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No 01 日常

1話目です。


今日も嫌々学校へ行く。行かないと親がうるさいし、仕方がない。



どうせ行かなくても、家にも俺の居場所なんかないし、まぁどうだって良い。



あくびを漏らしながらのろのろと歩く。



大分たらたらと歩いていたせいか、余裕を持って家を出たはずが、学校に着いたのはギリギリだった。



靴箱を覗くと中にはゴミがごっそりと詰め込まれていて、かすかに腐敗臭がする。



靴は相当前から毎日持ち帰るようにしているから、大した問題はない。



ただ、定期的に掃除しておかないと、臭いが酷くなり、用務員さんを通して担任に怒られる。俺が。



なんて理不尽。



教室のドアを開け、椅子に座ると同時にチャイムが鳴る。



そんな俺を見てクラスメイトはクスクスと笑う。



俺の机の上には花瓶が置いてあった。



・・・本当に毎度毎度、古典的でくだらないことをしてくれる。



「よし、みんなそろってるか~?」



教室のドアが開け放たれ、担任が入ってくる。



全員が席に着き、静かになったところで朝のホームルームが始まる。



「皆・・・。真面目に聞いてくれ・・・。今日は悲しい知らせがあるんだ。」



担任が陽気な雰囲気から一転して深刻な顔になる。クラスが静まり返る。



「この2年3組の仲間である、相沢君が・・・昨日、亡くなった・・・。」



・・・相沢君とは俺のことだ。



直後、クラスがざわつきだす。



「・・・そんな!先生!どうして空我は死んだんですか!?」



いや死んでねえから。



「あんなに良いやつだったのに・・・。」



思ってもないことを口にすんな。



「先生!!相沢君はいったい誰にどうして殺されたんですか!?」



いつ俺の死因が他殺に確定したんでしょうかね。



「・・・殺したのはとある新婚の旦那さんだ。理由は、妻が相沢君に乱暴されたうえに殺されたそうで・・・復讐だ。」



先生よ・・・そんな設定まで練ってくるとは・・・あんたマジで暇かよ。



「それじゃあ仕方ねえな!」



変わり身速ぇなおい。



「相沢最低だな!俺葬式行ってやらね~!」



いや普通に来てほしくないからね?



「ほんと死んで正解よねあいつ!新婚さんが可哀そう・・・。」



だからさ、死んでませんよ?



そんな感じでホームルームが終わる。



それからの授業は睡眠一択。深夜のアニメ、ラノベ、ゲームタイムに備えしっかりと睡眠をとる。





昼休み、気持ちよく眠っていると突然椅子が蹴りとばされ、たたき起こされる。蹴ったのは樋口。虐めの主犯格だ。



一瞬だが、殺意が湧く。



気持ち良く寝てる時に起こされるのってマジで腹立つよな。



「は~い皆さんご注目!これから主席番号1番、相沢空我君のボコり大会、名付けて~・・・「リンチじゃないよ!?虐めだよ!大作戦」が始まりま~す!!」



虐めなのかよ・・・。作戦とは一体・・・。



クラスメイトが集まり、ニヤニヤと携帯をこちらに向け始める。



俺なんか撮って何が嬉しいんですかね・・・それともお前ら俺のこと好きなん?



「はい、これからボコられる相沢君ですが、今のお気持ちお聞かせください!」



樋口が俺の前にリコーダーを突出し、何やらコメントを要求し始める。



リコーダーはマイクに見立てているつもりなのだろうか。



つーかこいつ口臭ぇな・・・。ちゃんと歯を磨け歯を・・・それとも内臓疾患ですか?



