明かされる霊山の秘密
「れいいき?」
「そう、”霊域”だ」
先導するレイランとガウランについて行きながら、アキトが簡潔にダイダラ霊山がどういった場所であるかを守にレクチャーする。
守が意識を失っている間、丸一日も時間を無駄にしていた訳ではない。遠目から眺めた段階で大凡の仮説を立てており、それを立証する為にフィールドワークに勤しんでいたのだ。
結論から言うと、仮設の九割程度は正しかったと証明された。そうして解を導き出す過程で”霊域”というキーワードが浮上したのだ。
すぐさまアキトから補足説明が入る。
「分かり易く言うなら、源素濃度が濃い場所、もしくはそういった条件で魔獣同士での生態系が形成された地域を指す言葉だよ」
「源素濃度が濃い場所って……それって源素が淀んでるって事じゃん? 魔獣が生まれる場所だよな?」
対する守の答えは五十点といった所だ。確かに異常に源素が濃いと生物の死滅且つ魔獣の発生を招いてしまうが、例え源素濃度が濃くても濃度の違いによってもたらされる事象は大きく異なる。
「濃度が濃いっつっても、あくまで生物の生存に適した範囲での話だ。そういう場所では寧ろ魔獣を含めた生物全般にとって住み易い場所になるんだよ」
「人間で言う所の高濃度酸素みたいなもんか? ってか魔獣って狂暴な奴ばっかだけど、そんなんに住み易いなんて概念があんのか?」
その例えは的を得ている。【スフィア】では全ての生物が生きる為に源素を必要としている。人や獣は食事という形で栄養と共に源素を補充しているし、それ以外に大気中からも呼吸によって源素を補充している。
そしてより高濃度で質の良い源素は生命活動を良好にしてくれる働きがあるのだ。初めてダイダラ霊山を目にした時に、賢司が山頂まで木々が雄々しく生育している事について疑問を感じていたが、それも全て源素の影響である。
その影響は魔獣であっても例外ではない。
「魔獣は体内に源素結晶を保有する所為で常に魔力を練り続けていて、それによって常時飢餓状態にあるから絶えず獲物を求め続けてる訳だけど、それは突き詰めれば源素を求めてるんだ」
「ふんふん……それで?」
要は大気中から高濃度の源素さえ補給できれば魔獣とてそこまで飢える事は無く、それが可能な場所に辿り着いた魔獣はそこを定住地とする傾向にある。
それらが積み重なり独自の生態系を形成した地域を”霊域”と呼ぶのだ。
以前アキト達が訪れた”イズフ樹海”も霊域の一つであり、そういった場所が大陸中に存在する事で人と魔獣はある程度の住み分けがされているのだった。
「ハンターの仕事の殆どは霊域内の生存競争に敗れて追い出された個体の討伐。それと魔獣が霊域からあぶれないよう事前に間引く事。だからイズフ樹海でのタウロ砦みたいに監視する拠点が必須になる」
今回の件に於ける調査団の役目もその事前調査が主となっている。
ここは本当に霊域なのか?
霊域だとしたらどの程度の魔獣種が生息しているか?
今後の為に間引く必要はあるか?
監視の為に必要な拠点の規模はどれ程か?
