剣山の国
新章四話目にして、ようやく新天地に到着。
展開もできる限り早くしたい。
ソルファレン王国。
ギャレリア帝国の東、大陸の中央やや東寄りに在り、周囲を山と森に囲まれた山岳国家だ。
言い換えれば魔獣の生息域に囲まれているとも言え、それ故に屈強な兵士を有する軍事国家でもあり、また魔獣を求めて大陸各地から腕利きのハンター達が集う事から”剣山の国”と呼ばれている。
領土だけで見れば帝国より遥かに小さな国ではあるが、その武力は大国と引けを取らない程に強大で、人間族が魔人族に対抗する為の”アーリア同盟”に参加しつつも、先のガーランド皇子の暴走の際にはその横暴さを非難し一切の援助を行わず、且つ帝国側の抗議には武力を以て抗った剛の国だ。
更に裏ではスカーレット姫と繋がっており、有事の時は皇女側に助力する密約を交わしていた国の一つでもある。そのお陰か、ガーランドを排しスカーレットが舵取りを担うようになった帝国との関係は急速に改善されつつあり、最初に訪れる国がここであった事は帝国の後ろ盾を得たアキト達にとっても僥倖であると言えた。
その国で最初に訪れた街が今アキト達の目の前にある”国境の街エクトラ”だった。街そのものがギャレリア帝国とソルファレン王国との関所になっており、両国の兵が常駐する堅牢な城塞都市でもあった。
入場待ちの列に並びながら城壁に近付くにつれて、その見事な外観に圧倒された一同が思わず溜息を漏らした。
「タウロ砦も凄かったけど……ここは輪を掛けてスゲェ~」
視線を上に向けながら感嘆の声を響かせ守が言う。その発言には全員が同意した。何せ城壁は街を囲むだけでなく周囲の山にまで達しているのだ。正にここが国の境目――国境線だと主張するように。
「国同士を区切る国境線みたいなもんだからな。いざという時はここが戦の最前線になったりするし」
アキトの言葉に先程とは違う意味で圧倒される面々。何せほんの少し運命が傾いていれば実際にそうなっていたのだから。ガーランドが突っ走り続けていれば、最悪スカーレットの手でギャレリアとソルファレンは武力衝突に至っていただろう。
色々と圧倒されながら進む事暫く、ようやく自分達に入場受付の順番が回ってきた所で全員が身分証明となる【ハンターカード】を提示した。
本来ならここで入場料を払わなければならないが、アキト達はタウロ砦にて上級ハンターの肩書を得ている為に無料で入場できる筈だ。
「…………」
筈なのだが、
「………………」
「……おい、何か不備でもあるのか? 何故にさっきからカードと俺らの顔を交互に見る?」
門番の様子が妙におかしい。【ハンターカード】を何度も確認しながらアキト達を怪しげに観察する様はどう見ても指名手配犯を疑う刑事のそれだった。
いい加減にアキトがイラつき、賢司が訝しみ、他は不安そうにする中、やっと門番が口を開く。
「……ついて来い。ハンターズギルドに案内する」
険しい表情でそれだけ言うと、門番は同僚に後事を託して城壁の内側へと進む。状況が理解できないアキト達は思わずその光景に呆けてしまった。
「何をしている!? 早く行け!」
直後に残った門番から一喝。その声量に愛奈、美矢と守が体を震わせ、華蓮は不快そうに門番を睨みつけて賢司から宥められ、アキトは完全に叱責を無視しつつマイペースに皆を先導して入場を果たした。
あまりの急かされように、折角帝都を出て以来の大都市に訪れたにも関わらず、街並みを眺める暇も無くハンターズギルドに向かう様は殆ど連行されるに等しい。
その扱いを皆が怪訝に感じるのは当然だった。
「何だろ? 上級ハンターは一番にギルドに出向く決まりでもあんのかな?」
「そんな規約は無い筈だけど……、今までの街だって普通に出入りできてたし、ギルドに寄った時だって何も言われなかったよ」
