人形屋敷の攻防 1
「う、うおぉぉぉ!?」
俺は思わず絶叫してしまった。
しかし、メイドはそんな俺に構わずナイフを手にして襲ってきた。
「タイラー! 手、前に!」
フォルリの声を聞いて、俺は反射的に手を前に出す。
すると、ものすごい水流が手から放出され、メイドを壁にたたきつけた。
「お、おお……」
「今のうち! 逃げて!」
フォルリの言葉で俺は我に返ると、そのまま部屋を飛び出した。
「や、ヤバイ……アイツが妬まし人形……魔物だったのかよ……!」
俺は全速力で廊下を走った。
「おそらく、あのメイド、日記の作者。妬まし人形に、魂と顔、渡してる」
「魂と顔……他の部分は!?」
「……おそらく、探している最中」
俺はそのまま階段を降り、応接間に向かった。
「あ、アニマ!」
幸い、アニマは無事だった。だが、未だに眠っている。
「おいおい! 肝心な時になんでまだ寝てんだよ!」
俺はアニマの肩を揺さぶるが、アニマはまるで起きる気配がない。
「タイラー。アニマ、おそらく、眠らされてる」
「眠らされてる……誰に?」
「あのメイド、お茶、何か混入した可能性、あり」
言われて見ると、メイドが出したお茶を、アニマは飲んでいた。
それに睡眠薬のようなものが入っていれば、さすがのアニマも目覚めるのは難しいわけだ。
「そうか……クソッ!」
俺は仕方なくアニマを背負って、そのまま玄関に向かった。
しかし……扉は開かなかった。
「はぁ!? どうなってんだよ! フォルリ!」
俺は手をかざす、フォルリの水流が手から放出される。
しかし、扉はまるで傷付くことはなかった。
「な、なんでだよ……この屋敷、普通の屋敷じゃねぇのか!?」
「……魔宝具、魔力持つ。人間と魔宝具の融合した魔物、魔法に似た力、使える」
「……ってことは――」
「……ソウヨ。アナタタチハ、ワタシノオウチカラ、デルコトハデキナイノ……!」
と、後ろから妙な声が聞こえて来た。
振り返ると、そこには、カチャカチャと、何かが擦れるような音をさせながら、不気味な顔をしてこちらに近づいてくるメイドの姿があった。




