夢見る童話(前編)
「ひ……ひえぇぇぇ!!!」
俺は思わず大声で叫びながら必死に走っていた。
「叫ばずに走りなさい! 追いつかれるわよ!」
アニマも隣で必死に走っている。後ろからはガシャガシャというやかましい音が迫ってきている。
俺は振り返る。そこには大勢の鎧姿が俺達に向かって走ってきているのが見えた。
「あ、アニマ! も、もう無理だ!」
俺は心底無理だという気持ちでそう叫んだ。アニマは俺がもう限界だということを悟ったのか、そこで立ち止まり、振り返って鎧の大群に向かって手をかざす。
すると、アニマの掌からいつものように黒い炎が吹き出した。鎧の大群は一気に黒い炎に包まれ、動きを止める。
「今よ! ほら!」
そういって俺とアニマはそのまま曲がり角を曲がって壁の影に隠れる。しばらくすると燃え盛る炎に包まれたままで、鎧の大群達は俺達には気づかず、そのまま廊下の向こうへと走っていった。
「た……助かったのか?」
「……いえ。残念だけど、奴らは完全に消滅させることはできないみたいね。強力な魔法で動いているから……」
「……お前の魔法でもダメなのか?」
アニマは悲しそうに首を振る。
「……とにかく、リストにあった本をさっさと回収しましょう」
そういってアニマは歩き出した。俺はレファが渡してきたリストをもう一度見てみる。
「……『夢見る童話』。これ本のタイトルなんだよな?」
俺は今ひとつ理解できなかったが、アニマの後をついていった。
俺達が今いるのは、古い城の中だ。そこに入った途端、大勢の鎧に襲われた。アニマが言うには鎧の中には人は入っていないらしい。実際、人が入っているとは思えない速度で俺とアニマを追ってきたからなんとなく言っている事は理解できた。
そして、俺とアニマは現在城内を散策中だった。アニマが言うには玉座にその本があるという話なのだが……
「ほら、タイラー。あったわよ」
そういってアニアが指をさす先には、ひときわ大きい扉があった。確かに玉座のように見える。
「はぁ……さっさと回収して帰ろうぜ」
そういって俺は玉座の扉を開ける。すると、其の先にはあったのは、玉座に置いてある古びた一冊の本であった。
「あれか……よし」
「た、タイラー! 危ない!」
と、其の瞬間だった。いきなり俺の眼と鼻の先におもいっきり剣が振り下ろされたのである。