表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/251

悪食な街 1

「……で、ここが最後ってわけか」


 俺とアニマは二人で並んで立っていた。目の前には、多くの人々が賑やかに道を行き来している。


「ええ。この街のどこかに代償魔宝具があるわ。おそらく、これで最期になるはずよ」


 アニマは何事もなかったかのようにそう言うが……俺はうんざりした。

 目の前にある街はそれなりの大きさである。こんな街の中のどこかにあると言われても……見つかるものなのだろうか。


「……目星はついているのかよ。その魔宝具がどこにあるのか」

「ええ、大体は……ね」

「……そうか。で、どんな魔宝具かはわかっているのか?」

「ないわ。どんな魔宝具かも検討もつかない」


 その言葉を聞いて、俺はさらに絶望する。どうにも、アニマはあまり計画性無く動くようである。


「とにかく、街の人に聞いてみましょう」

「え……聞くって……」


 そう言うとアニマは目の前を歩く一人の女性に声をかけた。


「ちょっといいかしら。アナタ、この街のどこかに魔宝具があると思うのだけれど、知らないかしら?」

「お、おいおい……そんなこといきなり聞かれても応えるはずないだろ」


 俺がそう思っていると、女性はうーんと短く唸り、そして、ポンと手のひらを叩いた。


「そうですねぇ……町長さんが持っているって聞きましたよ」

「……え? 持っている?」


 俺が戸惑っているとアニマは女性に礼を述べ、そのまま歩き出してしまった。


「……案外簡単に見つかるかもな」

「さぁ、どうかしらね」


 俺がそういうとアニマは渋い顔でそう言った。ふと、背後を振り返ってみると、先ほどの女性が俺達のことを見ていた。

 そして、俺達は街のあちこちで町長の居場所を訊ねた。それほど時間もかからず、俺とアニマは、町長の家を訪れることができた。


「いやぁ。どうも、魔女様。ようこそいらっしゃいました」


 町長は物腰柔らかに俺とアニマを出迎えた。それこそ、最初から俺とアニマがここにくることを予期していたかのような態度で、少し怖かった。


「町長さん。率直に聞くわ。魔宝具、持っているの?」


 アニマが単刀直入にそう聞くと、町長は素直に頷いた。あまりにも素直で俺は拍子抜けしてしまうくらいだった。


「ええ。持っております。しかし、何分大きなものですので……よろしければ、私が自らお二人を魔宝具があるところまでご案内するのですが……」

「いいえ。結構よ。私とタイラー、二人だけで行くわ」


 町長の申し出を憮然とした態度で断るアニマ。感じ悪いヤツだと思ったが……町長の様子もおかしかった。


 なんだか、俺とアニマを自分が案内したい、という感じである。何か魂胆があるような……


「……そうですか。残念です。でしたら、地図をお渡ししますので、どうぞ、お二人で言って下さい」


 町長はそう言って、俺達に地図を書いてくれた。普通に最期まで丁寧な対応だったので、どうやら俺の思い過ごしだったようである。

 町長の家を出た俺とアニマは、地図を見ながら示された場所へと進む。


「なんだ。案外簡単だったな」


 と、なぜかアニマはしきりに背後を気にしている。


「どうした? 誰か付いてきているのか?」

「……いえ。付けてきている、と言ったほうが良いわね」

「へ? どこに?」


 俺が背後を見てみても、誰も付いてきていないように思える。


「誰も……来てないんじゃないか?」

「……タイラー。さっさと行くわよ」


 アニマはそういって早足で進みだした。俺もそれに付いて行く。しばらくして、町長が地図を示した場所に俺達は辿り着いた。


「……なんだここ?」


 そこは、一軒の家だった。しかし、どう見ても空き家で、ボロボロである。


「こんなところに……置いてあるのか?」


 俺はそういって家の扉を開けて中に入ってみた。しかし、中には何もない。完全に空き部屋だった。


「おい、アニマ。これどうなって……アニマ!?」


 と、いきなり部屋に入った瞬間、アニマがぶっ倒れた。荒い息で、そのまま床に寝転がってしまったのだ。


「お、おい! どうしたんだよ!?」

「た、タイラー……逃げて……」


 と、其の時だった。いきなり部屋の中に何人もの兵士が入り込んできた。


「な……なんだ、お前ら……」


 すると、兵士たちは俺とアニマに向けて剣を向けてくる。


「ふふふ……獲物が罠にかかりましたな」


 と、兵士の背後から出てきたのは、あの町長だった。


「あ、アンタ……どういうつもりだ!?」


 すると、町長はニンマリと邪悪な笑みを浮かべた。


「もちろん……アナタ方には餌になっていただくのですよ。我等の魔宝具の……ね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