プロローグ[0]
「Go to hell!」は直訳すれば、地獄に行け、ですが、行ってしまえ、黙れなどなどスラング(下品)な言葉です。
人間関係をよくしたい方は、使ってはいけません。
アメーバブログでも、こちらの作品は連載しています。
http://ameblo.jp/indian-lotus-seed/entry-12177987319.html
夜空には、ナイフで切ったような新月。
深夜も二時を過ぎた頃。
腐臭漂う雨水配管の通路を靴音が響く。
鼻歌まじりで、歩く男の周りだけが古めかしいカンテラに照らされている。
突然の光で黒い虫やらネズミやらが逃げ惑う。
河に面して開いた雨水配管の出口で、貧相な男が懐中電灯を片手に立っている。
青白い顔の男の姿を見てとるや
「遠路はるばる、ようこそいらっしゃいまひた。」
深々と頭を下げる。
下げたままでふと足元に目をやると、男の足が消えかかっていた。
「これは、足が消えかけておりますです。」
慌てて足に触れそうになると、雨水配管から出てきた男は手にもったカンテラで貧相な男を殴りつけた。
「触るでない!これでよかろう。」
言い終わる前に足が現れ、靴へと繋がった。
カンテラで叩かれ、額に傷をつくり、ひいひい言いながらも
「申ひ訳ありません。二度と致しません。
わたくひは、小野田とお呼びください。」
しばし二人の間に沈黙が訪れる。
頭をうなだれたままだった小野田が横目で見上げると
男は何やら考え込んでいた。
「あのぉ何とお呼びすれば、よろひいのでしょうか。」
青白い顔の男は、空を見上げて、
「名前を考えてこなかったな。
青だから、青田とでも名乗ろうか。」
小野田は、さらに頭を低く下げると
「承知いたひました。
本来ならば青田様とお呼びしたひのですが、上司を様つけで呼ぶのは非常識でございますので、青田さんでよろひいでしょうか?」
青田と名乗った男は、鼻でフンと言うと
「伝えておいたように、物件の目星は付けてあるのだな?」
小野田は姿勢を正すと、醜く笑いもみ手して
「3か所ほど見つけてございます。」
「よし、すぐに案内しろ。」
小野田は少し驚くと、
「せっかくの地上でふので、お遊びには行きまひぇんか?」
青田は小野田を睨みつけると
「遊びだと?」
小野田は身体をくねらせながら
「はひぃ、地上にいらっしゃった方々は、酒を飲んだり女と遊んだりいたひますので。」
青田は火の消えたカンテラを、また振りまわし
「なんと先の者達は情けない。
遊びに来たのではない、仕事しにきたのだ。
サッサと案内しろっ!」
小野田はほとんど四つん這いになりながら、
「申ひ訳ありません、はい、すぐに案内いたひますっ!」
転げるように先へと行く小野田の尻を青田は蹴りあげる。
土手を登り、道路に出て急ぎ足で行く。
街はひっそり寝静まり誰もおかしな二人に気づかない。