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魔女の日記 第四巻 3

「……うおっ!? こ、ここは……」


「もう日記の中よ」


 と、既に隣にはアニマが立っていた。


「ここは……お前の昔の工房か?」


 見覚えのある場所だった。そこは、最初の日記で連れて来られた場所だった。


「ええ。そうね。私がかつて魔女として使っていた工房よ」


 アニマは目を細めてそう言う。


「……で、ここでは何が起きてたんだ?」


「見ていればわかるわ」


 アニマに言われるままに俺はしばらく黙っていた。すると、工房の奥から声が聞こえて来た。


「待つのです。メンテ! 貴方は間違っています!」


 その声は聞き覚えがあった……というより、先ほど聞いたことのある声だった。


「ええ。私の声よ」


 俺は声のする方を覗き見た。


「間違っていません! 間違っているのは……アニマ姉様です!」


 と、今度も聞き覚えのある声が聞こえて来た。


 見ると、そこには若い姿のアニマとメンテの姿があった。


「メンテの声ね……そう。これは、私があの子に捨てられた時の記憶ね」


「え……捨てられた?」


 俺は思わず聞き返してしまったが、アニマは何も答えなかった。


「私が? そんなことありません! メンテ……カルマは間違っています。あの子に付いて行ってもその先に未来などありません」


「アニマ姉様……どうしちゃったんですか? 言っていたじゃないですか。私達を利用するだけ利用して、道具のように扱う人間たちのこと、許せないって。それなのに、どうしてカルマ様の考えに賛同しないのです?」


 どうやら、幼いアニマとメンテは言い争っているようだった。何事で言い争っているかはわからなかったし、隣のアニマは何も言ってくれなかったので、わからなかったが。


「メンテ……だからといって、人間全てを滅ぼすなんて……間違っている以前に、そんなことをしてはいけないんです……」


「滅ぼすんじゃありません。分からせてやるんです。人間達に……私達を利用するだけ利用してきた奴等に、どちらが格上か、ということを」


 メンテはそう言って近くにあった荷物を背負った。


「……もう、アニマ姉様と話すことはありません。私は、カルマ様の所に行きます」


「……いけません、メンテ。カルマはアナタの魔宝具作成技術が欲しいだけです。アナタのことをそれこそ、道具程度にしか思っていないんですよ?」


「それでも! アニマ姉様みたいに嘘はついていません! きっとあの人は人間達を後悔させるはずです! ……だから、さようなら。アニマ姉様」


 そういってメンテはそのまま荷物を背負うと、工房の扉を開けて出て行ってしまった。


 残されたアニマは悲しそうに俯いているだけだった。

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