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絶望の首輪 5

「……はぁ」


 一人、俺は家の中で大きくため息をついた。


「なんじゃ。ため息など珍しいのぉ。主」


 何も知らない古魔宝具の精霊であるセピアは、不思議そうに俺のことを見ている。俺はセピアを見てさらに大きくため息をついた。


「……なんじゃ。人の顔を見てため息をつくのは感心しないのぉ」

「……すまん。セピア」

「まぁ、相談にのってやらないこともないぞ?」

「……アニマが、もうすぐ死ぬんだと」


 俺がそう言うと、セピアはキョトンとした顔で俺を見た。まぁ、事情を知らないならばこんな顔になって当たり前である。


「……本当かのぉ?」

「……ああ。本当だ」


 俺はそれから一通りのことをセピアに話した。セピアは腕組みをしたままで俺の話を黙々と聞いていた。


「……う~む。そうか。まぁ、我等としては、我等をゴミの様に扱ったあの店の店主がどうなろうと知ったことではないのじゃが……」


 そこまで言ってセピアは俺の方を見ていた。


「なんだよ。何が言いたい?」

「あ、いやのぉ……なんというか……主がそれでいいのかと思ってのぉ……」


 セピアはそう言って少しニヤリと微笑んだ。


「俺が……それでいいのか、だって?」

「そうじゃ。店主は死にたがっているじゃろう? だったら、それは店主の勝手じゃ。じゃが、主はどうなのじゃ? ヤツに死んでもらいたいのか?」


 俺はそう言われてなんだかハッと気づいた。

 そうだ……アニマが死んだら、困るじゃないか。

 アニマ本人じゃない。俺だ。俺が一番困るのだ。

 と、俺が何かに気づいたのを感じ取ったのか、古魔宝具の精霊はニヤニヤしながら俺のことを見ている。


「ヤツは500年以上生きていると言っとったが、我等、魔宝具の中には既にこの世に生を受けて千年以上のものもおる。たった500年で死にたがるなぞ、ガキの思い上がりもいいところだと思うがのぉ」


 そう言った魔宝具の精霊の不思議な色の瞳は、俺の事をじっと見てくる。


「じゃからのぉ、たった一言誰かの言葉があれば、ヤツだって気分を変える……我等はそう思うがのぉ……」


 俺は其の言葉を聞くが早いが、そのまま自分の家を飛び出していた。

 もちろん、そのままマジック・ジャンクに向かうためであった。

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