人形屋敷の攻防 4
「……タイラー」
「あ? なんだよ、フォルリ」
「……ホントに、実行する?」
俺は既に何度もフォルリに言った。
しかし、フォルリは不安そうな顔で相変らず俺のことを見てくる。
「……大丈夫だ。いいか? 俺は今まで何度と無く、ピンチを切り抜けてきた。しかも、それは大抵逃げることによって、だ。だから、今回も間違いなく俺は逃げ切って見せる」
「で、でも……」
「安心しろ。それより、お前はなんとかして俺が頼んだ『アレ』をキッチンで見つけてきれくれ。きっとあるはずだ。わかったな?」
俺がそう言うと、フォルリは未だに納得できていないようだったが、渋々俺に対して頷いた。
「よし……じゃあ、行くぞっ!」
俺は思いっきいドアをけって外に出た。
「おい! 化け物メイド! いるんだろ!?」
俺がそういうと、少し前方を俺を探してウロウロしていたであろうメイドは、瞬時に俺の方に顔を向けた。
「……ソコニイタノネ」
「へっ。お人形如きが……俺に追いついてみせろ!」
俺はそのまま思いっきり走りだした。メイドは俺の思惑通り、俺を追いかけてくる。
とにかく俺は走った。メイドに追いつかれないように。
背中から風を切ってナイフが飛んでくる。俺はなんとかそれを避けつつ、走り続ける。
そして、先ほど俺が入った日記があったあの部屋に俺は飛び込んだ。
そのまま近くにあったタンスを倒し、ドアを塞ぐ。
とにかく部屋にあるものはドアの前に運び、バリケードを作って時間稼ぎをすることにした。
「ムダヨ……ソンナコトヲシテモ、スグニアナタヲコロスワ……」
確かに、沢山のバリケードを作っても、メイドはバンバンとドアを開こうとしている。それこそ、ドアごとぶち破らん勢いだ。
「クソッ……間に合ってくれよ……」
俺はそう祈りながら、チラリと日記の方に目をやった。
ナイフが突き刺さったままの日記を手に取り、もう一度日記を見なおしてみた。
「……ん? 最後の頁に何か書いてあるぞ?」
落ち着いて今一度それを見てみると、そこには殴り描きしたような字で文章が書いてあった。
『タスケテ……ワタシが私でなくなっていく……お人形に騙された……私ハ……私ハ……人形……ナノ?』
その文章を読んで俺はなんとなく妬まし人形の正体が分かった気がした。
丁度其の時だった。しびれを切らした人形がバリケード毎破壊して、部屋に入ってきたのは。