幻影水晶 10
「お……俺? 俺が作った? どういうことだよ? 俺は、この水晶の中に引き込まれたんだぞ?」
意外な言葉に、俺は面食らってしまった。
「……ええ。それは、この魔宝具を使用した私のせいよ。私はこの魔宝具を使用する際にあることを願ったの」
「願った? 何を願ったんだ?」
「……タイラーが、望む世界を作りたい、って」
アニマは小声でそういった。その顔は今すぐ穴があったら入りたいと言わんばかりに恥ずかしそうな顔だった。
「俺の……望む世界……」
「ええ……だから、このお屋敷も、広大なお庭も……全部アナタが望んだ世界……ってことね」
そう言われて俺は漸く理解した。
そして、アニマと同じように大きくため息を吐いてしまった。
「やれやれ……捨てたと思ったんだけどなぁ。こんな考えは」
「……タイラー? どうしたの?」
「いや……確かに、ここは俺の望んだ世界……なんだろう。きっと、俺は心のどこかで未だにこの世界を望んでいるんだ」
思わず俺は部屋の中を見回してしまった。
捨てたはずの世界……もはや、ここは俺には関係のない世界のはずだった。
それなのに、俺は未だにこの世界に惹かれている……こんな形でそれがわかるとは思わなかった。
「え……じゃあ、アナタは……」
「アニマ。お前、俺にすべてを話したか?」
「……え? すべて?」
「ああ。お前のすべて、だ。確かに日記をお前は俺に見せている。だけど、俺はお前の全てを知らない……そうだよな?」
「え、ええ……そうよ」
「だったら……この世界のことは、聞かないでくれ。頼む」
俺がそういうと、アニマは全てを理解してくれたようだった。
「……ごめんなさい。私……」
「いや、別にいいさ。何年の前のことだし……ああ、お前からしてみれば、ほんの少し前、か」
「……ホントに……ごめんなさい……」
と、なぜかいきなりアニマは俺の隣で泣きだしたのだった。




