No 12 修行法
「・・・来たか。」
少々迷いながらも俺は特別鍛錬場に辿り着いた。
鍛錬場は何とも言えない緊張感が漂っていて、俺は言葉を発せないでいた。
そんな沈黙をアランが破る。
「・・・もう一度だけ聞くぞ?本当に、やるのか?」
昨日も思ったが、どうもアランは乗り気じゃないように感じる。
まぁ、それでも言うことは変わらないけど。
「やる。」
アランは大きな大きなため息をつき、俺を見据えた。
「・・・じゃあ始めるか。やることは単純。ひたすら俺と殴り合うんだ。」
「・・・は?」
直後、アランの姿がかすんで見えた。
次の瞬間、腹に大衝撃。血反吐をまき散らしながら、俺は後方に吹き飛ばされた。
「~~~~!?っ・・・う゛おぇ・・・」
意味が分からない。腹が熱い、熱い、熱い・・・!?
熱と痛みが引いていく。俺の腹から光が立ち昇っている。
・・・なんだこれは?
「ここは、場内で致命傷を負った人間を瞬時に再生させるように作られてる。・・・詳しい事はよく分からん。」
何だそれ・・・さすが異世界とでも思っとけばいいのかね。
「これから俺はお前と殴りあう。人間痛い思いした方が覚えが早い。文字通り身体で覚えるってやつだ。」
・・・理解した。これから何が行われるのか、嫌でも察しがついてしまう。背筋が冷たくなる。冷や汗が止まらない。
「・・・あ、そういえばお前身体能力弱体化できるんだってな。身体能力を最低まで下げろ。絶対に弱体化は解くんじゃねえぞ?」
・・・・・冗談じゃない。今でもアランの姿を捉えることすらできなかったんだ。身体能力を0.3倍なんかに下げてみろ。本当にどうしようもなくなる・・・!
・・・けど、やるしかない。
今更泣き言なんて言えるはずない。
これは俺が決めて始めたことだ。
「・・・分かった。」
恐ろしいのに、怖くて逃げだしたいはずなのに、知らぬ間に俺の口角は持ち上がっていた。
きっとそれは、本当に強くなれると、確信できたから。
「・・・良い表情だ。いくぞ、クーガ。」
俺はいままで、これ以上の辛い日々を過ごしたことは無かった。




