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僕の考えた“悪ゾン”と“ななるゾン” 水谷課長Ver

2017/5/27 誤字と、課長のセリフを『』に変更、程度の修正

 2週間が経過し、今日は各自のゾンビ案を発表する事になっている。事務所で一緒にゾンビ映画を見るとか、今までの仕事だったらありえなかったけど、こんな仕事もあるんだろう。たぶん。



『今日はゾンビ案を発表してもらいますが、以前から伝えてある通り、全否定はしないようにお願いします。ただ不自然な部分は、改善案を出すなどして、より良い案を最終的に考えましょう。

 最初は私のゾンビ案を説明しますね』

 私が考えた“悪ゾン”を、壁に向けたプロジェクターで映し出す。


・感染原因  旧日本軍が開発した生物兵器でウイルス


・感染手段  生きている間にウイルスが体内に入り込む、ウイルスが傷口に触れたり、鼻腔、口腔などに入り込む


・感染先   四肢動物(人、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類)、 植物と魚介類は除く


・五感    全て有り(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)


・襲う相手  動物全て。草食動物に感染しても動物を襲います


・エネルギー 生きていた時と同じ。人間は雑食なので人も動物も襲って食べます。草食動物は草食のまま、食べれないけど襲う


・ステータス 制限が外れて多少強くなるが、力加減が出来ないため自身が欠損しやすい。知能は低い。ペット以下。例えばドアがあってもドアが何か分からない。動物や虫、肉とか野菜は分かるけど、スナックとかペットフードとかは初見では分からない。臭いを嗅ぐことで分かるかも知れない


・寿命    餓死すること有り、食べ続けても一年から五年程度で体が維持出来ずに死亡


・弱点    脳みそ破壊でゾンビは死ぬがウイルスは死んでない。乾燥するか、栄養を取る媒体が無いと死ぬ。あと塩素消毒で弱まる


・襲う理由  感染すると体の組織を改造するため、また体を維持するために、大きなエネルギーが必要になる。そのエネルギーを補完するため襲う。草食動物も他の動物を食べ物として認定して襲ってくるが、消化できないので襲っても栄養に出来ない



『シナリオは、旧日本軍が開発したウイルス兵器です。終戦に伴い記録や兵器は封印されていたが、封印されていた場所が工事で発見された。

 生物兵器の保管容器を誤って破損。ウイルスはフリーズドライというか乾燥した粉末状態だった。口内で唾液や体液に触れることで活性化。ウイルスは感染者“ホスト”の中で急激に増加。


 翌日以降は発熱のために仕事を休み。体が変態というと語弊があるかもしれませんが、体組織が変換され死なない体になる。その際には大量のエネルギーが必要であるため、食べ物が必要。なので人間や動物を食べ物と判断し襲う。

 妻の腕を食いちぎるが、父に助けられて妻は逃げることに成功。傷口からウイルスが侵入し妻も感染。父にも多くのウイルスが付着。手や体を洗ったが完全には防げず、その手で食べ物を触って口内から感染。また警官や救急隊員、看護師も感染し、被害が拡大。


 感染者が家に、仕事場に、町中に移動することで感染が拡大。直接かまれなくてもウイルスが付着することで、気が付かない間にウイルスの活動エリアが拡大。感染者の排泄物にもウイルスが含まれるので、それを清掃した人も感染する可能性がある。


 また犬や猫などの動物にも感染するため、動物が急に襲ってきて逃げ切れずにケガを負い、感染するケースも発生。

 何が何だか分からない内に被害が拡大していく。感染してなくても体にウイルスが付着した状態で逃げて、逃げた先で感染して、そこからも感染拡大。

 あとはその繰り返しということで。何か質問がありますか?』


「はい。ちなみにそのウイルス兵器は、どんな目的で作られたのですか? そんなに強力なら開発中に事故が起きて同じことがありそうですし、有効なら利用されていそうですけど?」