「・・・。」



「おーい!出席番号1番、強姦野郎の、相沢 空我くーん!!」



樋口は顔を俺の目の前に近づけ、大声でわめきたてる。



それを聞いたクラスメイトにどっと笑いが湧く。



唾を飛ばすなよ汚いな。



「・・・何だよ。つーか俺は強姦野郎じゃねぇから。」



「お前さぁ、最近調子乗ってねぇか? オラァ!!」



「ぐぅっ・・・!?」



問答無用、いきなり殴られる。



完全な不意打ちだったせいで思いっきり鳩尾にくらってしまう。



痛みに耐えきれず思わずうずくまる。朝から何も食べていないため、胃液だけが逆流し口の端から垂れる。



「何呻いてんだよ気持ちいなぁ!」



「がっ・・・!」



うずくまった状態から顎を蹴りあげられる。しゃがんだ状態からでは耐えることもろくに出来ず、あおむけに倒されてしまう。



「きゃはは!だっさ~い!」



「豚がひっくりかえったぜ!!」



揺れる視界に俺をあざ笑うクラスメイトが映り込む。



瞬間、俺の中で赤い感情が噴出しかけるが、それもすぐに冷める。



抵抗なんてどうせ何の意味もない。クラスメイトも教師も両親も祖父母も弟も、どこにも俺の味方なんて存在しやしない。



クラスメイトは俺を虐め、教師は黙認どころか加担しやがる。



両親は何故か俺を毛嫌いし弟を溺愛。俺が顔をボコボコに腫らして帰ったって気にもとめない。



祖父母にも何故か嫌われ、弟にすら見下される。



どいつもこいつも俺のことが嫌いで、俺も大嫌いだ。



つまりは全員が敵。俺が1人で頑張ったところでどうにもならない。



世の中、正しいか間違いかなんて全部大多数にとって都合がよいか良くないかで決まるんだ。



本当に正しいかどうかなんて関係ない。



少数の人間が本当に正しいことを言っていたとしても、大多数にとって都合が悪いのなら、それは悪になる。



その良い例が俺だ。



デブだから虐める、小学生かよ。 

アニオタだから虐める、趣味は人それぞれだろ。

調子乗ってるから虐める、調子乗ってるとは?俺からすれば調子乗ってるのは完全にお前らだ。

変態だから虐める、意味わからんいつから俺は変態になった。

強姦最低野郎だから虐める、事実であるのならばある程度は仕方がないのかもしれないが、俺は童貞だ・・・。



こうして考えてみると本当に理不尽だ。



入学当初、学校はほぼすべて寝て過ごし、家に帰ってからアニメを観てラノベを読んで朝まで過ごしまた学校を寝て過ごす。確かに不健康極まりない生活ではあるし、そのせいで不健康の塊のような体形になり、イケメンだと自負していた顔は白豚の様になってしまった。



それでも成績は常に学年トップ。入学から約1年間、高校生活で他人に迷惑をかけたことは一度もない。最低限やるべきことはやっている。



授業中寝るな、なんて小言程度なら受けても仕方がないかもしれない。だけど、少なくともクラスメイトが俺を傷つけていい理由など無いはずだ。



でも、クラスメイトからしてみれば、俺が悪いんだ。



自分が悪だということは、都合が悪い。だから誰もが何かと理由をつけて自分を正当化する。



だから、2つの考えがぶつかった時、必ず少数派が悪になる。



テロリストが、もしも本質的に正しいことを主張していたとしても、テロリストは悪だ。



でももしもテロリストが地球人口の8割を占めれば、それはもうテロリストとは呼ばれない。正義だ。



だって8割の人間がそれを正義だと主張するのだから。



もう1度言うが、正しいかどうかは関係ない。



大多数派の反対派は、常に悪。



俺にとっては全員が敵、全員にとっては俺が悪。



・・・つまり、全部俺が悪いってことだ。



笑われ、蔑まれ、侮辱され、蹴られ、踏みつけられる。



自分の中の赤い感情を押さえつけ、無様にうずくまり、耐える。



こんなことが本当に正しいはずはない。俺は悪くない。



だけど、諦める。ひたすら耐えて、耐える。耐え続ける。



それ以外、どうせ俺に出来ることなんてないんだから。





放課後、校舎裏に連れ込まれ、昼の続きと称して暴行を加えられ、地面を転がされる。



暫くすると、飽きたのか、満足したのか、樋口とその取り巻き達は笑いながら去っていった。



「痛ぇ・・・。はぁ・・・。せめてもう少し加減しろよ・・・。」




地面に転がり、深いため息をつきながら俺は思った。



本当に、くだらない。



こんな世界、何の価値もない。

世界から永久退場したいくらいだ。

だけどそれも馬鹿馬鹿しい。

どうして俺があいつらのせいで死ななきゃならないんだ。

むしろ俺以外の奴が全員死ねばいい。



・・・あれだな、もういっそのこと異世界転移とかされないかな。

なんかチート能力でも授かって好き放題やるやつ。・・・この世界に未練なんてかけらも存在しないし。



どっかの世界の女神か王様か、誰だっていいから俺を異世界に招待してくれませんかねぇ・・・。



思考がそんなところまで独りでに泳いでいき、現実逃避のため尚も妄想を広げる。



服に着いた汚れを払いながら立ち上がったところで・・・俺は凍りついた。



俺の足元に光り輝く円陣と見たこともない文字が現れたからだ。俺の頭は全く働かず、視線がアニメで見たことのあるような、その魔法陣らしきものが現れた足元に固定される。



魔法陣は徐々に光を増し、さらに、俺の身体に異変をもたらした。



視界が歪む、気持ちが悪い、動悸が激しい、酷い耳鳴りがする目がチカチカする頭が痛い・・・くっそ・・・なんだこれ・・・・・。






俺を包んでいた魔法陣の光が消えるころ、俺の姿はもうこの世界のどこにも存在していなかった。

とりあえず9話まで毎日投稿します。

そこまでで1章終了となります。

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