黒炎と水流 3
その時だった。
俺の手からものすごい量の水が放出される。その水は、徐々に集まっていったかと思うと、巨大な1つの形を形成していった。
「こ……これは……」
さすがのアニマも目を丸くして驚いている。
「な、なんだよ……これ……」
俺の手から出た大量の水は、1つの巨大な姿を形成し、現れたのは青い鱗に覆われた巨大な龍の姿であったのである。
「……なるほど。『水龍ルサールカ』……どこにいったのかと思えば、フォルリ。アナタが閉じ込めていたのね」
現れた巨大な龍を見て、アニマは感心したようにそう言った。
「え……閉じ込めてたって……え?」
「龍は、魔法の塊。ルサールカ、私自身に閉じ込めてた」
「は? ど、どういうことだ?」
俺がわけもわからず、思わずアニマを見てしまう。
「龍……つまり、ドラゴンは、魔女の使い魔のようなものなの。そして、基本的に魔宝書に閉じ込めて、使役するときにだけ召喚する……フォルリは自身が魔宝書だから、自分の中にルサールカを閉じ込めていたわけね」
「な……なるほど」
アニマの解説でようやく納得し、俺は思わずフォルリを見た。
「タイラー。今なら、アニマ、倒せる」
「お……おお! よ、よし! ドラゴン、やっちまえ!」
俺がそういうと、青いドラゴンは大きく口をふくらませたかと思うと、大量の水を激しい勢いで吐き出した。
先ほどの俺の手から出たものとは比べ物にならない程に大量の水である。
「お、おお……」
それはあっというまにアニマを飲み込み、アニマは見えなくなってしまった。
「あ……だ、大丈夫かよ。アニマ……」
「大丈夫……だと思う」
フォルリもちょっとやりすぎたかと思っているようだ。俺は心配そうにアニマのいた方を見る。
「……まったく。しつけのなっていないドラゴンは力の使い方がわかっていないみたいね。こんなんじゃ、水浴びにもならないわ」
と、アニマの余裕な声が聞こえて来た。
次の瞬間だった。
青いドラゴンはあっというまに、黒い炎に一瞬にして包まれた。
ドラゴンの痛ましい咆哮が木霊する。そして、すぐにドラゴンは形を失い、水のようになったあと、消滅してしまった。
「え……う、嘘だろ?」
俺はその場に座り込んでしまった。
「お、おい! フォルリ……」
「……敗北。もう、勝てない」
フォルリは冷静にそう言った。
「そうね。勝負は、ついたみたい」
と、俺の前にアニマが現れた。アニマは不敵な笑みを浮かべ、絶対的な強者の佇まいで俺のことを見ていたのだった。