No 02 異世界召喚
2話です
ゆっくりと目を開け、そして唖然とした。
俺は知らない場所に立っていた。
最初に目に飛び込んできたのは大きな六芒星のようなもの。縦横で10メートル近いだろうか。キリストの十字架みたいに、何かの信仰にでも関係があるのだろうか。
視線を周囲にめぐらせると、俺が巨大な広間にいることが分かった。何でできているのかは分からないが、床も壁も天井も真っ白だ。
広間の四隅と出口らしき扉の前には衛兵が立っている。
視線を戻すと、六芒星の飾りに気を取られて気が付かなかったが、その下には王座に座る白髪のジジイがいた。
そのジジイはジャラジャラと服に着いた金属(?)を鳴らしながら立ち上がり、太く低い声で話しかけてきた。
「ようこそ、ワルディフトへ。勇者様達。歓迎する。私の名はリカルド・アーロニーニ。カトリシトの国王だ。」
そういって国王リカルドは満足そうな笑みを見せた。
なろほど・・・。ということはやっぱりこれは異世界召喚、というやつなのか。
ん・・・?
勇者様、達・・・?
ハッとして後ろを振り返ると、後ろには唖然とした表情で樋口とその愉快な仲間共が立っていた。
女3名男4名の計7名。多分ついさっき俺を校舎裏でいたぶっていたメンツだ。
上がりかけていたテンションが一気にダダ下がる。
久しぶりの気分の高揚が一転して、最悪の気分だ。
あぁ・・・ほんとこいつら死んでくれねぇかな・・・・・。
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今、俺達は場所を移り食卓(?)にいる。
晩餐会なんかで使うような長いテーブルに座り、飲み物が出るのを待て、ということだった。
いつも騒がしい樋口たちだが、状況が呑み込めていないのか、半放心から立ち直れていないようだ。
座っている位置は、国王がテーブルの一番端を横に使って座り、そのすぐ近くに7人が縦に座っていて、俺は1番端の奴から椅子5つ分離れたところに座っている。
暫くすると、メイドさん達が入ってきて、飲み物を配り始めた。
俺だけ席が離れているのを不思議そうに見つめていたが、特に何かを言うこともなく去って行った。
全員に飲み物が行き渡ったところで国王が話し始めた。
大分長々と話していたが、要約するとこんな感じだ。
まず、この世界はワルディフトと呼ばれている。
ワルディフトには2つの種族がある。人間と、そして魔族だ。
魔族は、非常に凶悪で、歪んだ者が多く、人間をさらって拷問を楽しむような者までいるらしい。なにそれ魔族超怖い。
この世界の約8割を魔族が支配していて、残りが人間の領域だ。
人間の国は、6つあり、その中で1番の大国がここ、カトリシトだそうだ。
人間と魔族は何百年もの間、戦争を続けていて、今は休戦状態が続いているのだという。
戦力は一見、拮抗しているように見えるが、支配領域を聞いても分かる通り押されているのは人間だ。
魔族は個体の力も強いし、数も多いらしい。だが、何よりも問題なのは魔族は魔法を使えることだという。
魔族は魔法が使えるが、人間は使えない、これが戦力差の1番の要因らしい。
結局のところ、戦争に勝つために俺達は召喚されたらしい。
「あなた達には例外なく、強力な恩恵が授けられておる。その力を存分に発揮して魔族打倒し、われらに勝利をもたらしてほしいのだ。」
まずそのスキルとやらがどんなものなのか、魔族の使う魔法ってのがどのくらいなのか、など考えを巡らせていると、突然と立ち上がり口を開く奴がいた。樋口だ。どうやら放心状態から立ち直ったらしい。
「・・・つまりは俺達は最強になれるから、魔族をぶっ倒して英雄になってくれってことか?」
あながち間違いとは言えないけど、言い方。絶対そんな簡単じゃないから・・・。
「・・・その通りだ。」
樋口の言葉に国王はにやりと笑う。
「よっしゃやってやろうぜ皆!パパッと英雄になろうぜ!!」
えぇぇ・・・。
こういうのってまず「ふざけんなよ」とかなんのがお約束じゃないの?
てか言ってることバカすぎだろ・・・マジで1回死ねよ・・・。
「仕方ない、付き合ってやるぜ!」
「ひぐっちーがやるならあたしもやるー!」
えええぇぇぇぇ・・・。
ひぐっちー、お前の一言のせいでなんか完全に断れない感じになっちまったじゃねぇかよ・・・。もうお前らマジ勝手に死んでくれ。
閑話休題
結局全員やるということで決まってしまった。俺に至っては意思確認すらされなかった。多分、こいつらは本当の意味で戦争をするってことがどういうことか理解してないんだ。俺だって理解してないかもしれないが、少なくともこいつらよりは深刻に考えている。
今日、1つわかったことがある。
こいつらは、本物のバカだ。本気で1回死んだ方がいい。