憂鬱な依頼
「しかし、主も飽きないのぉ」
その日、俺は街に買い出しに行くと言い出したセピアに同伴し、マジック・ジャンクに向かっていた。
「……何がだよ」
「何って、あの魔女に会いに行くことじゃよ。主も物好きというか……のぉ?」
そう言われて俺は何も言えなくなってしまった。言われてみればどうしてほぼ毎日マジック・ジャンクに足繁く通うのかと聞かれると、どうにも答えにくい。
アニマに会いたいのかと聞かれて、会いたいなんていうのは癪だから口が避けても言えないが……
「しかし、魔宝具である我等からすると、魔女とあまり仲良くするのは良くないと思うがのぉ」
「何言ってんだよ。家に魔女が住み着いているんだぞ。仲良くも何もないだろ?」
「フォルリは別じゃ。あの子はまぁ……可哀想なヤツなんじゃとわかる。しかし、あの店主はどうかのぉ……」
セピアは渋い顔をしながらそう言った。
無論、セピアの言いたいことはなんとなくわかる。かといって急にアニマの店に行かなくなるのもなんだかおかしいと思う気がするし……
「まぁ、主の勝手にするといいと思うぞ」
「なんだよ。結局それか」
「うむ。我等は魔宝具。主の私生活に干渉するような真似はせんよ。我等はこのまま街に行く。じゃあの」
そういってセピアは行ってしまった。俺はそのまますぐそこに見えてきたマジック・ジャンクへと急いだ。
「アニマ? いるか?」
店に入って俺はアニマの名を呼ぶ。
「ああ。タイラー……はぁ」
店の奥にいたアニマは大きくため息をついた。
「なんだよ。ため息なんてついて」
「……憂鬱な依頼が届いたのよ」
「依頼?」
そう言われて俺はアニマが手にしていたものを見る。なにやら手紙のようだった。
「……で、依頼ってなんだよ?」
「魔物よ。魔物討伐。まったく……こっちはなんでも屋じゃないのよ」
「魔物って……前に代償魔宝具の時に話してた……じゃあ、メンテが関わってるのか?」
「いいえ、あの子じゃないわ。それに、代償魔宝具のせいで魔物になるにはそれ相応の時間が必要なの。つまり、もう魔物になっているってことは、随分前に代償魔宝具を手に入れたということ。メンテは関係ないわ」
そういってアニマは立ち上がった。
「で、魔物を討伐するって……魔物って行っても元は人間なんだろ?」
「ええ。でも、残念だけど、もう人間じゃないわ。魔宝具よ。しかも、放っておくと他人に迷惑をかける……だから、破壊……いえ、討伐しに行くのよ」
「そ、そうか……えっと、アニマ。俺、暇なんだけど……」
俺がそう言うとアニマは呆れたように、大きくため息をついた。どうやら、俺の魂胆は見透かされているらしい。
「仕方ないわね……急いで家に戻ってフォルリを持って来なさい。護身用にね」
それを聞くが早いか、俺は急いで家に戻ったのだった。