴五〇八年”との事。そして……アキトが前世で死んだのが確か、”大陸歴三〇〇年”ぐらいだったと記憶している。調べた文献と照らし合わせて……間違い無い事は確定している。


 色々と思う所があり過ぎるくらいに思い過ぎた。何せアキトにとっては体感で一度死んでから十七年しか経ってないのだ。お陰でギャレリア帝国なり魔人族なりと聞き覚えの無いワードが増えた理由に合点はいったが。要はアキトが黒竜として死んでから二〇〇年の間に帝国が建国され、魔人族が出現した訳だ。


 そして案の定、人間族と魔人族とで戦争が勃発。二〇〇年の間に幾つかの大きな戦を繰り返し、今生の世で戦争が激化する兆候が見られると過去に倣ってアーリアに救いを求めたらしい。どこぞに居るだろうアーリア――本物かどうかは不明――は教会に神託を授け、それを真に受けた教会が大量の貢ぎ物を用意してアキト達を迎え入れたのが今回の顛末となっている。


 因みに、教会床に施された魔法陣は【スフィア】のどこかに召喚される事だけが確定していたアキト達をあの場所に呼び寄せる為のもので、異世界を渡る効力は無いとの事。帝国の第一皇子様が居たのは貢ぎ物を用意するのに助力――所謂スポンサーになって貰ったからだ。


 なお皇子のフルネームは”ガーランド・レックス・ギャレリア”だそうだ。あの後、覚えろと言わんばかりに仰々しく名乗っていたが、全く興味が無いアキトは既にうろ覚えだった。


 ――ガドっつったっけ? あの皇子……。


 名前の最初と最後しか合っていない。既に忘れかけ……ミドルネームに至っては完全に忘れたアキトだった。


 それはどうでも良いとして、疑問が一つでも解消されるのは良い事だ。例えその結果、新たな疑問と懸念が増えるとしても良いったら良い。


 新たな疑問としては、アキトの体感時間と二〇〇年のズレの理由が挙げられる。考えられるのはアキトが霊体となってから転生するまでに二〇〇年を要したか、その場合、【スフィア】から【地球】へ渡るのに時間が掛かったのか、それとも【地球】に渡ってから転生までに時間が掛かったのか。もう一つの可能性として、【スフィア】と【地球】では時間の流れが違うのか。


 場合によっては【地球】に帰れたとしてもリアル浦島太郎になるのではと懊悩するアキト。その所為で背後から近付く気配を見過ごしてしまった。


「……何気持ち悪く悶えてるの? そして何があったら図書室で頭にソフトボールみたいなたんこぶ作る事態が起こるの?」


 賢司だった。両手にドッサリと大量の資料を抱えている所を見ると、アキトと同じく調べ物をしに来たのだろう。痴態を目撃されて心の冷や汗を噴き出しながら、アキトは一言弁明した。


「……やるせない感情が迸った結果だ」

「うん、異世界転移レベルで意味が分からないから」


 バッサリ斬られた。例えが凄い分かり易いお陰でダメージはクリティカルだ。そして言葉のキャッチボールをすぐに切り上げて、隣の席でとっとと作業に没頭してしまう賢司の淡白さにアキトのグラスハートは砕けそうだった。キズモノにされた心を抱えて、スゴスゴ退散の意を固めるアキトは用済みとなった書物を片そうとするも続けて起こった事態に硬直する。


『そのまま調べる振りしてて』


 鳩が豆鉄砲を食った心境に共感しながらアキトは瞬時に状況を察すると、声の主に視線すら向けずにそのまま既に読みふけった資料に再び目を通し始めた。無論振りである。そして誰にも聞こえる筈の無い内緒話が始まった。


『取り敢えず、いつの間に”念話”が使えるようになったのか教えてくれ』

『全く動じずに対応してくれるとは流石だね。それなら、まず君が”念話”に対応できる理由を教えてくれる』


 双方、顔も合わせず読書に没頭する演技を続けながら無表情で交わす”念話”での会話……謀略の香りが香ばしい。因みに”念話”とは異世界版携帯電話と解釈すれば分かり易い。魔力を用いた会話方法で、互いに魔力の波長――個人で異なる魔力の個性を示す波――を共鳴させる事で、練度によっては離れた場所とでも当人同士の内緒話が可能となる。