 日笠君は、するどいな。


『目的は死なない体です。例えば銃で撃たれたとして、傷口が塞がる。筋肉が欠損したとしてそれが急激な速度で細胞が活性化して治る。最終的には相手に接近して殺す。

 銃で撃たれても恐れずに向かってくる姿は相手に恐怖を与えるし、それに普通の人間なら倒せるはずの武器でなかなか死なない。そうなると兵隊に持たせる武器を考え直さないといけなくなるとか。


 無事故だったのは、研究機関なので慎重に行っていた。としか思いつかないですね。

 有効と判定されなかった理由は、知能が低下するので制御が効かない点と、相手にも感染するので、制御が効いたとしても相手にも死なない兵隊が出現するので意味がないという感じかな』


「なるほど、筋が通ってますね。それにウイルスだと目に見えないし、気が付かずに拡大ってのもあり得ますね。感染しても直ぐに変化しないので、その間に感染者やウイルスが遠くまで広がると。倒しても血液やゾンビの肉体にはウイルスが残っていて、そこで周囲に拡散するということですか。

 でもそれってゾンビなのですか? 死んだ人間が動き回るというより、狂犬病とか病気のような気がしますけど」


『確かに、死んだ表現が出てなかった。普通なら死ぬような攻撃を受けても死なないで襲ってくるから、ゾンビっぽいだけで、ゾンビじゃなかったね。ちょっと考えが足らなかったな。

 多分どうしても死んだ人間が動き回るっていうのが納得しきれなかったんだろうな。申し訳ありません。まあこれは反省点として、みんなで考える悪ゾンでは、死んだ人間が動き回る表現を入れるようにしましょう。

 今回であれば変態する時に、心臓が止まるとか、そんな感じの説明を入れるかな?』


 山田さんが手をあげているので、発言を促した。


「っすっすいません。あの、どうして寿命が短いのですか? あと、脳みそを破壊すると活動しなくなるのでしょうか?」


『欠損した場合、回復をするために体の細胞が急激に増殖します。欠損しなくても体の細胞が急激に増殖というか生き死にを繰り返すようになるので、細胞としての限界を迎えて活動が出来なくなる。よって寿命が早まるという考えです。

 それと脳みそを破壊すると、体の器官に対して命令が出せずに活動不能になります。しばらく肉体は生きていますが、栄養が取れずに活動が停止します』



 大体質疑応答が終わったので、続いて“ななるゾン”の説明を行った。



・感染原因  最先端医療、癌(悪性腫瘍)の治療


・感染手段  癌治療を受けた人のみ


・感染先   癌治療を受けた人のみ


・五感    視力と聴力有り、しばらくすると視力は弱くなる。目が濁るしピントが合わなくなる


・襲う相手  動いている動物、ゾンビ同士で襲いあうケース有り


・エネルギー 自身に蓄えられた脂肪とか筋肉とか


・ステータス 制限が外れて多少強くなるが、時間経過とともにエネルギーが切れて弱体化する。元の人間のスペックによるので、足が不自由な方が感染しても不自由なまま、年寄で筋肉が弱い場合は弱いまま


・寿命    強いのは一週間、動けるのは二週間、生きてるだけなら一か月位、肥満は多少長生きゾンビになる


・弱点    特定の箇所はないけど、体が欠損すれば弱くなる。頭を破壊すると体は意味不明な動きを行う。頭を破壊した後は外部を認識できないので脅威は低くなる。

 既に多臓器不全で、臓器は有効に機能していないが、万が一臓器が有効に活動している状態であったとしたら、それを攻撃すれば能力ダウンにはつながる


・襲う理由  元々は癌細胞を駆逐するための細胞であったが、駆逐するという目的で脳が上書きされて、生きている(動く生き物)を襲う



『シナリオは、癌の治療方法です。癌は悪性の腫瘍で、細胞が自律制御出来ない状態で増殖することで体力を消耗したり、臓器に転移して臓器不全にしたり、そんな病気だと思います。WIKI調べですけど。


