黒炎と水流 1
「タイラー。気を付けてほしい」
本の姿になったフォルリは、俺にそう言ってきた。
すでに俺とアニマは、マジック・ジャンクから少し離れた場所で対峙している。
不敵な笑みを浮かべるアニマ……俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「……ああ。アイツがアホみたいに強いのは俺も身近で見てきたから十分知っている……ホントに、お前に任せるからな」
「了解。全力でタイラー、守る」
すると、魔宝書のフォルリがいきなり輝きだした。まるで魔力を充填しているかのようである。
「じゃあ、そろそろ始めていいかしら?」
アニマが余裕の表情でそう言った。
「ああ。かかってこいよ!」
俺は強がってそう言った。すると、ニヤリとアニマは微笑んだ。
次の瞬間には、手を前に突き出し、そのまま掌から黒い炎が吹き出した。
「うおっ!?」
俺は思わず反射的に手を前に出した。
「タイラー。目を逸らさないで」
フォルリの鬼気迫る声がそう呼びかける。
「え……な、なんだこれ……」
すると、俺の目の前に薄い水の膜のようなものが表れていた。
「次が、来る」
「え……うおっ!?」
と、今度は別の方向から黒い炎の玉が飛んできた。俺はそちらに手を向け、またしても水の防御膜を展開する。
「守ってばっかりじゃ、勝負に勝てないわよ?」
余裕の笑顔でアニマはそう言ってきた。
「くそっ……フォルリ!」
「了解。攻撃、開始」
すると、今度は俺の掌から先ほどのようにものすごい勢いで水流がほとばしった。
水流はアニマに向かってそのまままっすぐに向かっていく……ように思えた。
しかし、直前まできた瞬間、水流は瞬時に消えてしまった。
「え……な、なんだこりゃ?」
「ふふっ……この程度の水流なら、瞬時に蒸発させることは簡単ね。さぁ、こちらからも行くわよ」
アニマは間髪入れずにまたしても炎をこちらへ飛ばしてくる。
今度も防御膜でなんとか防ぐが、これではジリ貧である。
「うおっ!? ど、どうすんだよ、フォルリ! アイツにお前の魔法、効かねぇんじゃねの?」
「そんなことない……大技で、決める」
俺が訊ねると、フォルリは確かにそう言ったのだった。