返却遅延ペナルティ
「……へ? お、おいおい。どういうことだよ?」
俺の質問には答えず、アニマはそのまま歩いて行く。俺もそのまま背後にくっついて行った。
しばらくすると、その先になにやら受付のような場所が見えてきた。
そこにはメガネをかけた一人の女性が座っている。
「あら。アニマ・オールドカースルさん。お久しぶりです」
メガネの女性はニッコリとアニマに向かって微笑んだ。
「レファ。本、返すわ」
嫌そうな顔でアニマは眼鏡の女性に本を渡す。
「……おや? 一日期限切れですね。残念ですが、ペナルティがつきます」
「そ、そんな……一日よ? たった一日じゃない?」
「あはは。皆様そう言われますが、既に100年以上お借りになっているのですよ? たった一日でも遅れるってのは、如何なものでしょうか?」
レファと呼ばれた女性に沿う言われてしまうと、アニマは何も言えないようだった。
「え……ペナルティって何?」
俺は思わず訊ねた。
「おや? そちらの方は……魔女ではないですよね?」
「……ええ。私のお付のものよ」
お付、という言葉に反論しようと思ったが、それも面倒だったので俺は放っておいた。
「そうですか。アニマ様のお付の方、申し遅れました。ワタクシ、当図書館の司書兼館長兼管理係を担当しております、レファ・レンスと申します。どうぞ、宜しくお願い致します」
そういって眼鏡の女性……レファは俺に対して恭しく頭を下げた。
「あ……ああ。えっと……ペナルティってなんなんだ?」
「ええ。お答えします。要するに魔宝書回収作業です。利用者様が未返却、あるいは、紛失されてしまった魔宝書を、当魔宝書大図書館の代理として回収してきていただくのです」
「……つまり、自分たちが面倒くさいから、返却期限を切れた奴らにそれを回収させようって魂胆よ」
「何か言いましたか? アニマ様?」
レファは容赦なくアニマにそう言った。
「……で、私はどうすればいいの?」
「そうですね……アニマ様は当該図書を325年前にお借りになっていますから……3冊分、図書を回収していただければ結構です。ちなみに、回収魔宝書リストはこのようになっております」
そういってレファはアニマに紙切れを寄越してきた。それを見た瞬間、アニマは「はぁ?」と大きな声で叫んだ。
「な……これ全部? ふざけないでよ……」
「いいではないですか。たった三冊ですよ?」
「だ、大体……本当にこれ、この図書館が所蔵しているの?」
珍しくアニマが感情的だった。レファは眼鏡をクイッとあげてアニマを見る。
「ええ。もちろんです。どうぞ、回収にご協力ください」
そう言われてアニマは何も言えなくなってしまったのか、そのまま背中を向けて歩き出してしまったのだった。