幻影水晶 2
「アニマ? ……アニマ?」
俺はマジック・ジャンクに着くと、アニマの名前を呼んだ。
しかし、アニマの返事はない。
「……アニマ、いない」
フォルリは不安そうに俺の隣から店の中を見回す。
「ふむ……おかしいのぉ。あの主人が店を留守にするのは、あり得ないと思うのじゃが……」
「はぁ? なんでだよ?」
「当たり前じゃろう。主が来るかもしれんのじゃ。留守にするわけがない」
セピアははっきりとそう言った。俺が来るかもしれないから留守にしない……ちょっとよくわからなかった。
「……ちょっと店の奥まで見てみるか」
俺はそのまま店の奥に入った。すると、いつもアニマがつまらなそうに頬杖をついている机の上に、何かが乗っているのが見えた。
「……なんだこれ?」
「タイラー、それ、何?」
俺とフォルリは思わずそれを見た。
それは、水晶玉だった。美しいガラスでできているらしいそれは、なんだか不思議な魅力を持っていた。
なんというか……見ているだけで、その中に引きこまれそうな感じである。
「水晶……なんだか魔女っぽいな。まぁ、アニマは魔女なんだが」
「うん。フォルリも、これ、見たことない」
俺とフォルリはまじまじとそれを見つめていた。
「……ん? なんだこれ? 水晶の中に何か見えるぞ?」
俺は水晶の中に何かが映っているのに気がついた。
それは、街のように見えた。街……見覚えのある街だ。
懐かしいような、それでいてあまり思い出したくないような……
「な、何をやっておるのじゃ! 主!」
と、そこへセピアの叫び声が聞こえて来た。
「え? ああ、この水晶。アニマの魔宝具か?」
「早くそれを捨てるんじゃ! それは――」
血相を変えてそう叫ぶセピア。
しかし、既にそれは遅すぎた。
その水晶はいきなり輝き始めたかと思うと、そのままその光で、俺達三人を包み込んだのだった。