 アキトが懸念した通り、アキト以外の面子も【スフィア】に来た影響で魔力に目覚めていた。その後、理由は多々あれど各々訓練に励むのが近頃の日課となっている。断っておくが、アキトも賢司もサボってはいない、言わば合間の息抜き兼必要な情報収集である。


 閑話休題。


 言うまでも無く、会話を成立させるには双方が”念話”を習得している事が前提であり、アキトだけでなく賢司も相手が習得済みな事実に驚いていた。ただし、賢司の方はアキトなら多分と言った感じで半ば確信があったというのが本音だが。


『調べて覚えた……それだけだ』

『簡単に言うよね、騎士団の人らが聞いたら卒倒しそう。……今更だけど、君って何者? 人間?』

『その言葉そっくりそのまま返してやるよ、お前こそホントに高校生か?』


 さり気に核心を抉る問い掛けに、まさか前世は竜ですとは言えないアキトは賢司の非凡さを返す刃で斬り返した。賢司のそれは流石に揶揄ではあるが、とっくの昔からアキトを平凡な輩とは見ておらず、その相手から非常識扱いされて心中で苦笑いを浮かべた。


『そんな事より、とっとと本題に入れ。雑談したくてこんな手の込んだ内緒話吹っ掛けた訳じゃねぇだろ?』

『話が早くて助かる。それなら単刀直入に……竜宮、君の意見が聞きたい。話題は二つ……帝国を出るならいつが良い? そして帝国を出たらどこに向かう?』


 手の込んだ内緒話でない限り、とても大っぴらにできない話題が飛び出て来た。


 帝国を”出る”か”出ない”かを飛ばして出るなら”いつ”と言う質問に対してアキトは暫し沈黙する。質問内容に面食らってはいない。アキトは賢司が自分と同じ結論に至った事に改めて感心しただけだ。賢司の方もアキトならここまで考えていると信じているので沈黙の理由を誤解する事は無い。それ所か、今考えている内容も自身と同じだと確信していた。


『いつになるか……いや、いつにするかは決めかねてる。皆の訓練状況によりけりだな』

『あぁ、やっぱりそうだよね。でも帝国騎士団の訓練内容って効率悪くない?』

『そこに気付くとは流石だな。独力で”念話”を習得するだけはある』

『その言葉、そっくりそのまま返してあげるよ。それで、帝国を出てからどこに向かうかだけど――』

『魔人国だ』

『……だよねぇ』


 いきなり飛び出た人間族の敵本拠地へ直行発言。誤解が無いよう補足するなら、アキトも賢司も魔人族を打倒する為に本丸へ直接カチコミを――などとトチ狂っている訳ではない。二人共【スフィア】の人間族の為に命を懸けるような殊勝な想いは秘めていないし、英雄願望も抱いていない。


 ここではっきりさせたい転移組の悲願――それは【地球】への帰還である。


 元よりこうやって情報収集に腐心しているのも帰還方法を探す為。世界情勢やこの世界の常識を知るという目的もあるにはあるが、それとて帰還する為に必要だから調べているだけで、この世界の行く末……敷いては人間族の未来など知った事ではないのが本音だった。


 それらを踏まえて、では何故アキトも賢司も魔人国を目指すのか? その理由は【スフィア】の現状を語れば自ずと見えてくる。


 この世界――【スフィア】は極めて広大な大陸の周囲に大小様々な島々が点在する世界として成り立っている。当然、人の主な生存圏は大陸であり、その北部を魔人国、西部から中央部をギャレリア帝国が占めている。東部と南部には帝国以外の国が幾つか存在するも、大半が半ば帝国の属国扱いである。


