魔女の日記 第四巻 4
「……惨めね。最愛の後輩に見捨てられるなんて」
と、アニマは目の前の若いアニマに話しかけた。
すると、若いアニマは顔を上げ、こちらを観る。
「貴方は……」
「アナタの将来、とでも言っておこうかしら。こっちはアナタの将来の知り合い」
若いアニマは俺と、現在のアニマを交互に見る。
「……将来の私は過去に行く魔法でも使えるようになったんですか」
「いいえ。これは私の記憶……日記を読み返しているだけよ」
アニマがそう言うと、若いアニマは納得したようだった。
俺にはどういう仕組みで会話が理解できているのかわからなかったが……まぁ、魔法のおかげなのだろう。
「……将来は、どうなっているんですか?」
若いアニマはそう訊いてきた。
「そうね……平和よ。今よりもずっと」
アニマがそう言うと、若いアニマは大きくため息をついた。
まるで、今のアニマがそうするように。
「そうですか……私の近くに、メンテはいるんですか?」
「いないわ。アナタ……いえ。私は、あの子に捨てられたのよ」
そう言われてアニマは悲しそうな顔をした。そして、そのまましばらく俯いた。
「それじゃあ……私は、これから私がやろうとしていることを、実行したんですね」
「ええ。したわ。アナタの想像する通りに、ね」
アニマがそう言うと、若いアニマは黙ってしまった。
しばらくの間沈黙が続く。
「……そろそろ行くわ。記憶と会話したって、未来が変わるわけじゃないもの」
そういってアニマは若いアニマに背中を向けた。
若いアニマは悲しそうな顔のままだった。
「あ……えっと……じゃ、じゃあな、アニマ」
俺は何を言ったらいいかわからなかったが、それだけ言った。すると、若いアニマは顔を上げ、ぎこちなく微笑んだ。
その笑顔は、俺が見たことのない程に悲しそうな笑顔だった。