幻影水晶 5
部屋を出てから、階段を降り、そのまま進むと、食堂だった。
メイドは俺に座れと促しているように、椅子をひいている。
その前には、豪華な食事が並べられている。
「……え、えっと。アンタが作ったのか」
「はい。ワタクシの御仕事ですから」
メイドはなぜか嬉しそうにそう言った。
このメイド……やっぱり何か知っているような気がする。
俺は椅子に座り、豪華な食事を前にした。
そうして初めて、俺は相当腹が減っていることに気付いた。仕方ないので、そのまま俺は食事を開始する。
「……えっと、アンタ、この屋敷で何年くらい働いているんだ?」
俺は食事をしながら、不自然にならないように訊ねてみた。
「長い間です。若様とずっと一緒ですから」
「俺と? こんな広い屋敷なのに、他のヤツはいないのか?」
「はい。必要ありません。ワタクシと若様だけいれば良いのです」
メイドは満足そうにそう言った。
この広い屋敷に、俺とこのメイド二人……やはりおかしい。
そもそもここはどこだ。やはり外に出て一度確認する必要がある。
「あ……ところでさ。ここは……どこだっけ?」
我ながら変な質問だと思ったが、俺はとにかく訊いてみた。
するとメイドも怪訝そうな顔で俺を見る。
「はい? どこ、と云いますと?」
「あ、いや……ちょっと外に出たいんだけど」
「お庭をお散歩されたいということですか? ワタクシもご一緒致します」
「あ、いや……まぁ、いいや」
とにかく外に出て一度確認する必要がある。
俺はそう思ってメイドの言う通り、庭に出ることにしたのだった。