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対策検討開始

「課長、今お時間よろしいでしょうか。癌の治療方法を確認してきました」


 日笠君が調査してきた結果、既に免疫細胞やリンパ球を活性化しガンを攻撃する医療は実用化されており、保険治療にまでなっている事が判明した。全てのガンではなくて、食道がん、胃がん又は大腸がんに限られてはいる。


『……どうします? 前提変えますか?』


「いや、こちらだと感染者増えなさそうな気がしますし、今の前提で良いんじゃないですか。対策とるとしても、この癌治療を受けなくする位になっちゃいますよね?」


『そうだね。今のままで良いよね』

 山田さんも頷いている。面倒だしね設定変えるの。



『はい。今日から具体的な対策を検討しようと思います。ゾンビ対策で一番大切なものは何かあげてみてください』


「安全な住処、籠城できる場所です」


「みっみずと食料です!」

 あっせ、あっせ、と慌てている感じで山田さんが回答した。いつも一生懸命な感じがするから好感が持てる。でもそれ2個言ってるから。


『今出た候補以外に、次に必要なものは何ですか』


「火、燃料が必要です」


「とっトイレ」


 その後、必要なものをドンドン出していってもらった結果、


『今まで出たものを纏めると、地震発生後に必要なもの及びパンデミック対策で推奨しているものとほぼ同じです。マスクやゴーグル、手袋、アルコール消毒液などもパンデミック対策で推奨しています。

 それを受けて、どのように感じましたか?』


「具体的な掘り下げが足らないという事でしょうか?」


「ほっ他の部署が必要と言ってないものを探すとか?」


『はい。それも良いと思います。備蓄率を上げる事や啓もう活動は他の課が実施しています。この課の対策としても備蓄を推奨しますが、実際の活動は他の課に任せようと思います。備蓄率の目標値も他の課が設定している値をそのまま採用します。

 現在の備蓄率は、他の課が定期的に算出しているのでその値をそのまま採用し、備蓄が進んだら、うちの課でも目標が達成出来たことにします』


「課長。それ何か意味があるんでしょうか?」


『あります。最終的に大事なのは備蓄が進むことです。うちの課が予算1億使っても効果が少ないでしょう。それに内の課がそんな目的に予算を使ったらおかしな目で見られますよね。


 目標に対して実績が出せれば評価に繋がります。お二人の年間の目標設定と実績に関係しますし、給与に対しても色をつけるまでは行かないかも知れませんが、少なくてもマイナス査定にならないようにしたいです』

 二人とも、おおーって感じになったので、少しだけ琴線に触れたかも。


『また、掘り下げが足りてないのも事実です。うちの課じゃないと出せない対策、そういうものを少し考えましょう。何か案がありますか?』


「はっはい。家から出ない」


『はい。それは大事だと思います。私も賛成です』


「情報収集。ラジオやテレビ、インターネットで情報を集める」


『はい。それも大事だと思います』


「……」

「……」


『もっと馬鹿げた案でも、なんでも良いですよ。どんどん出してみて下さい』


 二人とも考え込んでいるが、なかなか議論が盛り上がらない。仕方がないので少し場をかき回すかな。


『ゾンビもので、気になる点が幾つかあります。ゾンビを攻撃するとして、大体のゾンビものでは頭が弱点なのに、そこに気が付くまでに時間がかかりすぎる事です。

 実際にゾンビが出て襲ってきたら、頭を攻撃すべきだって思いませんか?』


「いや、あの、思いません。まずゾンビが居るとは思いませんし、何かのドッキリかなとか、イベントかなとか、実際に攻撃される前に頭を殴るとかちょっと難しいです。いきなり近づいてきたから正当防衛で頭を殴るというのにも無理があるかなと」


「わっ私も、頭を攻撃するのは難しいです。間違って普通の人だったらって思ってしまいます」



『では、どうすれば頭を攻撃しても良いと思えますか?』


「実際に被害があった人をこの目で見て、かつ、その化け物が襲ってきたら、でしょうか」


「ほっ法律で保護されるなら? でっでも、やっぱり無理かも……」


『じゃあ、対策としては実際に襲っている動画や、官房長官辺りから説明してもらって、殴って良いと、殺して良い、とニュースなどで報道したらどうですか』


「その場になってみないと分かりませんが、なかなか頭を殴るのは難しいです。ただ先ほどよりは殴れそうな気がしました」

 山田さんも、コクコク頷いてる。


『ゾンビもので気になるのは、政府が正しく報道しないケースも何件か見受けられますよね。あれも被害を拡大させる原因だと思うんです。詳しく説明出来ないとしても戒厳令というか、自宅から出ないように徹底すべきではないでしょうか』


「課長、あの、それ、映画とか作り物だからパニックになるように、作成しているせいだと思いますけど」


『それです。つまり、パニックものはパニックになるように作っているのでしょうから、パニックに成らないよう考えたら、良いのではないでしょうか』


「「おおー」」

 今度は声に出たぞ、二人からの評価が上がって気がする。


『ゾンビは今いません、でもゾンビ映画やアニメ、漫画、小説、ゲーム、沢山出ています。あーあの時、ああすればいいのにとか、もっとこうしたら良かったのに、そういうのが有るのではないですか?

 今のは例ですが、くだらない事でも出していきましょう。その中で本当に必要なものが見つかるかも知れませんよ』


「じゃあ、政府が正確に発表する」


「こっ個人でも、つぶやく、分かったことを共有する」


「逃げ道のないような場所には行かない。ゾンビが絶対いると思われる場所に行かない」


「かっ感染者を隔離する」


「武器を確保する。銃の所有や携帯を許可する」


「生き残った人達は協力しあう。仲間割れしない」


        :

        :


 うーん表面的な話しが多いな。もう少し何とかしないと、と考えていたら、私のスマホがブルブルと動いた。取り出してみると、ツブヤキが書かれている。リツイートなので、リンク先の文字をクリックし、画面が切り替わるのを待たずに自席においてあるタブレットPCも持ってきた。

 二人のスマホも、ブルブルっと震えて、それぞれ中を見ている。ちなみにハッシュタグは、Zombieやゾンビだ。


『映画の宣伝だった』

「「私もです」」

 SNSの特定キーワードで通知される設定にしているが、実際のゾンビではなく、映画だったり、ゲームだったり、私たちが期待じゃなくて、警戒しているものとは全く異なる話ばかりだ。


「これじゃ関係ない話が多すぎて、本当に必要な情報に気が付けません。オオカミ少年ですね」


『二人ともハッシュタグ外していいですよ。あるいは通知設定をしなくて良いですよ。身が持たないからね』

 しかし、このままの検討方法じゃ駄目だな。もう少し突っ込んだ話し合いをしないと。もう少しケースを深堀すれば良いのかな?

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