No 11 最強への道
「・・・それで?なんでいきなりクーガを痛めつけてたわけ?」
ご立腹の様子でアランを睨みつけるリーシャ。
アランはその前で正座。
「いやぁ・・・どんな奴のかなぁと思ってちょっと試してただけで・・・。」
怒られているアランはばつの悪そうな顔で頭をかく。
「・・・クーガめちゃくちゃぼこぼこなんだけど、これのどこがちょっとなの?完全にただの虐めじゃない。」
まぁリーシャの言っていることは大体正しい。だけど多分アランの言ってることも本当だろう。
力量差は歴然だったのに俺は生きてるし、なにより大きな傷がない。体中痛いけ多分骨折なんかもしていない。
冷静になって考えれば、本当に悪気がなかったように思える。
だとしたらこのまま放置しておくのもなんとなく可哀そうな気がしなくもない。
話を進めるためにも、俺はとりあえずアランを助けてやることにした。
「・・・えと、まぁ、大丈夫だからさ。別に虐められてたわけじゃないから・・・多分。」
「・・・ほんとに?」
リーシャが胡乱げな顔でアランの顔を覗き込む。
直後、アランが神を見るがごとく顔を輝かせ、まくしたてだした。
「そうそう!そうだよなクーガ!ちょっと稽古つけてやっただけだよなあ!?」
こいつ俺の名前知ってたのか。
つーかこいつ絶対反省してぇねな・・・。
・・・やっぱ助けるのやめよう。
「・・・そうな、ちょっと窓から投げ落とされて殺されかけただけだ。」
まぁそれも今考えれば、2階じゃなきゃやらなかっただろうし、木の上に落ちたのも偶然ではないんだろう。
「あれぇ!?俺に助け船を出してくれたんじゃなかったの!?」
・・・・・このおっさん実は結構面白いキャラしてんじゃないだろうか・・・。
「・・・・・アラン?」
「ヒィ・・・!」
閑話休題
「・・・で、どうだったのアラン。」
一通り説教をした後、リーシャがアランに問いかけた。
アランも先ほどとは一転して真面目な雰囲気を醸し出す。
多分ここからが本題だろう。
「・・・最初はただのへたれかと思ったんだが・・・根性はありそうだし・・・目も良い・・・合格だ。」
それを聞いたリーシャは表情が明るくなる。
「じゃあ、クーガに闘いを教えてくれる?」
やっぱり俺を師事してくれるってのはこいつのことだったのか・・・。
「あぁ、いいだろう。・・だが・・・」
「だが、何?」
「・・・ここからはガキ・・・じゃなかったな、クーガ、お前に聞くぞ?」
リーシャが問うと、アランは俺に視線を向けた。
「・・・なんですか?」
「敬語は止めてくれ・・・。お前、最強になりたいのか?」
「ああ、そうだ。」
真剣で、それでいて少し躊躇しているような何とも言えない様子でアランが訪ねる。
「・・・お前が最強になれる可能性は無いわけじゃない。だけど、それには正直言って頭のおかしい方法が必要だ。それでもやるか?」
「やる。」
即答。俺は食い気味に答えた。
「・・・俺が普通に闘い方を教えるだけでも、そこそこ闘えるようにはなるぞ?それじゃあダメなのか?」
俺は基本何でもそこそこできれば問題ないと思って生きてきた。それはこれからも変わらないと思う。
だけど、ここだけは譲れない。なんというか・・・意地だ。なんでか分からないけど、これだけは絶対に中途半端にしたくない。
「そこそこじゃあダメだ。俺は最強になりたいんだ。」
迷いはない。俺はアランの目を真っ直ぐに見つめて言い切る。
「・・・分かった。」
アランは一つ大きなため息をついた。
「明日の朝、特別鍛練場に来い。」
特別鍛練場なんて何処かわかんないけど、リーシャに聞けば問題ないだろう。
俺はアランにうなずきを返した。
「リーシャ、こいつを強くするって話、引き受けた。」
「うん、よろしくね。」
リーシャは嬉しそうに破顔していた。
リーシャと一通り話し終えると、アランは俺達に背を向けて去って行った。
特別鍛練所場の場所をリーシャ聞いた後、俺は再び用意された部屋で1人、朝を迎えた。
リーシャは以外にもちゃんとお姫様をやっていて、案外忙しいようだ。