「となると……ここが国境の街なのが関係してるのかしら? 帝国を出て他国に入るのに必要な手続きだとか?」
守の疑問に賢司が答え、華蓮がならばと予想するも賢司はそれでも首を傾げるしかなかった。一方のアキトは凄まじく面倒そうな表情で先導する門番の後姿を眺めていた。
「アキやん、そないあのあんちゃんの態度が気に入らんかった? いやまぁウチも嫌とは思うたけど」
「腹立たしいのは否定しないが、そうじゃねぇよ。……何かすんげぇ嫌な予感がしてな」
「嫌な予感?」
アキトの様子を眼前の門番に対して義憤を覚えているのかと解釈した美矢が同意してみるも、当のアキトは別の懸念があると伺わせた。愛奈が追求しかけるも、タイミング悪くギルドに到着した為に説明は省かれる。
ハンターズギルド”エクトラ支部”は壮観だった。アキト達が今まで見た中で最も立派な建築だったのが帝都にあるアヴァロン支部で、豪華絢爛さではそれに劣るが如何にも無骨とした実質剛剣さでは遥かに勝る。正に武人の館と言えそうな佇まいだ。
しかしその印象は入口を潜った瞬間に下方修正する事となった。
先に述べたアヴァロン支部は外から見ただけで中までは覗いていない。なのでアキト達の基準となるのはタウロ砦支部であり、確かにあそこは騎士団の詰所のような規律を重んじる雰囲気は無かったが、騒がしくも一種の秩序が構築されていた。
例えるなら体育会系の人達が節度を守って馬鹿騒ぎしている感じだ。
今まで訪れた中堅所の街でも似たようなものだったが、ここエクトラ支部はそんなもんじゃない……只々荒く、野蛮な空気が充満していた。
騒ぐ声のみがBGMと化し、他の音が全く聞こえない……その所為で比喩ではなく耳が痛い。重ねて物が破砕する音……目を向ければどこぞの男二人が殴り合いの喧嘩で周囲を薙ぎ倒していた。それに巻き込まれた誰かと誰かが参戦し、ちょっとした乱闘に発展している。
極めつけは飲食スペースに居る全員が明るい時間から酒を呷る光景。今まで訪れたギルド支部でも昼間から酒を飲む者は居たがそれは休日を過ごす少数に止まっており、ここまでごった返した状況で全員が酒を飲む光景はお目に掛かった事が無かった。
日本で例えるなら……不良の溜まり場という表現が実にしっくりくる。そしてそれらを一切咎めないギルド職員……一体ここはどこの学級崩壊した教室だとツッコめそうだ。
街の外観を眺めていた時とは全く違う意味で圧倒された面々だったが、半ば精神世界に旅立っていた意識は先導した門番の怒声によって引き戻された。この喧騒の中で声を響かせられるとは大したものだとアキトは感心した。
見れば彼はカウンターの前で受付嬢らしき女性に何やら報告しているようで、乱雑に顎で来いと促された一行は内心は兎も角として素直に従った。
「遅いぞ全く……では、後を頼む」
「頼まれました」
受付嬢に後事を託して門番はギルドを後にする……去り際にアキト達へ終いとばかりに一睨みを置き土産として。華蓮がお返しとばかりに睨み返していた。そして、
「ふぅ~、……報告をうけましたが……それで、何か弁明はありますか?」
「ちょっと何言ってるか分かんねぇよ」
受付嬢からの先制攻撃……しかしアキトがそれを速攻で切り返した。あまりに自然な返球に受付嬢が軽く硬直する。このやり取りで意識が去り行く門番に向いていたメンバーも受付嬢に向き直った。状況に置いていかれて受付嬢の言葉の意味が理解できていないので、自然と静観するポジションに納まった。やや静止した空気を再起動させたのは賢司だ。
「あぁ~、連れが失礼。どうやら先程の門番の方と何やら話し合ってたようなのでそれが関係していると存じますが、そもそも我々は何故ここに連れられたのか説明されていませんので、良ければそこから説明して頂いても宜しいですか?」