それらを知る為の調査は尽くレイランによって妨害されてきた訳だが、ここに来てようやくアキトによって調査が成された。結果報告は随時”念話”によってキャンプに居る賢司に伝えられており、賢司経由で伝えられたレオルド達にとっては非常に有益な報告となっていた。
しかし、アキトにとっては違う。そんな事を知りたくて一日を潰した訳ではない。何よりアキトはここがただの”霊域”だと思っていない上に、本命で調べていたのは別件だ。そして守もそれを察していた。
「そんで調査の結果、ここが霊域である事がほぼ確定で、凄く有意義な調査ができて良かったね……なんて言われたくてアキッちは頑張った訳じゃないよな」
「中々察しが良いじゃねぇか」
「そんな他人の都合で一所懸命なお仕事なんてアキッちがする訳ねぇもん」
それはアキトの人となりを知っての判断と言うより、アキトを賢司に見立てた推察だった。きっと賢司ならそうするだろうと守には分かるし、アキトなら賢司と同じ考えに至るだろうとも分かる。それぐらいには守もアキトの人となりが分かるようになっていた。
重ねて言うなら、そもそもアキト達はレイアの分霊捜索の為にダイダラ霊山を訪れたのだ。調査団に参加したのはその為の口実であり、自分達の都合以上に他人の都合を優先するなどアキトにとっては天地がひっくり返るレベルで有り得ない選択である。ついでに言うなら守にとってもだ。
アキトはあくまで自分の目的に沿った調査を行っただけで、賢司からレオルド達に伝えられた情報の殆どは、片手間で調べた内容にアキトの持つ予備知識を肉付けしたものだったりする。
「一応聞くけど、それは俗に言う捏造というや~つでは?」
「失敬な。俺の経験則から割り出された純然たる真実だよ」
これは決して誇張ではなく、アキトの前世九〇〇年分の知恵袋に蓄えられた知識量は伊達ではない。普通のスフィア人が百の力を尽くして導く答えなど、アキトにしてみれば二から三の労力さえあれば容易に叩き出す事が可能なのだから。
かと言って決して手を抜いてはいない。守の救命という緊急事態だったとは言えトラブルの渦中に賢司と美矢を残して来てしまった事をアキトは悔いていた。
きっと重要参考人として複雑な立場に立たされていると思われ、状況によっては本部で待機中の愛奈と華蓮にも影響が出るだろう。なので残して来た友人達の立場を保証する為だけに調査団に有益な情報を真面目に収集したのだ。
確かに諸々を一目見た後に、決め付けと言っても差し支えないような真似を多々やっちゃったりしているが、それで導かれた答えはしっかりと調べた解とほぼ遜色無いレベルで合致していたりするので良し。
「まぁ、キャンプに残した賢司達の立場も考えて色々盛った部分もあるっちゃあるがな」
「うぉい!? やっぱやっちゃってんじゃん! 後で問題になったりしねぇよな!?」
「ならねぇし、万が一なったとして問題になる前にトンズラしちまえば良い」
余りの言い草に思わずツッコむ守だったが、厄介事になる前にトンズラするという考えには大いに賛同した。そんな和気あいあいな異世界人の会話に耳を傾けながら、先頭を行くレイランが相棒のガウランに懸念を漏らす。
「ねぇガウラン、ホントにあそこに連れて行って大丈夫?」
『今更だ。そもそも先に山に入れようとしたのはレイランだろ』
「レイランは霊泉に連れて行こうとしただけで、ここまでしようとしてないし」
応えるガウランの態度はやや冷ややかだった。それもそうだろう、元を辿ればレイランが負傷した守をダイダラ霊山に連れて行こうとした事が原因であり、その所為でアキトのような規格外を霊山に招く事になったのだから。
更にさっきまで、実はアキトに馬車馬ならぬ馬車犬の如く扱き使われていたガウラン。アキトに屈服したとは言えその散々な扱いに自尊心が大いに傷ついたロンリーウルフは、八つ当たりも含めた険のある言葉でレイランを責めた。
しかしレイランとしてもアキトの存在は想定外中の想定外であり、何より相手が守であっても霊山の中枢まで招くつもりなど無かったので、ガウランの言い分は理不尽だと反論する。対してガウランはそれでもと言い返した。