 その理由は帝国が魔人国との戦争に於ける最前線を担っている事と、それを大義名分とした”アーリア同盟”を人間族の国家同士で結んでいるからだ。その結果、帝国には各国から兵力、物資、資金等々が次々と送られており、それによる他の国々の疲弊といった弊害はこの際無視するとして、要はギャレリア帝国には人間族の全てが集約されていると言っても過言ではないのだ。


 それを理解した上で思い出す、ガーランド皇子から言われた『帰せる訳が無かろう』発言。”帰したくない”ではなく”帰せない”だ。しかしこれに特大の疑問符を掲げた者が居た……賢司である。


 異世界から人を呼び寄せる事はできても帰す事はできない。賢司に言わせれば、これでは辻褄が合わないのだ。女神の御業だか何だが知らないが、異世界を渡る技術が一方通行などお粗末過ぎると言うもの。呼ぶ事ができるなら帰す事もできる筈なのだ。


 現に教会によって施された魔法は同じ世界の中でなら空間を越える事を可能とした。異世界は兎も角、空間を転移する魔法はしかと存在する。ならば【スフィア】から【地球】へ渡る方法も存在する筈だと賢司は結論付けた。


 となると、ガーランドの発言の意図は”知らない”か、”秘匿している”かのどちらかであると考えられるが、どちらにしても帝国に居る限り帰還の術を得る事はできないと考えるべき。


 アレハンドロが『御役目を果たせばアーリア様より帰還の許しが出るでしょう』と語っていたが、そんな曖昧な可能性に縋る気は無い。重ねて言うなら、帝国で無理なら他の人間族の国でも期待は持てないという事で、それならいっそ魔人族を頼ろうと賢司は魔人国行きを決意したのだった。


 ただし、可能性を求める賢司と違い、アキトに至っては明確な目的があって魔人国を目指す訳だが、それをこの場で話題にしなかった。目的とそれに至る経緯が違えど、目指す場所が同じなら問題は無い。


 やり取りは非常に円滑に進んだ。反対意見など一切無く、それだけ二人が同様のビジョンを思い描いている証拠だった。それについてアキトは今更な雰囲気だったが、賢司はどこか楽しんでいる様子だ。


『……何をニヤついてる?』

『あれ? 顔は見えてないよね? ってか無表情に努めてるつもりなんだけど』

『心の声が弾んでる。お前、何か楽しんでる?』


 アキトの指摘に『あぁ~~』とどこか納得した風に”念話”を紡ぐ賢司。相変わらず現実では無表情で本を黙々と読み漁る体で居るので、とても器用な精神構造だと言える。それが分かる人物は一人しか居らず、且つその人物は言ったりしないのは確定している。


『ごめんごめん、不謹慎な事を考えてるんじゃなくて……アキトとの会話は楽だなぁって改めて実感してたら、ついね』

『楽……ってか?』

『そう、楽。僕が言いたい事、言おうとしている事、考える事も考えなきゃいけない事もアキトはいつも先に言ったり考えたりして、僕を引っ張ってくれる感じがするんだよ』

『……それは持ち上げ過ぎだろ? お前、俺に何か奢らせようとしてないか?』

『君がこの程度で奢ってくれたら詐欺を疑うね。まぁ兎も角、自惚れじゃないけど僕ってば他人より頭の回転が良過ぎてね、どうしても言葉や思考が先走って会話が噛み合わなくなるんだ』


 思考が速過ぎる、深過ぎる所為で本来なら言葉を重ねて組み立てる会話を頭の中で片付けてしまう。その為に本人は普通に話しているつもりでも周囲は会話が飛んだと錯覚してしまうのだと賢司は言う。


 他人との会話はいつも気遣ってテンポを抑えているらしく、今はそれ程ではないが幼少期から極めて聡明だった故に一時期は本気で苦労したとアキトに語った。


『あっ、華蓮と守は別だよ。あの二人は僕のこういう所よく理解してくれてるから。……それだけで随分楽だし有り難いんだけど、そんな二人でも僕に追い付ける訳じゃないから、正直アキトが初めてなんだよね、こんなに気を遣わずに話せるのは』