努めて丁寧な対応を心掛ける模範的な日本人である賢司。それに対する受付嬢の態度はひたすら呆れたように面倒臭そうだ。
見ればウェーブしたブロンドの髪をツインテールにした二十歳前後の女性。やや細くキツめの眦で容姿は控え目に言って中の中と上の間だろうか。これで愛想が無くて受付など務まるのかという失言をどうにか飲み込む一同。約一名――KYの第一人者な守が思わず口にしかけたので華蓮が両手で口を塞いだ。
力加減が上手くいかず「ムガグゲっ」と割と冗談で済まない呻き声が聞こえたが無視して、受付嬢は殊更に気だるい態度で賢司に警告する。
「はぁ~、自分から認めれば温情ある処罰で済みますよ。正直に話した方が良いのでは?」
「……重ねて申し訳ありませんが、何を仰られているのか分かりかねます。何かを疑われているようですが、一体僕達は何の嫌疑を掛けられているのですか? それを教えて貰わないと弁明もできません」
表面上は上手く穏やかに徹している賢司だが、仲間から見れば彼の表情が若干固いのがよく分かった。これはかなりイライラしている証拠だ。だが受付嬢にそれが分かる筈も無く、彼女の態度は益々酷くなっていった。
「ふんっ……仕方ないですね。あなた達には【ハンターカード】偽造の疑いが掛けられているのですよ。分かったらとっとと罪を認めて下さい。今ならギルドに罰金を支払うだけで事を済ましても構いませんから」
吐き捨てるように放たれた言葉に転移組の面々は憤る前に呆けてしまった。何だその身の覚えの無い罪状はと訴えたい。賢司に至っては正面から言われた所為か何とも残念な眼差しを受付嬢に向けていた。アキトは詳細は兎も角、どうせ碌でもないと察していたので今更だと言うように溜息を吐いている。
そんなアキト達の態度が気に食わなかったのか、受付嬢の表情は少々険しさを増していき、追及の矛先は賢司へと向けられた。
「あのね、何ですその態度は? 心証を悪くすれば罰が重くなると言わなければ分かりませんか? これだから若い人達は――」
「お怒りはごもっともですが、身に覚えの無い罪を認める訳にはいきませんよ。まず、何故に僕達がそのような嫌疑を掛けられたのか、それについて教えてくれないと」
しかし当の賢司は柳に風と受付嬢の舌激を受け流して事を進め出した。受付嬢は言葉を切られて一瞬不服そうにするも、やれやれと言った具合に……まるで子どものお粗末な嘘を咎めるように語り出す。
「自分達の行いが稚拙だって自覚が無いんですか? 何ですこれ……ハンターランク5? その幼さで上級ハンターですって? 馬鹿も休み休みに言いなさい! 嘘を吐くにしても限度があるでしょう!」
遂に怒鳴り出す受付嬢。彼女の言うハンターランクとは言ってしまえばハンターズギルドが定めるハンターの格付けである。ランクは1~7の七段階で1~4が下級ハンター、5以上が上級ハンターとなる。
最初はいっそランクを7にしようとタウロ砦支部のギルドマスターから打診があったが、それは流石にやり過ぎだと5に抑えた経緯がある。しかし眼前の女性はアキト達が上級の肩書を持っている事自体がお気に召さないらしい。
確かに正式な手順を踏んで発行された代物ではないので偽造と言えば偽造なのだが、それなりな説得力を持たせてあるので賢司は努めて丁寧にそこら辺の事情を説明する。
「あの……討伐記録に目を通してくれていますか? それを見て頂けたらハンターランクに納得して貰えると思うのですが」
「舐めてます? 目を通しているに決まってるでしょう。だから言ってるんですよ、馬鹿も休み休みに言いなさい! これを信じろと……”ディノレックス”に”ディオガレックス”ですって!? それをあなた達六人で討伐!? できる訳ないでしょう! レイドパーティで挑むような魔獣を、あなた達みたいな子どもが!」
