妬まし人形 4
それからしばらく俺達は応接間で待った。しかし、幾ら待っても、主人が帰ってくる気配はない。
「……なぁ、アニマ。これ、ほんとに帰ってくるのかよ?」
俺が訊ねる。しかし、アニマは返事をしなかった。
「……おい、アニマ?」
俺は思わず立ち上がってアニマの方へと近寄る。
と、見るとアニマはすやすやと寝息を立てていた。
「はぁ? 寝ちまいやがった……ったく、どうするんだよ……」
「タイラー。私、捜索、希望」
「……捜索? どういうことだよ?」
本の姿のフォルリが、俺に囁いてくる。
「この屋敷、不可思議。捜索、希望」
「捜索って……勝手に動いちゃ不味いだろ」
「でも、メイドの気配、なし。多少なら行動、可能」
フォルリは俺に強く行動することを希望しているらしい。確かに、このまま応接間にいても仕方ない気がする。
「……よし、じゃあ、行くか」
「タイラー。アニマ、どうする?」
「え? ああ、どうせ、寝てんるんだ。放っておけよ」
俺はアニマをそのままにして、応接間を出る。
確かに周囲を見回しても、メイドの気配はなかった。
「……よし、じゃあ、行くか」
俺はフォルリをしっかりと握りしめたまま、屋敷の中を歩き出した。
階段を上がり、二階へ行く。
長い廊下を歩いて、多くの扉を見ていく。
「しかし、デカい屋敷だな。どんなヤツが住んでんだ?」
「タイラー。あの扉、気になる」
と、フォルリがそう言った。
「どれだよ?」
「廊下の奥。そのまま真っすぐ」
フォルリに言われて俺はそちらに眼を遣る。
すると、そこには、確かになんだか威圧感のある扉が存在していたのだった。
「……入ったらヤバいタイプの扉じゃねぇのか?」
「そういう気配、なし。タイラーの安全、保証する」
フォルリは自信ありげにそう言った。俺はそれを信じて扉の前に行く。
「……わかった。じゃあ、開けるぞ」
俺はそう言うと、その不気味な扉を思いっきり開けたのだった。