絶望の首輪 2
「……『絶望の首輪』。なんとも、安直なネーミングね」
アニマが呆れながらそう言っても、メンテは別に動じる気配もなかった。
「別に名前なんてどうでもいいんだ。問題は効果と成果。その首輪は確実にアニマ先輩を殺すよ。絶望を与えてね」
嬉しそうにそういうメンテ。アニマは別に気にすることもなくメンテを見ている。
「メンテ。アナタ、私を見くびっているのかしら。今ここで魔法に関しては非力なアナタを焼き殺すことだってできるのよ?」
「うん。知っているさ。でも、アニマ先輩はそれをしない……いや。できないんだ。それはそうだ。その首輪。嵌めた本人を殺すと、自動で作動して相手を殺すようになっているからね」
メンテは嬉しそうにそう語る。どうやら、完全にアニマはこの不気味なヤツの術中にハマってしまったようだ。
「……えっと。ちょっと待てよ。アンタ、アニマに怨みでもあるのか?」
俺もとりあえず落ち着きながらメンテにそう訊ねてみた。すると、メンテは興味なさげに俺のことを見る。
「……君のような人間に話したくないな。僕とアニマ先輩の問題だから」
「あ、いや……気持ちはわかるんだよ。アニマは性格悪いし、ひねくれているし……でも、どうして殺したいとまで思ったんだ?」
俺がそう言うとメンテは目を丸くする。そして、アニマの方に顔を向けた。
「アニマ先輩。この人間、知り合いなの?」
「……いいえ、知らないわ。適当に言っているだけでしょ」
アニマはどうにもメンテに、俺とアニマが知り合いであることを悟られたくないらしい。俺は自分の言葉が完全に裏目に出たことを感じた。
メンテはもう一度俺の方に顔を向けてきた。
「あ……ああ、えっと……何度か店に来て、そう思っただけだよ。態度も悪いし……」
俺が必死に取り繕うとしても、メンテはそれを見透かしているかのように、血走った目で俺を見た。なんだか不気味な化け物に睨まれているような感覚だった。
「……まぁ、なんでもいいや。君には関係ないよ」
そういってメンテは立ち上がった。
「じゃあ、僕はそろそろ行くね。お得意様が僕の商品を買いたいって話があるから……」
「……メンテ。悪いことは言わないわ。もう代償魔宝具を売るのはやめなさい」
「ヒヒヒ……そんなこと言える余裕があるのは今のうちだけさ。そのうち、どんどん絶望に押しつぶされるんだ……じゃあ、アニマ先輩、残り少ない命を楽しんでね」
メンテはそういってホントに店を出て行ってしまった。俺は何もできず、ただ、その後ろ姿を見ていることしかできなかった。