幻影水晶 1
「それで、しばらくあの店主の店には行ってない、というわけじゃな」
朝食時、セピアは責めるような目つきで俺にそう言ってきた。
魔物討伐から既に一週間ほど経った。
俺……というか、フォルリはアニマの店に行くのをなんとなく怖がっていた。
さすがに俺がアニマの店に行かないのを不審に思ったのか、セピアが俺に訪ねてきたのである。
そして、結局俺は洗いざらい、セピアに話したのだった。
「ああ、そうだよ。別にいいだろ。アイツの店に行くのが義務ってわけじゃねぇんだから」
俺がそういうと、セピアは苦い顔で、今度はフォルリを見る。
「そうかもしれんが……フォルリ。お主からは何も言わなかったのか?」
セピアにそう言われると、金髪長身の少女は申し訳無さそうにセピアから目を反らす。
「……タイラー、私のこと心配してくれて……」
「別にそういうわけじゃねぇよ。ただ、アニマがお前のこと睨んでたし……どうせ、アニマのことだ。もうかれこれ一週間だし、忘れてんだろ?」
「一週間……一週間も、あの店主を放っておいたのか?」
セピアは信じられないという顔で俺を見る。
「な、なんだよ……悪いのかよ」
「まったく……主よ。よいか? 店主も言っておったが、魔女というのは不安定な人種なんじゃ。とにかく、人の愛情や憎しみ、そういう感情に対して過剰な程に敏感なんじゃよ。あの店主は主に対して特別な感情を抱いておる。それなのに……」
「はぁ? アニマが? ったく……朝からつまらん冗談だ。わかったよ。今日はマジック・ジャンクに行くよ」
「あ……タイラー。私も同行する」
「……我等も行くぞ。なんだか危険な感じがする」
なんだかよくわからないが、その日、結局俺とセピア、そして、フォルリがマジック・ジャンクに同行することに鳴ってしまったのだった。




