No 03 無能力(ゴミスキル)
3話です
戦争参加の意思表示をしてしまった以上、(俺はしていない)俺達は戦う術を身に着けなければならない。特別なスキルを持っているとはいっても、俺達は日本でただの学生生活を送っていた一般人だ。いきなり魔族と戦うとか無理すぎる。
まぁその辺のことはきちんと予測はしていたらしく、王国内できちんと戦う術を教わることが出来るということらしい。
そして今、自分達のスキルを知るために俺達は王宮内にある、聖殿という部屋に来ていた。
重々しい扉のその奥。そこはぶっちゃけ、めちゃくちゃ怪しい部屋だった。
中は真っ暗で、小さなテーブルの上には黒っぽい布の上に乗った大きな水晶玉。窓も電気もない中で、水晶玉だけが淡い光を放っている。
この水晶に手をかざすと自分のスキルが分かるらしい。
そして占い(?)が始まった。
最初が樋口、続いて愉快なクソ共、最後に俺だ。
結果としてはこんな感じだった。
樋口武司
筋力強化(1~3倍)・全身の筋力の強化が可能
魔法適正・長い鍛錬を経て魔法の行使が可能。
真柴真一
脚力強化(1~2倍)・脚力の強化が可能
福野雄一
腕力強化(1~3倍)・腕力の強化が可能
福住陽一
筋力強化(1~2倍)・全身の筋力の強化が可能
岸香
魔法適正・長い鍛錬を経て魔法の行使が可能
脚力強化(1〜2倍)・全身の筋力の強化が可能
南場真美
強運・強い運を引き寄せる
センス・何事も上達が早い
岡部鈴花
遠視・遠くまでよく目が見える。
スキルで魔法が使えることには驚いたが、どの程度かはまだわからないから何とも言えないし、強運にしてもセンスにしてもそれは同じだ。
遠視は、多分弓矢とかで重宝するんじゃないだろうか。分からんけど。
まぁとりあえずなんというか、予想通り樋口の能力は破格だな。これはお約束ってやつだろう。まぁ別にそれは良い。樋口が無双しててっとり早く魔族を倒して戦争を終結にでもしてくれるのなら俺も楽できるだろうし。
・・・多少面白くないって思いもないわけじゃないけど、まあ納得はできる。
納得できないのはこの後だ。
相沢空我
身体能力強化(0.3~1倍)・筋力強化の上位スキル。身体能力の強化が可能。
筋力強化の上位版、それはすごい。樋口のスキルより強いわけだ。
・・・で、肝心な強化率が0.3~1倍ってどういうこと・・・?
弱くしかならねぇじゃん!!
実質何の価値もなくねぇ!?
・・・なにこれ虐め?
この世界も俺を虐めるのかよ!?
「おいおい、相沢ぁ~お前そんなスキル意味あんのかよ?」
予想通りに樋口がニヤニヤとしながら俺に絡み始める。
「プッ・・・何そのスキル、はっずかし~!」
周りにいたクズ共は俺をニヤニヤと嗤っている。
国王に至ってはもはや面白がることすらなく、クズを見る目で俺を見る。
そして一言。
「はぁ・・・無能か・・・失望だ・・・。」
こいつ・・・。そっちの事情で勝手に召喚しやがったくせして俺が無能と分かった瞬間掌返しやがって・・・。
結局、異世界に来てもどいつもこいつもクズばっかりかよ・・・!!
閑話休題
勇者召喚されたその日、早くも俺は脱力感に襲われた。
これが無気力症候群ってやつか・・・!
俺は悪く無いはずなのに・・・てか絶対悪くないだろ!
いきなり知らないやつの都合で異世界に召喚されて、授かった能力はゴミとか・・・。
あんまりだろ・・・一体俺になんの恨みがあるってんだよ・・・。
占いが終わった後、国王が適当にスキルの説明をしていたが、まあ予想通り俺のスキルはゴミだった。身体能力強化は身体強化系で最強のスキルらしいが、強化率が0.3~1倍では何の価値も無い、だそうです。
国王の説明が終わると、俺達はそれぞれの部屋に案内された。
「ここがあなたの部屋です。」
ちょっと前まではにっこり笑顔だったはずのメイドが不愛想に言い放つ。
まあ、こうなるかもとは思ったけどもさ・・・。
「・・・やっぱ俺だけなんだろうな。こんな部屋・・・。」
「・・・無能のくせに文句を言わないでください。部屋があるだけ感謝してほしくらいです。」
このクソメイドが・・・。急に拉致られて無能の烙印押されて、その上用意された部屋はボロくてショボい。
この状況で感謝とか、俺を坊さんか何かと勘違いしてんじゃねえのか?
つーか何で王宮にこんなボロい部屋があんの?虐め用?
「・・・さいですか。」
もうどうでもいいや、疲れた、さっさと寝たい。
「すいませんね無能で。」
「ええ本当にそうです。反省してください。」
反省?俺が?こいつマジ何言ってんの死ねば?
「・・・何か聞いておきたいことはありますか?」
「・・・飯はどうすればいいんですか?」
「・・・私たちが用意しますから、そちらを食べてください。」
「・・・ちなみに他の勇者達は?」
「いい加減にしてください!無能に寝床と食事が与えられるだけ感謝してくださいと言っているんです!無能の食事が勇者様達と同じなわけがないでしょう!?」
・・・分かっちゃいたけど、やっぱりその辺もしっかり差別するわけね・・・。
ていうかなんだこのクソメイド。どうでもいいことでいきなり声荒げやがって。まるでうちのお母んだ。
「そうですね、ほんとすいませんでした~。」
もうほんと、心底どうでもいいわ。
「・・・ではこれで私は失礼します。・・・くれぐれも問題は起こさないようにしてくださいね。」
乱暴に部屋のドアが閉められると、俺は靴と上着を脱いでベットに潜りこむ。
俺はかなり疲れていたらしい。
まぁ、これだけストレスを受ければ疲れるのは当然だ。
・・・ほんと俺以外の奴らみんな死ねばいい・・・・・・・。