その怒号に、騒がしかったギルド内が静かになった。好き放題騒いでいたハンター達の関心がこちらに向けられている。どうやらイズフ樹海の覇者たる亜竜を討伐した事が信じ難いらしかった。そしてこれが自分達の嫌疑の根っこだとようやく察する。
そう言えばクールビューティ副団長セレナが討伐に騎士団一つが必要と言っていた事を皆が思い出した。因みに”レイドパーティ”とは四~五組の複合パーティの事で、一パーティが大体五~六人程度なので二十~三十人程度の戦力が必要という解釈になる。
それを六人で狩りました……確かに無茶である。しかし詳細は異なるがこれは事実だ。だからこそタウロ砦支部では偽造ではなく正真正銘の信頼を以て上級ハンターの肩書を与えられたのだから。それに実際はアキトが単独で狩ったので寧ろ実力を下方修正している。
それは取り敢えず、疑われた理由がはっきりしたので賢司はその誤解を解こうと動き出した。ここまで言われても丁寧な対応を崩さない賢司はエライ。このなんちゃって受付嬢は賢司の爪の垢でも飲むと良いとアキト、華蓮に美矢は思った。
「それでしたら、ハンターズギルドタウロ砦支部に問い合わせて頂けたら僕達の潔白は証明されます。時間が掛かるようでしたら待ちますし、今からでも連絡を――」
「はぁ!? そんな事する訳ないでしょ」
これで解決……と思いきや、受付嬢からのまさかの対応に今度こそパーティ全員が硬直した。だが、受付嬢はお構い無しに口撃を止めない。
「こんな事でそんな手間を掛けると思ってんの? 大体ここからタウロ砦までどれだけ離れてると思ってんの? 書簡を届けるのもタダじゃないし、その費用誰が払うと思ってんの? それともあなた達が払ってくれるのかしら? 嫌でしょ? 高いわよ。それが嫌ならとっとと素直に認めて詫びなさい! こちも忙しくていつまでも子どもの悪戯に構ってあげられないのよ!」
随分過ぎる言い分に、とうとう華蓮がキレる。無言で受付嬢に詰め寄ろうと歩を進めようとし、傍に居た守が咄嗟に後ろから服を掴んで進撃を阻止。それでも膂力に物を言わせて歩みを止めない華蓮だったが、突如それを止めざるを得ない事態が発生した。
「がっふっ!」
「……え? 守!?」
突然の鈍い打撃音、呻き声と共に体から負荷が消えたと思えば、華蓮の後方に居た筈の守が前方に弾き飛ばされて来た。すぐに介抱する華蓮に浴びせられたのは理不尽過ぎる暴言だった。
「おいガキ共! いつまでカウンター前でグダグダしてやがる!? 仕事がねぇならとっとと退け!」
これまた随分な言い掛かりに反応して振り返った華蓮の視界に映ったのは、どこぞの世紀末からやって来たような男の二人組だった。
各々が鍛え込まれた身体を使い込まれた装備で固めている姿からハンターと思われるが、全体的な風貌と隠す気も感じられない粗暴な気配から、盗賊の方が似合っていると誰もが思うだろう。
いつもの華蓮ならそのビジュアルに何かしらのリアクションを示しただろうが、今の彼女にそんな感性は残されていない。察するに守はこいつらに殴り飛ばされたんだと瞬時に悟った華蓮は売り言葉に買い言葉で男達に吼えた。
「いきなり人の連れ殴り飛ばしておいて言う事がそれ!? 他に言う事があるでしょうが‼」
「あぁ? 威勢が良いな姉ちゃん。だがおれらに文句があんなら口より”こっち”で来な」
そう言って男は腰の剣を指で弾いた。文句があるならかかって来いという挑発だ。華蓮は即決で乗った。こういう輩にお話し合いは無駄と理解している故だ。
殺す気は無いので剣の柄には手を伸ばさず、拳を握って応戦しようとする華蓮だったが、そこでまた思わぬ横槍が入る。
「ちょっとあなた! 尋問中に厄介事起こさないでくれる! それ以上やるなら問答無用で牢に放り込むわよ!」
