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業務内容と自己紹介

2017/5/27 誤字と、課長のセリフを『』に変更、程度の修正

『本当の目的はゾンビ対策です』


「へ?」

「え?」

 

「いやいやいやいや、ゾンビって何ですか! 訳が分かりません。こんな状況で冗談は止めてください。え? ゾンビって……ゾンビ?」

 日笠くんが慌てながら質問してきた。山田さんも日笠くんの質問に合わせて首を小刻みに頷いていたけど、顔を斜めに傾けて考えているようだ。

 そんな状態でやっぱり頷こうとして顔が斜めの状態で上限に動いている。それどうやってるの?


『驚くのも無理はありません。ゾンビはゾンビです。死人が蘇ったりする、あのゾンビです』

 二人とも信じられないって顔で私を見ている。まあ私だっておかしいと思っているんだから、その感情は理解できる。


「いやいやいやいや、ゾンビですよね? 何でゾンビ対策なんですか? 意味が分かりません。どうしてゾンビ対策なんですか?」

 日笠くんの質問に、やっぱり山田さんは小刻みに頷いてる。


『山田さん、パンデミック対策室の一課と二課の説明をお願いできますか?』


「は、っはい。パッパ……」



 パンデミック対策室は、新型インフルエンザ亜種の対策のため、国家の総力を挙げて設立した部署だ。対策が適切に行われなければ大惨事になる可能性がある。

 一課は、感染の予防に関する様々な業務を行う。ワクチンの開発と量産に向けた工場や材料の準備、配送計画や保管場所の用意、検疫の手段や検疫装置の開発、国民への啓蒙活動なども範囲に含まれている。

 二課は、実際にパンデミックが発生した場合の対策を行う。抗ウイルス薬の開発や生産と備蓄、配布計画、経済活動が停止した際の食料や生活に必要な物資の配給計画、電気、ガス、水道、通信などのライフラインの確保などが主な業務になる。


「……です」

 山田さんの説明が終わった。説明を引き継ぐ。



『はい。そしてこのパンデミック対策室が設立判断には、スーパーコンピュータの演算結果が大きな割合を占めます……』



 スーパーコンピュータに算出させたところ、五年以内に新型インフルエンザ亜種のパンデミックが起きる可能性が50%と出た。

 想定される最大の被害は、国内だけで死者一億人以上、全世界で四十億人以上、今の政府や生活は崩壊し、人類は数百年前の生活となる。

 まあ、ここまでの被害が出る確率は3%だが、もっと軽微の被害でも馬鹿にならないほどのダメージを受ける可能性がある。

 今までもパンデミックの対策をしてきた。しかし、法律の範囲内、縦割り行政の弊害で遅々として進んでいなかった。今回は本腰を入れて国家として対策を行っている。当然、世界全体でも対策を行っており、人類の危機に立ち向かうために協力体制が組まれている。



『……ここまでは公開されている情報です。しかし、気を付ける病気は新型インフルエンザの亜種だけでいいのか? 

 スーパーコンピュータに五年以内に壊滅的なダメージを与える病気を算出させたところ、他に起こりうる最大の危険性がある病気がF型肝炎で0.01%と出ました。

 この程度の確率なら問題ないと考えましたが、その次の可能性としてゾンビ0.005%と出ました。

ゾンビが発生した場合、人類全滅の可能性があります』

 一旦説明を止めて二人を見る、戸惑っているな。


「で、でも、ゾンビは0.005%何ですよね? 何でそんな確率が低いのに対策が必要なんですか?」

 日笠くんが質問して山田さんが頷く。


『二人とも出社した際に、デモと思われる人たちはどれ位いましたか?』

 

「ひゃっ百人位いたと思います」

 と、山田さん。


「もっといたような、でも多くても二百人いってないと思います」


『3月の平日、この建屋の前でデモしていた人は二百~千人位だそうです。平日昼間、ほぼ毎日これだけの人数が集まる事は滅多にありません。

 そして昨日の全国同時開催デモは、テレビのニュースでも話題になっていますが、参加人数は百万人と報道されています。国民は不安で仕方がないのです。


 ゾンビの件は公開していませんが、どこかで情報が洩れたり、他国の演算結果で公開されることもあるかも知れません。

 低確率ながらもこの候補が出てしまったので、公になった際に国民の不安が更に高まり、最悪暴動が起きる可能性もありえる。


 人類の危機を迎えている最中に、暴動対策のような余計な事に関わっている場合ではない。

 万が一ゾンビ説が出た場合に備えて、パンデミック対策室にゾンビ対策を行う第三課が設立された訳です。公にゾンビ課などと言えるわけもないので、本当の目的は公開していません。

