黒炎と水流 4
「さて……魔女同士の勝負……決闘だと負けた方を殺すってのが、掟だった気がするわね……」
「はぁ!? お、お前、マジで……」
「……嘘にきまっているでしょ。まったく……」
結局、俺とフォルリは負けてしまった。
アニマに敗北した俺達は、大人しくマジック・ジャンクに戻ってきていたのだった。
「はぁ……というか、フォルリ。アナタ、どうしたの? なんで私に勝負なんて挑んできたのよ。アナタはこういうこと、好きじゃなかったじゃない?」
アニマが心配そうにそう言う。すると、フォルリは少しためらいがちにモジモジしたあとで、チラリと俺の方を見た。
「……え? 俺?」
「あ……タイラー……悪くない。悪いの……私」
と、なんとも聞いているこちらが申し訳なくなってくるような声で、フォルリはそういった。
「……どういうことかしら?」
「フォルリ、タイラーの家で世話になっている。それなのに……何もしない。ただの居候。タイラーにフォルリ、役立たずだと思われる……だから、アニマに勝って優秀な所、見せたかった……」
すると、はぁ、と大きく、そして、わざとらしくアニマがため息をついた。
「な……俺が悪いって言いたいのかよ!?」
俺が思わずアニマにそう言ってしまった。
「……別に言ってないわよ。ただ、フォルリだって魔女なのよ。私と同じように社会的な能力が欠如している存在なの。その子を捕まえて役立たずなんていうのは、どうかと思うわね」
アニマはそう言いながら少しニヤニヤしていた。どうやら、アニマとしてはフォルリに対して俺を謝らせようとしているらしい。
フォルリはフォルリで、先程からただ済まなそうにしているだけである。どうやら、俺は完全にフォルリに謝るしかないようだった。
「……はぁ。わかったよ。フォルリ。俺が悪かった。お前は役立たすなんかじゃねーよ」
「タイラー……」
嬉しそうな顔でフォルリは俺のことを見た。
「……まぁ、飯の時間になったらさっさと物置から出てくるようにしてくれればいいんだ。わかったか?」
「……了解。フォルリ、タイラーの魔宝書。言うこと、なんでも聞く」
笑顔でそんなことを言われて俺は少し、苦々しい顔になってしまった。
ちらりと、アニマの方を見る。
「……タイラー。わかっていると思うけど、フォルリを悪用したら、許さわないわよ?」
「あ、ああ……わかっているって」
そんなこんなで、俺とフォルリ対黒炎んの妖女の深夜の決闘は、こうして幕を閉じたのだった。