『霊泉の存在を晒した時点で同じ事。奴――アキトはその時点でここがどういう場所か察していた。……それに、あれが誰よりアキトに会いたがってる』
「……そう、彼女が……」
狼コンビのヒソヒソ話は当然アキトには丸聞こえだったが、アキトがそれについて追及する事は無かった。代わりではないが守の追及にアキトが答える。
「それで、結局ここはどういう場所なんだよ? 何やかんや言って霊域とは違うんだろ?」
「俺の中で九割方答えは出てるけど、答え合わせも兼ねて相応しい相手に説明して貰おうぜ。……そろそろ着くみたいだし」
その読みは正しく、一行が山の八合目辺り……傾斜の無い平らに開けた空間に出るとレイラン達は足を止めた。
てっきり頂上まで行くものだと考えていた守は少々意外そうにしながらも、それなりに登山で疲労した体を休めようと腰を下ろそうとして……硬直した。
「っ……………………!?」
守を襲ったのは尋常でないプレッシャーだった。体の動きだけでなく、呼吸……それ所か鼓動すら麻痺しかねない程の圧を放つ存在がここに居る。
そのイズフ樹海で相対した天使に勝るとも劣らない気配に、堪らず意識を手放しそうになった守だったが、直前にアキトによって事無きを得た。
アキトが守の前に立ち塞がり、元凶となる存在と守の間で防波堤のように威圧を拮抗させる。硬直が解けた守はそのまま地面に四つん這いに崩れ落ちた。
「……がっは、はぁあああああっ! ……ごほっ、た……助かったぜアキッ――」
止まりかけた呼吸を何とか再開した守はアキトに礼を言おうと視線を持ち上げるも……映った光景に絶句する。
守の前に立つアキトだったが、その表情は今まで見せた事が無い程に険しかった。それだけでなく顔は冷や汗に塗れている。有り得ない状況に守は言葉を失った。
守だけでなく、仲間達にとってこの【スフィア】に来てからのアキトは絶対的強者だった。守達にとって絶望を感じさせる敵だった天使にすら余裕の態度を崩さなかったアキトが明らかに緊張を強いられている。
信じ難い状況に動揺を隠せない守。ただアキトはこの状況でも努めて冷静だった。
「驚いたな。想像通りではあるが、ちょっと程度を見誤ってたよ」
声色はいつも通りのアキトだった。どうやら肉体的に防衛本能が働いていても、精神面では全く揺らいでいないようだ。それを見極めたのか、元凶となる相手にも変化があった。
『ふむ、それはこちらも同様だな。相応の者が訪ねて来たと思っていたが、まさか珍客中の珍客だとは』
それは”念話”であったが守にも聞こえた。竜人化したアキトと同様、周囲に伝搬する規模のものだ。それだけでその存在が如何に強大であるかが分かる。
改めて守は意識を正面に向けた。そこにはここら一帯を覆う程の大樹が在った。不思議と陽光を遮らない大樹の根元に緑々しく茂った草原に隠れた……否、まるで一体化したような存在から目が離せない。
最初から視界に納まってはいたのだ。しかし余りに自然と一体化した、正に霊山そのものと言っても過言でない相手を個として認識できていなかった。
改めて目を凝らしてやっと認識できたそれは……巨大な狼だった。
ガウランも狼として規格外な巨躯を誇るがそんなものじゃない。以前イズフ樹海で相対したディオガレックスより更に一回り大きい。体毛はガウラン同様眩い翡翠色だったが、その煌めきは比ではなく神々しさを嫌でも感じさせた。
歩を進め間近に迫る圧倒的な存在に守は微動だにできない。だがアキトは違った。自ら歩を進め距離を詰めると殆ど零距離で巨狼と向かい合う。頭部だけでアキトの身の丈に迫る巨狼が鼻先をアキトに近付けた段階で周囲の緊張はピークに達した。
直後、守も、レイランもガウランも想像だにしなかった事態となる。
「……!? アキッち!?」
「うそ……!?」
『どうして!?』
目を疑った。何の冗談だと現実から逃避しそうになった。何故ならアキトが頭を下げて礼の姿勢を示していたのだから。それは巨狼の側も同様で、伏せのような体勢で頭部を地面すれすれまで下げていた。
守にとって信じ難いレベルを天元突破するような光景だった……あのアキトが他者に礼を尽くすなど。それは巨狼を見るレイラン達も同じようで、有り得ないと言いたそうで言えずに口があんぐりと塞がっていない。それだけ守にとってのアキトと、レイラン達にとっての巨狼は強大な存在なのだ。