 何か質問事項はありますか?』


 私の説明を聞いた日笠くんが口を開く。


「なんとなく設立理由は分かりましたが、具体的にどのような成果を出せば良いのですか? ゾンビなんて存在しないものに対して、対策が取りようもありません」

 相変わらず日笠くんの質問に対して、山田さんは小刻みに頷いてる。


『そうですね。ごもっともな意見です。この課がゾンビ対策として求めれている業務内容は……、何もありません』


「はあ?」

「えっ……」


「いやいやいやいや。おかしいでしょ。何で課を設立したんですか? 意味が分かんないです」

 日笠くん、さっきなんとなく分かったって言ってなかったっけ? まあいいか。


『先ほど説明しましたが、万が一ゾンビ説が出た時に、ゾンビ対策をしていたというアリバイ作りのために私たちが居ます。

 それに日笠さんが言われたように、ゾンビなんて存在しないものに対する対策が、まともに取れる訳がありません。なのでゾンビ対策に対しての成果は求められていません』


 二人とも呆れているというか、脱力しているように見える。折角、国家いや人類の危機に立ち向かう仕事に携わると思っていたのに、何の成果も求められてない閑職につくとは、本当に可哀そうだ。


『仕事としては、パンデミック対策室の第一課、第二課のシュレッダーごみ溶解作業に立ち合うだけです。これが毎週一回金曜日になります。初回は3人で行きますが、次回以降はお二人にお任せします。金曜日に有給休暇などを取る場合は私が行きますので、事前に申告と重複しないようにスケジュール調整をお願いします』

 

「それだけ、ごみを捨てるのを立ち会うだけ? 仕事はそれだけなんですか?」


『はい。求められている業務はそれだけです』

 日笠くんが、せつない表情で質問してくるが、本当にそれだけだから仕方がない。私の回答を聞いて席にがっくりと座る。山田さんも深いため息を出している。部屋を苦しい雰囲気が漂う。


『一応私が考えている業務内容がありますが、まずは自己紹介をしましょう。日笠さんからお願いしていいですか?』


「……はい。日笠啓です。厚生労働省でした。……よろしくお願いします」

 一旦言葉を区切って、私を見た後に山田さんにも視線を送り、更に続ける。


「課長はご存知だと思いますが、先日とある失敗をしまして、それが切欠でここに異動になったと考えます。皆さんもパケモンGOはご存知ですよね?」

 パケモンは大人気アニメ&ゲームだったパケットモンスターの略で、ネットワーク通信の中から生まれるモンスターだ。スマホ用アプリが昨年販売され話題になっている。

 世界中のあらゆる場所にパケットモンスターが潜んでいる。実際の通信を受信してモンスターが生まれるが、その種類は通信の内容によってランダム性があり、レアは暗号化強度が高い通信ほど確率が増す。いつも同じ場所で同じモンスターが取れる訳ではないので、レアモンスターの入手は相当な運が必要になる。

 日笠君は、レアモンスターの発生を示す高い通信の場所がすぐそばに発生したので、その場所に向かったところ、大臣の執務室であった。


「執務室のドアが開いていて、中をみたら誰もいなかったから良いかなーと思い、モンスターをゲットしたのですが、奥の会議室から大臣や局長らが出てきて、丁度そのモンスターゲットの特殊効果が表れて……。

 その後、上司から物凄く叱られました。極秘通信を傍受しているために執務室に勝手に入った、と疑われても仕方がない行為だと。パケモンGOには暗号解読機能など無いため、単純に業務時間中にさぼっていたのと、用もないのに遊ぶために執務室に入ったことにだけ、注意を受けました」

 クビにする程の悪事ではないが、パンデミック対策室第三課に考えていた課員が相次いで退職したので、欠員確保を探すにあたって、真っ先に目をつけられたと思われる。局長級クラスに要らない人と覚えられたので、そりゃもう間違いなく、直接聞いたわけでもないけどね。


「ゲームとか子供の頃にやった程度で、つい話題になっていたので始めたらハマってしまって……。でも今は反省しており、心機一転、頑張りたいと思っています。いました……。よろしくお願いします」

 最後は力なくお辞儀をした、私と山田さんは拍手をし、日笠君は席に着いた。


「では次、山田さんお願いします」

 すごい勢いで席を立ち、深く、早くお辞儀をして、話し始めた。


「よっよよろしくお願いします。山田です。資源エネルギー庁にいました。微力ではございますが、頑張りたいと思います。よろしくお願いします。すみません」

 再度深くお辞儀をしたので挨拶が終わったのであろう、拍手をし歓迎した。


『次は私だね。課長の水谷です。今後の私の業務方針にも関係してくるので、最後にさせてもらった。

 私は出世したかったんだ』

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