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Go to hell!   作者: 沖ノ灯
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[5]

オッサンの指示で部屋を片付けさせられている則幸は


「そういや、あんた誰なんだよ?」


「坂下家の祖先ですね。」


則幸は他界した祖父の顔を思い浮かべた。

真っ白の髪の頂点は薄く地肌が見えていた。

眉毛や耳毛や鼻毛だけ黒くて、年老いていても妙に力強さがあった。

しかし、今見ているオッサンは祖父とは似ても似つかない風貌だ。


「ゆるキャラみたいって思ったね?」


掃除機のノズルを動かしながら則幸はうなづく。


「祖先の誰かではなくて集合体というほうが伝わりやすいかな。」


部屋の真ん中、つまり髪を振りみだした女性の霊が浮かんでいる下の床に何も置いてない状態にしたいらしい。

大体片付くと、必要な物を揃えるように言われた。


できれば炊きたてのご飯。

新鮮な水。

お線香と、線香立て。

そして鏡。


「鏡なら、この部屋にもあるよ。」


「おじいさんの坂下則一が持ってきた鏡あるでしょう?」


しばし立ちつくして則幸は考えた。

日没を迎え、部屋の電気をつけると天井に浮かんだアレは透明とまではいかないが少し薄くなった。


「一階の仏間にあるんじゃないかな。」


則幸は、その一言で祖父とのやりとりも鮮やかに思い出した。

小学二年の時に、新築で建てられた家に則幸の部屋も作ってもらって喜んでいると、祖父が古い鏡を持ってきて、この部屋の柱に掛けていったのだ。


「おじいちゃん、釘打ちながら何か言ってたなぁ。」


まだ両親は帰って来ていない。

仏間をあさっていれば何か言われるに違いないので、手早く探し始めた。


「壁の隙間にあるよ、見て。」


仏壇と壁の隙間に言われた通りに古い鏡は新聞紙に包んで立てかけてある。

思った以上に重い鏡を大切に抱えて部屋に戻った。


「鏡少し磨いて欲しいな。」


よくよく見るとガラスでできた鏡ではない。

鏡の裏側に教科書で見たような文様があった。

則幸は水だけで汚れが落ちる布で拭きながら、


「これ銅鏡だよね。」


オッサンは一緒に磨きながら


「そうだよ。歴史的価値以上に則幸くんにとっては大切なものだから大事にしてね。」


まつ毛が鏡に映るくらいに磨かれると、


「これくらい綺麗になれば大丈夫。さぁ始めようか。」




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