妬まし人形 5
「……なんだ、ここは」
俺は思わず言葉を失ってしまった。
そこは、まるで廃墟のようだった。
部屋の中には埃が積もっており、家具やベッドも破壊されている。
「随分長いこと、放置」
「……だよな? なんでこんな部屋があるんだ?」
扉の外、つまり、屋敷の中や応接間は綺麗に整えられていた。
それなのに、どうしてここだけこんなになっているのか……
「タイラー。机の上」
と、フォルリに言われて俺は机の上を見る。
「……なんだ? 本?」
机の上には一冊の小さな本が於いてあった。
「おそらく、日記」
フォルリが落ち着いてそう言う。
「日記? ……これ、読んで大丈夫なタイプの日記……なんだよな?」
俺は思わずフォルリに訊ねる。日記といえば、アニマの日記である。
もし、日記を開いてあんな風になってしまうと、アニマの日記ならともかく、見ず知らずの人間の日記となると、記憶の中に飲み込まれたまま戻ってこれない可能性だってあるからだ。
「大丈夫。その日記、普通の日記。魔宝具、違う」
フォルリの言葉は自信ありげだった。フォルリだって魔女だ。
しかも、アニマと同じくらいの時を生きてきた魔女なのだ。
ここはフォルリを信じてみることにした。
「よし……開くぞ」
俺はそういって日記を開いてみた。