妬まし人形 1
「望むものは、大抵手に入らない」
――陰湿そうな魔女の言葉
「さて、行くわよ」
「待って。アニマ」
と、いつものように地下室の扉にアニマが手をかけた時、フォルリがそう言った。
「どうしたの? フォルリ?」
「今から討伐する魔物、どういった魔物か、聞いてない」
「あ……言われてみればそうだな」
フォルリの言葉で俺もそう思った。
「そうね。言ってなかったわね」
アニマも今更ながら思い出したらしい。
「これから討伐する魔物……その原因となった魔宝具は『妬まし人形』という名前の魔宝具よ」
「妬まし……人形?」
思わず俺が聞き返すと、アニマは頷いた。
「ええ。簡単に言うと呪いの人形みたいなものね。代償と引き換えに、殺したいと思った相手を殺すことができるの」
「え……なんだよ、それ……普通に怖いな」
俺がそう言うとアニマもその通りだと言う風に頷いた。
「そうね。でも、代償が大きすぎて普通は使われない魔宝具なのよ」
「代償……一体、何?」
フォルリが訊ねるとアニマは大きくため息を付いた。
「妬まし人形は六回使用することが出来るわ。代償にするのは、持ち主の両手、両足に頭……そして、魂よ」
俺は思わずゴクリと生唾を飲み込んでしまった。フォルリも少し怯えた様子でアニマを見ている。
「……とまぁ、少し危険な魔宝具なのよね」
「お、おいおい。少しどころか、相当危険だろ……」
「まぁ、今から討伐するっていっても、妬まし人形をその持ち主が使用していなければ回収すればいいだけだから」
「え……ちょ、ちょっと待てよ。もし、持ち主が妬まし人形を使っていたら…どうなるんだ?」
俺がそう訊ねると、アニマは真剣な顔で俺とフォルリを見た。
「……妬まし人形は代償にされた人間の部位を引き継ぐの。つまり、人形を使う度に、持ち主は身体の部分を失っていき、人形は人間へと近づいていくのよ。つまり、人形と人間の融合ってわけね」
「つまり……人間みたいな人形を見つけたらソイツが妬まし人形ってことか」
「ええ。だから、ソイツをどうにかして討伐しなきゃいけない、ってことね」
そういってアニマは扉に手をかけ、そのまま一気に開けたのだった。