人形屋敷の攻防 3
「な、なんだよ……これ……」
俺は思わず、ふらつきながらも、なんとかその場に持ちこたえた。
「……タイラー、とりあえず、アニマを下ろして」
フォルリに言われて俺はアニマを背中から下ろした。
それから落ち着いてみると、やはり想像を絶する光景であった。
周りには白骨だらけ……先ほど俺が踏んだのも、どこかの骨の一部のようだった。
「……これ、全部、あのメイドがやったのか?」
「……おそらく。あのメイド……いや、魔物の仕業」
と、いつのまにか人間の姿に戻っていたフォルリが俺の隣に来てそう言った。フォルリも俺と同様、目の前の光景に驚愕しているようだった。
「……なんで、アイツはこんなことを?」
「推測すると……あの日記には、少女、動けないと書いてあった。あの少女は手足が欲しかった……自分のではなく、他人のよく動く手足……」
俺はそう言われて納得した。能く見れば、すべての白骨死体は、手足がないのである。
「恐ろしいな……これが魔物かよ」
「魔物……女性の方がなりやすい。女性特有の感情、関係する」
「女性特有の感情?」
「そう。愛や恋……それに代償魔宝具が反応して、魔物、できる」
フォルリは苦々しい顔をしてそう言った。
確かに……しかし、ここまでのことをしてしまっては、最早人間ではないというのは納得できる。
「しかし……どうすればいいんだ? フォルリ、アイツを倒せるのか?」
「……残念ながら、フォルリの魔力、アイツを倒すほどではない。アイツ倒せるの、アニマくらい」
「そ、そうか……じゃあ、アニマが起きるまで待つしか……」
「それは、期待できない。アニマ、起きるまで数日かかるかも……」
「ま、マジかよ……どうすればいいんだよ……」
俺は頭を抱えて思わずその場に座り込んでしまった。
「……魔力でなければ、倒せる。物理的な強い力……」
「そんな力があるかよ……アニマみたいな火力を一気にアイツに浴びせるなんて……ん? 待てよ……」
と、俺はそこまで言ってから、通常の俺ではおおよそ思いつかないであろうことを思いついた。
「タイラー、どうしたの?」
「……フォルリ。これはもしかすると勝てるかもしれないぞ」
「え? どういうこと?」
キョトンとするフォルリ。勝率は低いが……俺にはこの方法しかないように思えた。
「……フォルリ、なんとかして、この屋敷の台所、探してきてくれ」
相変らず戸惑い顔のフォルリに、俺はそう言ったのだった。