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パンデミック対策室第三課設立

2017/5/27 誤字と、課長のセリフを『』に変更、程度の修正

 2030年4月1日、午前7時30分。今日から新しい職場での仕事が始まる。

 建屋[中央合同庁舎第5号館]には複数人の職員がおり、大体はエレベーターに向かう。私の他にも階段利用者がいたが上に昇って行いった。

 私は地下三階まで降りて廊下を歩くと扉の前で一旦止まる。証明証をかざすとチップが読み込まれて扉が開く、さらに進み、執務室の扉の前で証明証を読み込ませて執務室に入る。始業開始は9時なので、まだ誰も出勤していない。

 

 備え付けのロッカーに証明書をかざして、暗証番号を入力する。ノート型のパソコンが複数台おかれており、そのうち自分に割り当たれた一台を取り出して、机の上に置く。

 ネットワークケーブルをノート型パソコンに差し込む、USBポートに認証キーを差して電源を入れる。

 このパソコンはシンクライアントのため、パソコン内にデータは無く、すべてのデータはサーバに保管される。ログイン認証を行った後、自分専用のデスクトップ環境が表示された。

 メールを開くが今回の仕事用に用意された環境であるため、事務的な連絡が数件入っているだけだ。それも読み終えて始業時間を待つ、正直気が重い。辞めたいが辞めたところで他の犠牲者が出るだけだし、機密保持のため私の命だって危ない。はぁぁ~、深いため息が出る。

 自分のタブレットPCをインターネットに接続して、ヤホーニュースを適当に読んで暇をつぶす。シンクライアント側はイントラしか閲覧できないので、WIFIポイントを作ってもらった。


 午前8時30分、新しい課員の一人が出社してきた。


「お、おっは、おっはようございます」

 少しどもりながら、必死な角度でお辞儀してきた彼女は、山田恵瑠《やまだえる》、年齢は二十七歳だ。前の職場で上司のパワハラによって休職。

 その後、別の職場に異動になったが環境に馴染めず、浮いた存在になっていた。更にこんな職場に配属されて可哀そうに。


『おはよう。私が課長の水谷です。始業は9時からなので、それまでは楽にしていてください。

 あと一人課員がくるので、三人そろった時点で自己紹介と仕事に対する説明をしますね。開いてる席ならどこでも構いませんよ』


「はっはい」

 返事をしてドアに近い席に座った。職場には私の机が一つと、課員用の4つの机で島を構成している。


 自己紹介を後にしたので、黙ったまま時間をつぶす事になり、空気が……気まずい。山田さんはペットボトルのお茶を飲んでる。私はヤホーニュースを引き続き読んで暇をつぶしている。


 午前8時50分、もう一人の新しい課員が出社してきた。良かった。これで空気が変わるぞ。


「おはようございます」

 パッと見、好青年でハンサムな方だと思う。とてもあんな事をしでかしたようには見えない。彼は日笠啓《ひかさけい》二十八歳、ちょっとやらかした事でこの部署に急遽異動することになった。


「お、おはようございます」

 山田さんは、ガバッと立ち上がり、深くお辞儀をして挨拶している。そんなに一生懸命挨拶しなくても。

 まあ全員揃ったし、始業時間前だけど言わなければ成らないことがあるので、まずはそれからだな。


『おはようございます。課長の水谷です。お二人に大事な話があります。ここの業務内容についてです。私から業務の内容を聞いたら、もう後には戻れません。正直私はこの職場を、業務内容を好ましく思っていません』


「え?」

「……」

 二人とも、戸惑っているが説明を続ける。


『新たに施行された機密保持契約にサインをしている事は確認していますが、今ならまだ私の判断でこの業務を断ることが可能です。

 ただし、その場合機密が守れないと私が判断したという事で、今後の評価や職歴に傷が付く事になります。それでも私は、断ることをお勧めします』

 二人とも困惑してるな。そりゃそうだろう新しい職場に来たら、課長がやる気がないって言ってるし、辞めろって勧めるんだから。


「ちょ、ちょっと待ってください。理由も聞かずに辞めれませんよ。ここでの仕事は何なんですか? パンデミック対策室のセキュリティ担当じゃないのですか?」

 日笠君の質問に合わせて、山田さんも頭をコクコク頷いている。


『業務内容を聞いたら、もう後には戻れないという事です。なので説明前に最後の確認です。判断が出来ないというのであれば、今日一日はお休みを取っていただいて、明日また判断という事でも構いません』

 一週間休みを与えたところで、判断材料が少ないこの状況で、決断が変わるとも思えないし、今日一日考える期間があればいいだろう。

 二人とも、それぞれ考え込んでいる。しかし日笠君から、


「何にもわからない状態で、判断しろと言われても判断できません。既に機密保持契約だって結んでいます。既に経歴には傷が付いていますが、私はこの職場で、パンデミック対策室第三課で、やり直すというか、頑張るつもりで来たんです。

 どんな大変な仕事でもやります。なので話を聞かせてください」

 日笠君はやる気があるという事か、やる気があるのにこんな課にきて可哀そうにな。


「わっわたしも、この職場で頑張るつもりで来ました。いま日本を、いや世界に貢献出来る仕事だと思って。頑張りますので、業務内容を説明してください」

 山田さんもやる気があるのか。まあそうだよね、私も逆の立場ならそういうよな。


『念のためですが、日笠さん、機密保持契約の概要を言ってみて下さい』


「はい。秘密漏洩の疑いがあると判断された場合、裁判所の令状無しに逮捕、拘束されます。期限も手段も制限がありません。逃亡の恐れや、静止を聞かず目の前で情報漏洩を継続している場合、銃による発砲もありえます」


『だいたいそんな所ですね。総理または官房長官の指示で逮捕、場合よっては殺される可能性がある、しかも証拠も不要。そんな馬鹿げた臨時法が通ってしまった。共謀罪も呆れたけど、これは更にその上に行く悪法です』

 二人の顔をみると、真剣であること伝わってくる。


『そうですか。多分説明するまでは納得してもらえないですよね。ただ話したらもう後には戻れませんよ。それで良いですね?』

 二人とも頷いているので、一応前置きしたし説明するしかないかな。


『パンデミック対策室が結成された理由はご存知ですよね? 日笠さん簡単に説明出来ますか?』


「はい。昨年から今年に掛けて、東南アジアを中心に新型インフルエンザ亜種の感染が約五百件確認され、致死率八割。感染ルートは鳥から人であり、人から人への感染は確認されていないが、人から人への感染も数年以内にあり得ると。

 そこで官民一体で特別対策室が開設された。でいいですよね?」


『はいその通りです。この課は表向きには、パンデミック対策室のセキュリティを担当するとに成っていますが、実は違います。本当の目的はゾンビ対策です』


「へ?」

「え?」

課長の脳内では「日笠君」なんだけど、話すときは「日笠さん」で話してます。

課長がいた職場では、課員は「さん」で呼ぶ習慣があったようです。

分かりにくいから、脳内も「さん」で統一した方がいいのかな。


どもっている人を馬鹿にするつもりはありません。

パワハラの影響でそのようなことになる場合があります。

パワハラダメ。絶対。


それと長時間労働もダメ。見ていて可哀そうになる。毎月2人分くらい働いている人がいる。

皆さんも自分の身は自分で守ってね。

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