受付嬢だった。最初はそちらに詰め寄ろうとして、それを背後から邪魔されたので対処しようとすれば、続けてまたもや前からと忙しく翻弄される華蓮は今度こそ受付嬢に向かって怒声を飛ばした。
「寝てんのあんた!? どう見ても正当防衛でしょうが! こっちは仲間が暴行受けたのよ! そんなに騒いで欲しくなかったらそっちで諌めなさい‼」
「残念ながらそれは無理よ。彼らの行動はこちらの尋問に対して不適切な態度を取るあなた達を押さえるのに必要な措置と判断するわ。正当性は彼らにあって、あなたこそ無用な抵抗は慎みなさい」
「なっ……!?」
信じられない言葉を聞いた。どうやらこの受付嬢、この世紀末ハンターの横暴を黙認するつもりらしい。それ所か、華蓮に対して無抵抗のサンドバックになれと告げてきた。
世紀末二人組は状況を分かっているらしく、こちらの神経を逆撫でる態度を崩さない。
「おうおう、可哀想にな姉ちゃん。どうもおれらの方が正しいと認められたみたいだぜ」
「まぁ、下手な抵抗さえしなけりゃ痛い目には遭わなくて済むぜ。寧ろ気持ち良い気分にしてやってもイイぞ……ベッドの上でな」
悦に入ったように蔑む男に華蓮が無言で怒気を放つも、相手は全く堪えずどこ吹く風だ。そしてここまで騒げばいい加減周囲にも余波は及ぶ。さっきまで無関係だった酒飲み暇人ハンター共が「いいぞー、やれー!」や「姉ちゃんいっそ脱げっ!」と下品な言葉で煽りに煽る。それが華蓮の神経を余計に刺激する。
「……落ち着けよ華蓮、要は手を出さなきゃ良いんだろ。俺っちの結界ならどうとでもなるわ」
「守……だけど――」
被害に遭った守が何でもないと華蓮を諌める。ここで暴れても状況は良くならないと守は悟った。華蓮も当然分かってはいるが、あまりの不条理に納得がいかない。
だが、華蓮以上に憤怒を宿した者は別に居た。
「……受付嬢さん、これは流石に――」
「嫌なら早く不正を認めれば? そうすれば通常対応してあげても良いわよ」
親友達が害されるのを見かねた賢司が受付嬢に迫るも、彼女は殆んど脅迫としか言えない返答を寄越すしかしない。これで流石に賢司もキレた。
「……貴女こそいい加減に――」
――ぼちゃっ。
しかし、賢司はがいざ事に及ぼうとした矢先に、なにやら生々しい効果音が耳朶を打った。
不思議と、その場に居た全員の意識に刷り込まれた音源を辿り……視界に収まったブツを全員が注視した。
それは人の手首だった。
恐ろしく非日常な落とし物に対して、悲鳴を上げる前に皆がどこから落ちたと視線を彷徨わせる。そして事実は思いの外早くに判明した。
ほぼ同時に全員の焦点が世紀末ハンターA――華蓮に掴み掛かろうとしていた男の左手に定められ、そして全員が事象の解を得る。何故なら男の左腕は華蓮に突き出された状態で手首から先を欠損していたからだ。
全員が思った……『あぁ、こいつの左手だ』と。
男も思った……『あぁ、おれの左手だ』と。
「……がって……ぐ、ぎゃあああああああああああ‼ 手ぇ……おれの手がぁああああああ!?」
間を置いて血が噴き出したタイミングでやっと現実を認識できた男が絶叫した。男を含め全員が”手首が斬り落とされた”事実を受け入れるのに時間差が生じる程の早業。
誰の仕業かはすぐに分かった……少なくとも日本出身パーティには。
いつも間にか、賢司のすぐ後ろで状況を静観していた少年は華蓮の隣に寄り添うように佇んでいた。少年――アキトは完全に光源の消えた瞳で、無感情な眼差しで蹲る男を見下ろしていた。
この場で誰よりもキレていたのは彼だった。
元黒竜が激怒。受付嬢の運命や如何に!?
読んでくださっている方、心よりありがとうございます。
できるだけ早く次話を投稿します。
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