外野が眼前の事象を受け止め切れずにいると、事態は進展を見せると共に事の真相を明らかにした。
「久しいな、マオラン。と言っても俺の体感では二十年も経っていないんだがな」
『それは何故と問いたい所だが、今は良しとしよう。我にとって二〇〇年など走馬灯のように過ぎる時間ではあるが、それでも感慨に浸る程には久しいものだ。会えて嬉しいよアカツキ』
アキトの前世の名を知る事実に守は合点がいった。巨狼――マオランと呼ばれる存在はアキトの知己なのだと。一方の狼コンビは未だ会話に追従できていないが、話に乗るより早くアキトが先に進めてしまう。
「……と、悪いな置いてけぼりにして。マオラン、仲間にお前を紹介したいんだが、良いか?」
『構わぬよ。しかしお主が人の子と共に居るとは意外だな。……いや、少し纏う魔力が異なると言うか……彼は人間族ではないのか?』
「え……いや。あの……」
いきなり矢面に立たされた守が狼狽した。ある程度気心知れたアキトなら兎も角、幾らアキトの知己とはいえ明らかに高位の者に意識を向けられて平然としていられる程に守は図々しくはない。
流石のミスターデリカシーゼロもうっかり失言をしてしまう事を恐れてテンパっていると、アキトがすかさずフォロー兼予防線を張り巡らした。
「厳密には人間族とは違う。そこは後で細かく語るとして……守、最初に言っておくが彼女は魔獣じゃないからな。そんな格に低い存在とは比べもんにならんくらい高尚な相手だ」
「え……? じゃあ、どんなお方なん?」
何も言われなければ強力な魔獣なのでは内心思っていた守は冷や汗で盛大に脇を濡らす。思わず言ってしまっていたら自分はどうなっただろうという怖い想像を彼方にやり、それでも動揺を隠せず半端に訛った口調で質問すると、アキトは簡潔に答える。
「彼女……マオランは”霊獣”だ。ここ”霊脈”の守護者だな」
成程……全く分からなかった。
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パチパチと火が爆ぜる音をBGMにして、一行は焚火を囲んだ座談会兼食事会を催していた。
水場の無い草原のど真ん中で火を焚くなど何事かと言われそうだが、守の結界魔法で即席の焚火台ごと周囲と断絶してあるので燃え移る心配は無い。何より山の主に許しを得ているので問題無い。
そこにガウランが――アキトに言われて半強制的に――狩って来たでかい鳥を捌いて焼き鳥にしてみたら大いに好評だった。特にレイランとガウランの狼コンビは話そっちのけに無心でがっついている。
「……んで、その”霊脈”ってのは要は霊域の上位互換だと考えれば良い訳?」
「概ねそれで良いな。決定的な違いはただ源素が濃い場所なんじゃなくて、”源素そのものを生み出す場所”って事だ」
焼き鳥と一緒にそれまでの説明を咀嚼した守の問いを、アキトは若干の補足を継ぎ足して肯定した。
源素濃度が高く、独自の生態系を持つ点では霊域も霊脈も同一ではあるが、霊脈は源素濃度の高さから生態系の独自性の全てで霊域を上回り、何より源素を生み出せる点が大きく異なる。
魔力感知で源素の流れが特殊な事に霊山を訪れた当初から気付いていたアキトは、実際に調査に当たってここが霊域でなく霊脈であると確信した。
それなら絶対に土地の主である”霊獣”が居る筈だと考えたアキトは真面目な挨拶と目的の完遂の為にここまで赴いたという訳だ。
「間違い無く霊脈には守護者として霊獣がセットになってるからな。彼らの機嫌を損ねると流石の俺でも厄介な目に遭うからさ、守が回復次第早々に挨拶しなきゃって思ってたんだ。それと、ここをよく知る主様なら俺達の知りたい事も知ってると思ったんでね。しかしそれがマオランだとは意外だったな、お前ってば他所の霊脈の守護者だったんじゃ?」
『霊脈とはうつろうもの。守護する土地が役目を終えれば我らもまたうつろう。この山は守護者を持たぬ土地だった故に居座らせて貰ったのだ。お主が死んだと聞かされた後の話だがね』
それが霊獣と呼ばれる存在だった。彼、彼女らがいつからこの世界に存在していたかはアキトですら知らず、時に放浪し、時にその土地を守りつつ悠久の時を生きる存在。