『純粋に褒めて貰えて嬉しいが、それでも俺が城島より先に考えられるってのはやっぱり言い過ぎじゃないか? 寧ろ……俺はお前の方が物事を深く考察できると思ってるぞ』

『それこそ買い被りだね。……少なくとも、僕にはあの時アキト程上手く場を収める事はできなかった』


 あの時とは言うまでも無く、召喚直後の御使い騒動の事だ。確かに想定内の結果に纏められたとアキトは自負しているが、上手かったかと言われれば激しく否と言いたい。色々と不手際も目立ったので、現在でも反省すべしと己を戒めているくらいなのだ。


 しかし賢司の反省度合いはアキトを軽く上回っていた。自分がやった事と言えば華蓮と剛田を諌めた程度、肝心な時に殆ど何も言えずにアキトに全て任せてしまったのだから。自分が役立たずだった時に皆を窮地から救ったアキトに賢司は深く感謝していた。


『少なくとも僕は君を頼れる相手と思ってるよ。だからこうやってブッコんだ内緒話もできるしね』

『そりゃ光栄だね。……呼び方が変わったのもその所為か?』

『……やっとツッコんでくれた、何も言わないからどうしようかと思ったよ。これに関しては今更だけど、そろそろお互い名前呼びで良いんじゃないと思ってさ、僕ら”共犯者”だし』


 日本で”剛田退学事件”を引き起こした事も、今こうして”帝国裏切り計画”を話し合っている事も含めて、確かに”共犯者”とは言い得て妙である。流石のアキトも思わず”念話”で吹き出してしまった。


『……ぷっ、くくく、”共犯者”か、良いなそれ。まぁ賢司って呼んだ方が呼び易いな。そんで賢司、この話は藤林と立石にはしたか?』

『まだ。アキトと足並み揃えたかったからね。そっちも神子柴さん達にはまだ話してないだろ』

『まぁな。いずれ折を見て全員に話すつもりだったけど、各々予め話を通しておいた方が説得も楽そうだな』

『華蓮を僕にぶん投げる気満々だね』

『賢司から話した方が摩擦は少ないだろ。あいつ、こういうの五月蠅そうだし』

『うん、華蓮ってば直情的だけど慎重でもあるから、リスクの高い事は好まないんだよねぇ』


 因みに二人共、”全員”に剛田を含めてはいない。置いて行く気全開である。そこを確認するまでも無く察し合っている辺り、流石は”共犯者”と言うべきか。


 そうして今後の展望を少し話し合って、アキトは今度こそ本を片付けて退室の準備を始めた。賢司はもう暫く調べ物を続ける予定なのでそのままだ。端から見れば殆ど話さずにいた二人だが、実際は白昼堂々と談合じみたやり取りを行ってホクホクであった。そしていざ退室のタイミングで賢司から不意打ち”念話”が轟いた。


『そう言えばアキト、守も名前呼びで良いと思うよ。あいつってばブレスオブブレイズ(自分と同じ聖書)拝める相手を見つけて喜んでたから』

「誰が怪しげサブタイ付きラノベ信者だ! あいつの聖書なんざ一瞬たりとも拝んだ試しねぇよ‼」


 思い出される――思い出したくもない、召喚当初にアキトの魂に消える事の無い傷を負わせた黒歴史。問答無用で古傷認定した箇所を不意打ちで抉られた所為か、思わず肉声でアキトは吼える。そして飛来する本型モーニングスターがアキトを死角から撃ち抜いた。「図書室ではお静かにぃいいいっ!」の咆哮と共に。


 衝撃で図書室の外に弾き出されたアキトに、廊下を通る人々は一切触れようとはしない。それに触れてはいけない、共倒れになると言わんばかりに。せめてもの慰めに室内から”念話”が届く。


『君と居ると退屈しないって言うのは褒め言葉になるかな?』

『……今言われたらただの皮肉だ馬鹿野郎』


 残念ながら慰められないアキトであった。

 次回の投稿は二週間後を予定しています。


 少々時間を頂きたく、申し訳ありません。

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