 悪性の腫瘍、まあ腫瘍細胞ですね、もともと体にはおかしなものを排除するというか防ぐような免疫細胞というものがあります。

 その免疫細胞の活動を強化させる薬を開発した。癌細胞を攻撃し、役目が終わったら無害になる予定でした。

 しかし、無害であった治療用に強化した免疫細胞が、変異した癌細胞によって侵されてゾンビ細胞となり、増殖するようになった。


 その際に免疫細胞にインプットされていた癌駆逐命令が、生きているものへの駆逐要求となって、人や動物を襲う。体は多臓器不全になっており、臓器は有効に活動していないけど、筋肉とかは動き続けるって感じかな。

 こちらは治療されていない人には感染はしないので、ゾンビになるのは治療を受けた人だけになります。


 潜在期間が長いため、多くの人がこの治療を受けてゾンビ予備軍となっています。ゾンビの原因に気が付けず、どこで誰がゾンビになるのか分からないため、対策が取りにくい。発症して暴れ始めると周囲の人に危険度が増す。

 何か質問はありますか?』



「確かに何とかなりそうな感じですね。感染源も特定の治療を受けた人だけなら大したことが無さそうですし、ゾンビに襲われても感染しないってのは斬新ですよね」

 日笠君からは、なかなかの好感触を貰えたぞ。山田さんが手を挙げているので発言を促す。


「すっすみません。確かにそれだと何とかなる気がします。発病するまでの潜伏期間はどれくらいを想定していますか?」


『1年から5年くらいかな』


「だっ、だとすると、今の時点でその治療が行われていない場合、治療を認可するまでの期間と試験的な治療が始まって、本格的な治療方法として浸透してから発病するまでの期間が掛かりすぎるので、想定していた時期のゾンビ像には合わない気がします。

 発病までの期間を短くしたほうが良いかもしれません。すみません」


『なるほど、確かにその通りですね。私の脳内では、動物実験では気が付かなかったけど、人になって初めて気が付いたという感じにしたかったので、発病までの期間はあんまり短く出来ないんだよねえ。

 実験時には癌細胞が再活動するケースや攻撃的になったケースもあったけど、ケースとしては稀で問題無いと判断されて、人への治療が始まって、実績が増えて多くの人が治療したってストーリーだったからなあ。

 スーパーコンピュータの予想時期にあう、ゾンビ像じゃないと駄目ってことですね。ちょっと盲点でしたね。課としての案を作るときには、時期にあうゾンビ像にしましょう』


「念のため、そのような治療が開始されていないか確認しませんか? 万が一という事もありますし、それに治療が始まっているなら、そのケースでも想定がおかしくない、と言えるかも知れません」

 日笠君は、まじめだな。


『そうですね。後でみんなのケースを聞いた後に、追跡調査が必要な項目があったら、それを調べるのも仕事にしましょう』


 山田さんが手を挙げているので、発言を促す。


「あっあの、ゾンビになる人は、どれくらいになる想定なのでしょうか? 少なすぎると壊滅的なダメージを及ぼす病気にならないのではないでしょうか? すみません」


『確かにその通りですね。新たに癌と診断された方の人数ですが、罹患(りかん)全国推計値と言います。罹患とは、ある病気と新たに診断された数です。

 2年前の2028年度の癌の罹患調査では、約80万例でした。現在の人口は約1億1600万人なので、145人に1人が癌患者になっています。また世界でのガン患者数は2200万人と言われています。


 新しい治療法を受けれる人の割合がどれくらいかにもよりますが、仮に半分でも年間40万人です。それが数年続いていれば……、例えば3年間で120万人がゾンビ化される人を作り出しと思うと大きなダメージではないでしょうか』


「っりょりょうかいしました。でも5年以内に、多くの治療事例と発症例は出ないかもしれませんね」


『確かにその通りですね。ありがとうございます。繰り返しになりますが、課としての案を作るときには、5年以内に発生するゾンビ像を作り上げましょう』

襲う理由も入れることになりました。必須ではないのですけど、あったほうがわかりやすいので。


課長は、ゾンビが存在する理由を納得しきれていないようです。

納得するゾンビ像なんてなかなかないですよね。と言い訳してみる。


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