眼前の霊獣マオランも以前は別の霊脈を守護していたが、アキトが前世で命を終えた後にその土地を離れ、紆余曲折あってこの地に流れ着いたらしい。
なので、先程はアキト=アカツキだと気付くのが遅れたらしく、
『故に最初はお主と思わず一体どんな愚者が訪ねて来たかと威圧してしまったよ』
「お陰様で滅茶苦茶テンパったぞ。思わず反撃しそうになったわ。お前だと分かってすぐ落ち着いたけども」
『ははは、許せ。我もすぐにお主と気付いて牙を納めたであろう。それに威圧し返しておいてよく言う。命の危機を感じたのはこちらも同じだ』
なんて事を笑いながら話し合う人外二匹なのだった。
霊獣の力はかつてこの世界で最強だった竜族に比肩する。実はボタンが僅かでも掛け違っていたらとんでもない事態に発展していたかもしれないと分かり、守が焼き鳥を飲み込み損なってむせた。
そして懐かしく旧友と親交を温めつつ、それより優先すべきとアキトが話題を転換したタイミングで空気が変わった。
「さて、今までの事を追々詳しく聞きたい所だが、それよりもマオランに聞きたい事があるんだ」
『皆まで言わなくとも良い。聞きたい事は分かっている。……堕天使レイアの分霊を探しているのだな?』
期待通りの答えが返ってきたが、余りに唐突だった為にアキトは言葉に詰まる。何故こちらの目的を知っているのかと聞く前に、マオランが会話の口火を切る。
『アカツキよ、お主は我が事情を知っている理由と目的の答えを聞きたいだろうが、その為には追々ではなく今すぐにこれまでの事を話さなくてはならん。少々時間を貰うぞ』
「……あぁ。確かに全部聞かねぇと気持ちが落ち着かねぇだろうな。先走って聞くけど……レイアが絡んでんのか?」
『如何にも。我がこの地に居るのも偶然ではなく、あの堕天使の手引きによるものだ。おそらくお主がここを訪れ我と再会したのも、あの者の謀の内だろう』
そんな馬鹿なと言いたかったが、即座にそれをアキトは否定した。そもそも自分達はレイアに導かれてダイダラ霊山に赴いたのだ。マオランの言う通り、彼女もレイアに導かれてこの地に留まっているとしたら……この再会そのものに何かしらの意図があるのだ。それが何かは分からないが、
「それを知る為にも話を聞く必要があるな。時間は幾らでも掛けてくれて構わない。話してくれ、マオラン」
『心得た。……と、その前に……アカツキよ、その人の子は大丈夫なのか?』
いざキーイベントの開始と意気込む場面で、いきなり話の腰を折るマオランが示すのは守だった。
レイラン、ガウランと違い、一応はアキト達の話を聞いてはいたが、レイラン達に負けず劣らず焼き鳥に夢中だ。両手に串を持ってハグハグと頬張っている。
守は何事かとビクッとするが、アキトもマオランの意図を察し切れない。
「大丈夫って何が? いや、話は一緒に聞いて貰った方が都合が良いんだが……。あ~もしかして怪我の事か? もう完治してるっぽいけど」
『いや、怪我とは何だ? そんな事は我は知らんぞ。そうではなく、その肉を食べて平気かと聞いておるんだが』
続けてマオランは焼き鳥を示した。アキトも守も尚更何の事か分からない。
「いや普通に美味いぞ。まさか口に合わなかったか? 守お手製の焼き鳥。こいつ仲間内で一番料理が上手いんだぞ」
『いや普通に美味であったよ。こんなに美味い肉を食したのは永く生きて初めての経験だ』
「絶賛だなオイ。だったら何なんだよ? 言いたい事が分かんねぇよ」
『分からんか? これ魔獣の肉だぞ。人の子が食べたら死ぬだろ?』
衝撃的な指摘に時が止まった。守君……理解が追い付かずに、口に含んだ肉の咀嚼を中断して手に持った焼き鳥を落としてしまった。
「勿体無い! ハグハグハグハグハグ‼」
『勿体無い! ガウガウガウガウガウ‼』
それに群がるレイランとガウラン。その食事音だけが明瞭に耳を通り抜けていった。
読んでくださっている方、心よりありがとうございます。
次話は一周休んで再来週土曜日に投稿します。
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